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サッカー日本代表は12日、ベルギー(ゲンク)で行われた国際親善試合「キリンチャレンジカップ」でトルコと対戦し、4-2で勝利した。これで今回の欧州遠征は、9日のドイツ戦(4-1)に快勝したのに続き、連勝で終えた。森保一監督がテーマに掲げていた「選手層の拡充」は十分に達成され、満足のいく遠征となったはずだ。
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■個の力で流れを呼び込む
欧州遠征2試合目のトルコ戦。森保監督は、ドイツを粉砕したメンバー10人をベンチに置き、連続先発は左SB伊藤洋輝(シュツットガルト)のみというターンオーバーを採用した。
フォーメーション自体は4-2-3-1を踏襲したものの、ほぼ“総入れ替え”で臨んだ日本は攻守にチグハグで、ドイツ戦で見せた好連係は影を潜めた。
しかし、これまでの日本は個で負けている部分を組織力で補ってきたが、今は違う。重い空気を払拭したのは、代表初先発となったMF伊藤敦樹(浦和)の豪快ミドル。利き足ではない左足を振り抜き、先制点をもたらした。
その後は日本がペースを取り戻し、トップ下に入った久保建英(レアル・ソシエダ)を中心としたパスワークで、相手ゴールに迫った。例え組織が機能しなくても、個の力で打開し、流れを呼び込む…。強豪国のような戦いが、日本も可能になったことを印象付けた。
新しい力の台頭も収穫のひとつ。先制ゴールの伊藤敦と同じく、代表初先発となった左MF中村敬斗(スタッド・ランス)が2ゴールを挙げる活躍。さらに、今遠征で唯一の代表初招集となった毎熊晟矢(C大阪)は、中村敬の2得点目をアシストするなど初キャップとは思えぬ躍動ぶりだった。
■戦術の共有にも手ごたえ
日本としては後半DFラインが下がり、トルコにスペースを与えて反撃を許した点はマイナスだが、MF遠藤航(リバプール)を入れて守備の立て直しを図り、同じく途中投入のMF伊東純也(スタッド・ランス)がダメ押しの4点目を奪うなど、選手層の厚さが際立ったのも事実。
森保監督はトルコ戦後、「ドイツ戦から大幅にメンバー変更を行ったなか、選手層をあげる、チーム全体のレベルアップ、そして戦術の共有をするという部分において、苦しい時間帯もありながら、選手たちはまたひとつ良い経験を積んでくれたと思う」と話し、チーム力の底上げに手ごたえを感じている様子だった。今後についても「より厚い選手層の中で、より強いチーム、より勝つ確率を高められるチームを作っていきたいと思っているので、選手たちは(今回の遠征で)よくトライをしてくれた」と労った。
欧州の一線で、しかも主力としてプレーする選手が増えた現在、個の力でも強豪国と渡り合えるようになったことは間違いない。そして、国内でプレーする伊藤敦、毎熊らが結果を出したことで、選手層はより厚くなり、メンバー選考にも幅ができたはず。ケガなどで誰かが欠けたら一気に戦力ダウンという事態は、もう避けることが可能になったと見ていいだろう。
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文●SPREAD編集部