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撮影:小嶋勝美
今年8月に日本初開催で話題になったスケートボード最高峰の大会、ストリートリーグ(SLS)東京大会。
江東区の有明で開催され、地元開催となったオリンピック金メダリストの堀米雄斗が優勝し、同じくオリンピック金メダリストの西矢椛と池田大暉が準優勝を飾り、最高の盛り上がりを見せた。
そんなストリートリーグの世界観を日本で実現し、日本のスケートボードを世界へアピールするべく開催されているJAPAN STREET LEAGUE(ジャパンストリートリーグ、以下JSL)2023年シーズンの第3戦-PUNK HEAPS-が愛知県蒲郡市にある“DELIC SKATEPARK”にて開催され、佐々木音憧(とあ)が優勝。
準優勝は浦野建隼(けんと)、3位は中国・杭州で開催されているアジア大会で5位に入賞した山附明夢(やまづきあいむ)となった。
前回大会優勝者の根附海龍(ねつけかいり)は10月7日にオーストラリアで開催されるストリートリーグの予選大会(セレクトシリーズ)出場のため、今大会は棄権している。
◆第2戦 根附海龍が世界最高峰への挑戦権を獲得、繋がったSLSへの道 前編
■日本のスケートボードを世界へ発信
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会場となったDELIC SKATEPARK(デリックスケートパーク)世界で活躍する佐々木来夢、音憧兄弟がこのパークで日々技を磨いている撮影:小嶋勝美
2022年にスタートしたJSLは、8月のストリートリーグ東京大会で初出場ながら準優勝の快挙をおさめた池田大暉も昨シーズンまで活躍し、前回王者の根附海龍はJSLでの優勝をきっかけに10月6日にオーストラリア・シドニーで開催されるストリートリーグの予選大会(セレクトシリーズ)への出場が決まっている。
さらに先月、スイスのローザンヌで開催されたパリオリンピック予選大会では、今大会優勝の佐々木音憧が準優勝を飾り、1つの国から3名のみが出場できるパリオリンピック出場に向けて大きな一歩となった(現在オリンピックランキング8位、日本人3位につけている)。
JSL2023年シーズン、過去の結果は以下の通り。第1戦は佐々木音憧が優勝。根附海龍が2位、浦野建隼が3位。第2戦は根附海龍が優勝。佐々木音憧が2位、藪下桃平が3位の成績を収めている。
今後は12月3日に埼玉県所沢市にあるスケートパーク、SKIP FACTORYにて最終戦が開催予定となっており、フジテレビが運営する動画配信サービスFODにて配信され、ここでJSL年間王者が決定する(※10月1日時点)。
今大会は本場SLSセレクトシリーズなどへの挑戦権は無いが、JSL運営陣は今後もSLSへの道を繋ぐための交渉を本場SLS運営陣としていくとのことなので、そちらの動きにも注目していきたい。
■-PUNK HEAPS-出場選手とルール
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撮影:小嶋勝美
PUNK HEAPS出場選手齋藤丈太郎(17) / 村上涼夏(18) / 山附明夢(18) / 佐々木来夢(19) / 小鈴祥大(18) / 佐々木音憧(16) / 望月大輔(35) / 浦野建隼(20) / 柿谷斗輝(21) / 齋藤吟平(14) / 浦野晴(18) / 西山奏(16) / 張爾洙(13) / 石井太陽(18) / 小鈴大和(23)()内は年齢
JSL2023のルールは2024年パリオリンピック(予選を含む)のルールと同じで、基本的には以下になる。
・コース内を自由に滑走するランを2本と1発技のベストトリックを5本行い、3つのトップスコアで順位を競う。
・この内、ランのベストスコア1本とベストトリックの上位2本の合計が総得点となり、それぞれ100点満点で、小数点以下2点まで(最高得点は300.00点)。
同点選手がいた場合はランの最高得点で順位を決定し、それでも決着がつかない場合は、ベストトリックの最高得点をもって決着となる。
・選手は、より完成度の高いトリックのメイクを目指したい場合は、メイクしたトリックを破棄する権利がある(ベストトリックで同じトリックを行うと必然と得点が下がる為)
以上、ランのスコアが必須とならない本家のストリートリーグとはルールが異なる。ストリートリーグはラン2本とベストトリックを5本行うこと自体は変わらないが、ランとベストトリック上位4本の合計得点で順位が争われる(ランのスコアは最大でも1つのみのカウント)。
ちなみにストリートリーグではランで行ったトリックを同一の場所で行ってはならないが、パリオリンピックではOKとなっている。
一見わかりづらい差だが、出場選手にとっては“これが大きな違い”になる。
■精神力も一流に進化した・佐々木音憧
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佐々木音憧/ランで見せたギャップ越えのフロントサイドノーズブラントスライド 撮影:小嶋勝美
JSL第1戦を優勝、第2戦で準優勝を飾り、9月にスイスで行われたパリオリンピック予選ローザンヌ大会でも準優勝と、絶好調の佐々木音憧が予選をトップ通過。
予選2位の山附明夢に9点以上差をつけての決勝進出となった。
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佐々木音憧/ランの最後に見せたビガースピンフリップボードスライド撮影:小嶋勝美
開催場所であるDELIC SKATEPARKで日々技を磨いている佐々木は、決勝のラン2本目でその実力をいかんなく発揮し、高難度トリックを次々と決めてフルメイク(1つのミスなく滑ること)。
最後にはビガースピンフリップボードスライド(空中でデッキを横に450度、縦に1回転させてレールの上を滑り降りる技)を決め、この日最高得点となる91.50点を叩き出した。
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佐々木音憧/ノーリーフロントサイド180 スイッチスミスグラインドリバート 撮影:小嶋勝美
ベストトリックではデッキの進行方向側を弾いて飛び上がるノーリー系のトリック(通常のジャンプとは異なるため難易度が高くなる)を中心に技を披露していく。
1本目ではノーリーヒールフリップ フロントサイドリップスライド(空中で縦にデッキを1回転させてからレールを滑り降りる技)で86.50点。
2本目ではノーリーフロントサイド180 スイッチスミスグラインドリバート(空中で180度回転してから、トラックと呼ばれる車軸を斜めにかけてレールに乗って滑り、降りる際に元のスタンスに戻す技)で89.67点と、立て続けに高得点を獲得。
最後の3本は決めきることができなかったが、最後までトップを守り続け、自身のホームとなるスケートパークで優勝を勝ち取った。
大技の引き出しはありながらも、昨シーズンのJSLではなかなか最後まで技を決めきることができないシーンが多かったが、今シーズンはしっかり大技を決きる精神力の強さを感じさせる滑りになってきているのが印象的だった。
■アメリカ仕込みのスキルを見せた・浦野建隼
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浦野建隼/ランで見せたキックフリップバックサイドKグラインド撮影:小嶋勝美
スケートボードの本場アメリカでも活動する浦野建隼は予選を5位で通過し、弟の浦野晴(はる)と共に見事決勝進出。
決勝のラン2本目では1つだけミスをしてしまったが81.63点を獲得し、4位でベストトリックに臨む。
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浦野建隼/キックフリップバックサイドノーズブラントスライド 撮影:小嶋勝美
ベストトリック2本目ではキックフリップバックサイドノーズブラントスライド(空中でデッキを縦に1回転させてデッキの先端でレールを滑る技)で90.00点
3本目ではビッグスピンフリップ(体が空中で180度回転する間に、デッキを縦と横に1回転させる技)で90.30点と90点台を2本決め、ランでのミスを取り返して2位に輝いた。
■笑顔の滑りで観客を魅了・山附明夢
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山附明夢/ランで見せたバリアルヒールフリップ 撮影:小嶋勝美
45秒間のランの間も終始笑顔で楽しそうに滑る姿と、スケーターなら誰もが羨む軽いスケートスタイルが魅力の山附明夢は予選を2位で決勝に進む。
ラン1本目はミスが目立ってしまうも、2本目では完璧なフルメイクのランを見せ90.57点を獲得し、佐々木音憧に続いて2位でベストトリックに臨む。
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山附明夢/フロントサイド180スイッチKグラインド 撮影:小嶋勝美
ベストトリック2本目にフロントサイド180スイッチKグラインド(空中で180度回転し、トラックをレールに斜めにかけて滑り降りる技)で81.73点。
3本目にはバリアルヒールフリップ(空中でデッキを横に180度回転、縦に1回転させる技)でロングバンクtoバンクを飛び越え、87.07点を獲得しベストトリックでは80点台を2本出し、最後まで楽しむスタイルで自身初のJSL表彰台に上がった。
◆【後編/JAPAN STREET LEAGUE 2023】第3戦は佐々木音憧が優勝 最強のルームメイトと目指すパリオリンピック出場枠
◆【X Games】自分に勝ち続けるスケーター小野寺吟雲が史上最年少優勝 トニー・ホークも絶賛の別次元トリック
◆【X Games】女子パークは開心那・藤井雪凛が表彰台へ バートベストトリックは大怪我を乗り越えた55歳トニー・ホークが魅せた
■著者プロフィール
小嶋勝美●スケートボードライター
スケートボードライター兼放送作家で元芸人のスケーター。スケートボード歴は一応25年くらい。