【卓球】静岡ジェード・森薗政崇インタビュー 前編 Tリーグ界初“監督兼選手”の新たな挑戦「みなさんに楽しんでもらいたい」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【卓球】静岡ジェード・森薗政崇インタビュー 前編 Tリーグ界初“監督兼選手”の新たな挑戦「みなさんに楽しんでもらいたい」

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【卓球】静岡ジェード・森薗政崇インタビュー 前編 Tリーグ界初“監督兼選手”の新たな挑戦「みなさんに楽しんでもらいたい」
  • 【卓球】静岡ジェード・森薗政崇インタビュー 前編 Tリーグ界初“監督兼選手”の新たな挑戦「みなさんに楽しんでもらいたい」

卓球の「ノジマTリーグ」2023-2024シーズンは、6季目となるシーズンが開幕した。今季の注目ポイントのひとつが男子の新規参入球団の存在。4チームから6チームに増え、新たな盛り上がりが予想されるなか、金沢ポートとともにTリーグに参戦したのが静岡ジェードである。

「卓球で静岡を活性化しよう」のスローガンとともに発足したチームで、監督兼選手としてTリーグ初のプレイングマネージャーに就任したのが森薗政崇。世界卓球銀メダルや全日本選手権制覇の実績を誇るなど、日本きってのダブルスの名手として知られる28歳が踏み出した新たな挑戦について、今回は話を聞くことができた。

森薗政崇(もりぞの・まさたか)

・プロ卓球選手1995年、東京都出身。BOBSON所属。青森山田中学校、青森山田高校、明治大学出身。2017年世界卓球男子ダブルス銀メダリスト(大島祐哉とのペア)。2018年から混合ダブルス(伊藤美誠とのペア)で全日本卓球選手権を3連覇。2023年には男子ダブルス(張本智和とのペア)で全日本卓球選手権を制した。2018年からは岡山リベッツで5シーズンプレーし、2023-24シーズンからは河村水稀氏が代表を務める静岡ジェードの監督兼選手に就任。

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■静岡の地で普及活動に奔走

2021年の東京五輪で混合ダブルス金メダルに輝いた、水谷隼(2021年引退)と伊藤美誠の出身地としても知られる静岡。学生時代から大会運営に携わり、旧知の仲であった静岡ジェードの河村水稀代表から監督兼選手という形で、森薗は新規参入チームに招き入れられた。

「僕自身はどちらもできると判断して、『受けます』というシンプルなものでした。選手って実は練習している時間が1日のうちに4、5時間くらいしかない。残りは19時間もあって、寝るのは8時間。まだ時間は余るので、『そういった時間をチームのことに費やしたらいいんじゃないの?』というのが1番最初の考えでした」。

プレイングマネージャーへの就任時は「まだ整備されてないところがある」と新たな環境での現状を語っていた森薗は、新チームの普及とともに、会場に足を運んでもらうことも目指して様々なイベントを開催し、チームの顔として奔走してきた。

「(イベントは)小学生に向けた大会や、中高生に向けた講習会、あとは高齢者の方に向けた健康促進を目的にしたものなどです。体育館ではないところでも卓球はできるので、いろんなイベントを打ってきた。卓球層にも、卓球をやっていない層にもアプローチをかけて、時間をかけながらやってきました」。

■チーム編成にも取り組む

森薗はほかにも静岡ジェードでは編成も担い、チーム強化に取り組んできた。選手の補強にあたりキーワードにおいたのが、“応援してもらえる選手”かどうか。戦力としてチームに必要な部分は求めつつ、新規参入チームとしていかにファンに支持されるような集団を作っていけるかは、監督の立場で気を配ってきた部分だと語る。

「選手獲得でものすごく気を付けたのが、最後まで頑張り切れる選手かということ。人気だけでいうと日本男子は張本(智和)が1番上にいて、丹羽(孝希)がいて、戸上(隼輔)がいて吉村(真晴)もいる。トップ層は明確で分かりやすいですが、そうじゃない中堅層でも人気の選手たちをブランディングしていかないといけない。実力が同じなら、まずは応援してもらいやすい選手を考慮して今のチームになりました」。

森薗の考えを反映させたチーム作りを進めてきた静岡ジェードにおいて、オフシーズンの大きな話題が小西海偉の獲得。現代卓球では少数派となっているペンホルダーの使い手である小西は、インターハイや全日本選手権制覇などの実績を誇るベテランで、2022年からはポーランドのスーパーリーグにも挑戦。42歳でのTリーグ参戦発表はSNSでも大きな反響が見られた。森薗も小西の豊富な経験がチームの力になることを期待する。

「選手として長年日本を引っ張ってきて、今でも最前線で戦える力があるってすごいことです。期待することはシンプルに『プロとはなんぞや?』というところ。僕自身も中学生からドイツでプロ活動はしてきたんですけど、海偉さんに学ぶべきことは本当に多い。試合中のパフォーマンス、日々の生活や準備をどれだけエゴイスティックにできるか。チームメイトに向けたプロの姿を見せてくれることを期待しています」。

静岡ジェードに加入した小西海偉 (C)Getty Images

■目標は「ベストパフォーマンスを出すこと」

静岡ジェードでは、アルコールの提供を許可するなど、会場に足を運んだファンの過ごし方については自由さと快適さを求めている。ドイツでのプレー経験もあり、様々な環境を目にしてきた森薗の、「基本的にみなさんに楽しんでもらいたい。自由になってもらいたい」という考えのもと、現地に足を運んだファンを満足させるための施策も用意しているという。

Tリーグ初のプレイングマネージャーとして挑む新たなシーズン、静岡ジェードとしての目標はどこに置くのか。森薗はチームとして勝利数や順位といったノルマは設けずに、1試合1試合目の前の試合を戦い抜いていくことが重要だと若手を揃えたチームが目指す戦いについて述べている。

「本当に一戦一戦だなと思っています。チームの選手だけで考えると、例えば琉球には五輪経験のある吉村、張本がいて揃っているんですけど、(静岡は)若手でこれからのチームなので、明確に『何勝しよう』とか『何位を目標に』とかを言うと、それで終わってしまうんじゃないかと思うんです。なので、目標は1試合も抜くことなくベストパフォーマンスを出し尽くすこと。どれだけ苦しくても『僕が行くんだ』、という精神状態を作ることを、選手には目標として掲げてほしいと思います」。

静岡ジェードは、卓球を通した静岡のスポーツ文化の活性化に取り組み、シーズンに向けて歩みを進めてきた。そのなかでTリーグ初の監督兼選手として一歩を踏み出した森薗は「シーズンを通して知っていくこともある。どんな試練を与えてくれるのか楽しみにしています」とこの状況を楽しむ様子をみせる。28歳のプレイングマネージャーとともに進みだした静岡ジェードの挑戦はまだ始まったばかりだ。

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取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)

《SPREAD》
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