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株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月3日、Bリーグ・川崎ブレイブサンダースが使用する新アリーナに関する概要発表会見を開いた。
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■「スポーツの興行が大事」
DeNAは2021年からJ3のSC相模原の経営参画を始め、昨年、運営会社を連結子会社化しオーナーシップを獲得しているが、こちらも新スタジアム建設を検討中で、同様にスタジアムを中心としたまちづくりをしていく可能性がある。
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株式会社ディ・エヌ・エー岡村信悟代表取締役社長兼CEO 撮影:永塚和志
今回のブレイブサンダースの新アリーナプロジェクトも、ベイスターズでの経験も活用しながら、スポーツ施設を中心とした街づくりという視点で進められていくものと思われる。
総務省の官僚から横浜DeNAベイスターズの社長を務め、先述の横浜スタジアムのTOBにも尽力し(その後、同運営会社の社長も担った)、現在はDeNAの社長兼CEOの岡村信悟氏は、「スポーツの力で人と街を元気にすること」が同社の重きを置くところだと述べた。
DeNAの岡村社長兼CEOは「大事なコンテンツであるスポーツの興行。それは期待を超える観戦体験をし、また、スタジアムやアリーナ、そして、周辺地域と一体化することによって賑わいを作る。その賑わいというものはある意味、公共の磁場としてその地域や街の暮らしをさらに彩り豊かなものにします」と話した。
同新アリーナの敷地は多摩川の河川敷に隣接しているが、川崎ブレイブサンダースの元沢伸夫社長は「二次開発」としてランニングやサイクリング用のコース、バーベキュースペースなどを整備するといったところまで手がけていきたい意向も述べている。民設のプロジェクトではあるものの、福田市長は河川敷や道路等の基盤整備のところでプロジェクトをサポートしていくとしている。
冒頭で記した通り、アリーナの仕様等、施設の詳細についてはこれから検討が始まっていく(ゆえに総工費等も現時点では不明)。元沢氏を含めたプロジェクトメンバー、京急の関係者らはアメリカのアリーナ等の視察に行っており、これからヨーロッパにも視察のために飛ぶ予定だという。元沢氏は「持ち帰りたい要素」が訪れるアリーナやスタジアムごとにあり、なにを優先していくかという作業を、着工予定の2025年までの2年間で進めていくと語っている。
竣工・開業は2028年予定で、2028-29シーズンからの使用を目指している。アリーナの規模は現在、ホームとして使っているとどろきアリーナの約2倍となる1万人となる方向だ。
■「“かっけーアリーナ”になってほしい」と篠山竜青
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川崎ブレイブサンダース篠山竜青 撮影:永塚和志
選手を代表して会見に登壇した篠山竜青は現在34歳のベテランだが、今回のプロジェクト概要を聞いて新アリーナでプレーすることが「明確」な目標になったと話した。
「超“かっけーアリーナ”になってほしいです。どこかを模倣するとかそういうことではなく、いろんなアリーナの良いところを全部取ってきて、アジアでも世界でも屈指のクールでかっこいいアリーナができると思っています。すごく期待しています」(篠山)
川崎市は、かつては京浜工業地帯の印象が強かった。またスポーツでは、いまは主にアメリカンフットボールの球場へと変貌して使用されている川崎球場(現在は富士通スタジアム川崎という名称となっている)でベイスターズの前身である大洋ホエールズやロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)が本拠としていたことで知られる。
しかし、大洋にしてもロッテにしても集客で苦戦し、球場自体も川崎駅から徒歩で15~20分ほどもかかり、最新鋭のスタジアムからはほど遠い、古臭いものだった。
だが、そうした街の工業地帯の印象、川崎球場の暗い印象から、いまは若い世代が移り住み、実業団も含めスポーツも盛んな、明るい都市となっている。もともと実業団チームだったブレイブサンダースも、Bリーグが7年前に始まり、DeNAが事業継承をして人気向上に務めてきた結果、いまやリーグ屈指の集客数を誇る人気球団となった。
この川崎駅のそばにできるブレイブサンダースの新アリーナとエンターテインメント複合施設は、よりアーバンな都市へと変化し続ける川崎という街の新たな象徴になっていくのではないか。
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著者プロフィール
永塚和志●スポーツライター
元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。