【ツールド東北】「震災を学ぶきっかけに」大川伝承の会・鈴木典行さん、語り部しながら150キロ完走「単なるサイクルイベントではない」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ツールド東北】「震災を学ぶきっかけに」大川伝承の会・鈴木典行さん、語り部しながら150キロ完走「単なるサイクルイベントではない」

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【ツールド東北】「震災を学ぶきっかけに」大川伝承の会・鈴木典行さん、語り部しながら150キロ完走「単なるサイクルイベントではない」
  • 【ツールド東北】「震災を学ぶきっかけに」大川伝承の会・鈴木典行さん、語り部しながら150キロ完走「単なるサイクルイベントではない」

大川伝承の会」共同代表を務める鈴木典行さんは17日、震災遺構の大川小学校で語り部をしながら、自転車仲間と150キロの南三陸フォンドを完走した。

鈴木さんは震災後の2015年にロードバイクを購入し、16年に「ツール・ド・東北」に初出場。献花に訪れたキャロライン・ケネディ駐日米大使を大川小学校で迎えたほか、21年には大会の広報大使を務めるモデルの道端カレンさんらに震災の恐ろしさを伝えるなど、大会を通じて精力的な活動を続けている。

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■「ツール・ド・東北は単なるサイクルイベントではない」

大川小学校では、東日本大震災の際、鈴木さんの次女・真衣さんを含む児童74人と教職員10人が津波で犠牲になった。鈴木さんは精神的につらい時期、自分一人でできる趣味を探してロードバイクに出会い、自らの足で大川小学校や女川などの被災地を巡るうちに自転車の魅力に取りつかれた。自分の身体にムチを入れながら、思考を巡らせ自転車を走らせたことが、気持ちを和らげ自分自身へのケアにも繋がったという。

鈴木さんがツール・ド・東北に初参加した当初は、大川小学校を素通りするコース設定だったが、主催のヤフー株式会社に「大川小学校をもっと知ってもらいたい」と直談判。さらにサイクルラックを設けるなど、一人でも多くのサイクリストに立ち寄ってもらうために環境づくりにも力を入れた。

大川小学校で語り部をする鈴木典行さん (C)加藤順子さん

第10回記念大会に自らも出走しつつ語り部としても活動した鈴木さんは「大川小学校に立ち寄ってくれる人がたくさんいる。短い時間でも語り部はあったほうがいい。今年も強く感じた」と震災伝承の必要性についても語っている。

■魅力的なコースを走って「震災を学ぶきっかけにしてほしい」

ツール・ド・東北の魅力については「アップダウンがあって達成感を味わえるコースと、復興の状況を確認しながら走れること」と口にした鈴木さん。

ツール・ド・東北は東日本大震災の復興支援、および震災の記憶を未来に残していくことを目的として開催されている。「意外と知られていないのが、スタート・ゴール地点となっている『石巻専修大学』。東日本大震災時には、ボランティアの拠点として様々な人が活躍した場所だった。このことも参加者の皆さんにも知っていてほしい」と鈴木さんは言う。

さらに、震災当時の状況を写真や映像で事前に知った上で、被災地を走ってもらいたいとし、「各エイドに当時の写真やパネルを展示してほしい」と、主催者側に提案していきたいとも意気込んだ。

語り部をしながら見事完走、愛車と鈴木典行さん

鈴木さんは大川小学校で起こった悲劇を知ってほしい、今後の防災にも役立ててほしいと講演活動にも積極的に参加。最近では「自分の言葉で伝えたい」と英語での語り部も始めた。今年5月からは「大川小学校をたくさんの人々が集まり、笑顔があふれる場所にしたい」という想いから学校周辺でお花を育てる『おおかわガーデン』事務局も務める。さらに、趣味の自転車を通じた発信にも意欲的で、石巻の門脇小学校、大川小学校などの震災遺構を巡るサイクルツアーにも語り部として参加するなど活動の幅を拡げている。

そんな鈴木さんは「ツール・ド・東北は単なるサイクルイベントではない。自分にとって最大のイベントで、復興支援の気持ちのある人達が、みんな笑顔で走れる特別な場所。今後も継続していってほしい。コースも魅力的で、震災についても学べるので、全国からたくさんの人に訪れてほしい」と笑顔で語った。

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文●工藤愛梨(SPREAD編集部)

《SPREAD》
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