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6日から、今季の国内メジャー初戦となる日本ゴルフツアー選手権が、茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブ 西コースで開催される。
注目は、13日からノースカロライナ州のパインハーストリゾート&CCで開催される全米オープンに出場予定の、石川遼、金谷拓実、河本力、清水大成の4人。
石川、河本、清水は、日本で行われた最終予選を通過。金谷はアメリカで行われた最終予選を通過し、海外メジャー出場権を獲得した。
全米オープンは例年、ラフを長くしており、第1打をラフに入れるとバーディチャンスにつけることが難しくなる。
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それは日本ゴルフツアー選手権も同じで、例年、宍戸ヒルズCCのラフが選手を苦しめており、よりフェアウェイキープがポイントになる。
石川はドライバーショットの出来がポイントになるし、金谷、河本、清水は、ドライバーショットがストロングポイント。
皆、ドライバーショットの手応えをつかみ、フェアウェイキープ率が高められた状態で、パインハーストへ乗り込んでいきたいところだ。
■スイングの自信を深めたい石川遼
2013年から17年までの5年間、石川は米ツアーを主戦場にしていた。
米ツアーのシードを失った原因は、不安定なドライバーショット。
日本ツアー復帰当初から、再び米ツアーを主戦場にすることを目指した石川は、ドライバーショットの安定感を高めるために長期的な観点でスイングを繰り返し改造。
それが昨年の終盤あたりから実を結び始め、日本オープン2位やZOZOチャンピオンシップ4位につながった。
とはいえ、今季現時点(6月2日時点)でのフェアウェイキープ率は54位。昨季までよりも安定感は高まってきてはいるものの、石川自身が求める水準には達していないだろう。
ドライバーショットの自信を深めるためにも、来週の全米オープンで上位進出を狙うためにも、宍戸ヒルズは良い舞台になりそうだ。
ラフのプレッシャーを受けながらフェアウェイキープし続けることができれば、2022年11月以来のツアー優勝もあり得る。
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石川遼フェアウェイキープ率順位(6月2日時点)
■ドライバーショットの安定感が高い金谷拓実
金谷の持ち味の一つがドライバーショット。フェアウェイキープ率が高く、その順位とドライビングディスタンス順位を合算したトータルドライビングの順位も上位だ。
ドライバーショットの精度が武器となり、パーキープ率が高い。
パーキープ率は2020-21年度が1位、2022年度が欧ツアーを主戦場にしていたため規定ラウンド数不足でランキング対象外、2023年度が1位、今季が現時点で2位だ。
今季から欧ツアーを主戦場にする金谷だが、今季序盤の出場は日本ツアーの方が多い。
開幕戦の東建ホームメイトカップで優勝。2021年大会でも優勝しており、通算5勝の内2勝が同大会となった。
日本ゴルフツアー選手権はディフェンディングチャンピオンとして臨む。ここでも、‟相性が良いコースではとことん強い”ゴルフを展開するかもしれない。
そうなれば、全米オープンに向けて弾みがつき、プロ転向後いまだ海外メジャー予選通過なし、という流れを断ち切ることができるのではないだろうか。
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金谷拓実トータルドライビング順位(6月2日時点)
■圧倒的な飛距離の河本力
日本男子ゴルフ界で圧倒的な飛距離を誇るのが河本だ。
ドライビングディスタンスは、ルーキーイヤーの2022年が1位、2023年が1位、今季現時点でも1位だ。
しかし、日本ゴルフツアー選手権では飛距離をスコアに結びつけきることができていない。2022年大会は出場しておらず、昨年大会は予選落ちだった。
「米ツアーでも飛ぶ方に入る」と評される河本だが、初の米ツアーとなった2022年のZOZOチャンピオンシップでは、世界にインパクトを与えることができなかった。ドライビングディスタンスがトータルで27位。もしかしたらプレーが小さくなっていたのかもしれない。
今季、6戦して予選通過したのは3回だが、好スコアを出すラウンドは少しずつ増えてきている。
初の海外メジャーに向けて、国内メジャーでドライバーを自信を持って振りぬける状態にしておきたいところだ。
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河本力ドライビングディスタンス順位(6月2日時点)
■バーディ率の高い清水大成
女子ゴルフの黄金世代と同学年の清水も、河本と同様に、ドライバーショットの飛距離が持ち味。2022年のドライビングディスタンスは河本に次ぐ2位だった。
今季は、ドライバーショットの飛距離をバーディ数につなげられている。バーディ率が現時点で1位。結果、6戦してトップ10が4回。
2021年日本ゴルフツアー選手権では6位タイに入っており、コースとの相性も悪くなく、ツアー初優勝が国内メジャーになっても不思議ではない。
清水のスイングの特徴は、クラブを10本の指で握るベースボールグリップ。
一般的なテンフィンガーグリップは、左手親指をクラブに当てて右手の平で包み込むようにするが、清水は、左手親指も野球のバットを握るようなグリップを採用している。
一般のゴルファーは、トップオブスイングで左手親指に過度にクラブを乗せてしまい、クラブの動きにエラーが出ているケースが多い。多くのゴルファーにとって、清水のグリップは、左手親指に頼らなくなる‟練習ドリル”としても試してみる価値があるグリップだ。
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清水大成ドライビングディスタンス順位(6月2日時点)
■見どころは17番ホール
宍戸ヒルズCC 西コースで最も難しいとされているのが、17番ホールのパー4。
フェアウェイは絞られており、落としどころが狭く、グリーン手前は池で第2打は池越えとなる。
ティーショットをフェアウェイ左のラフに入れると、左足下がりのラフから池越えを狙わなければならず、かなり難しいショットになる。
より飛距離と方向の両立が求められるホールで、この4名は、どのようなティーショットを放つのだろうか。
日本ゴルフツアー選手権では、プレッシャーがかかるホールや場面でも、全米オープンに向けて期待が持てるドライバーショットを見せてもらいたい。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。