TOYOTA GAZOO Racing（TGR）は、2023年シーズンのFIA世界耐久選手権（WEC）に向け改良されたハイパーカーGR010 HYBRIDを発表。TGRはこの新たな時代のスタートとなる2023年シーズンのWECで、シリーズ・チャンピオンとル・マン24時間レースの連覇を目指し、挑む。
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■群雄割拠のWECハイパーカークラス
TGRは、これまでル・マン24時間レースを5連覇、WECシリーズ・チャンピオン4連覇を果たしている。ディフェンディング・チャンピオンとしてTGRは今季、記念すべき100周年を迎えるル・マン24時間レースも含めた全7戦で、ハイパーカークラスのライバルからの挑戦を受けて立つ。
ル・マン100周年で6連覇を成し遂げるか (C) TOYOTA GAZOO Racing
ハイパーカークラスには、これまでのプジョー、グリッケンハウスに加え、キャデラック、フェラーリ、ポルシェ、そして、ヴァンウォールが新たに加わり、計13台がWECのグリッドに並ぶ予定。シリーズ最大のイベントであるル・マン24時間レースでは、さらなる参戦が見込まれ、伝統の耐久レース制覇という栄誉をかけた激戦が待ち受ける。
2021年1月に最初のハイパーカーとしてデビューしたGR010 HYBRIDは、その後も細かい領域での進化を続けて、2022年シーズンに向け信頼性と効率の最適化が進められてきた。
GR010 HYBRIDに搭載される、520kW（707PS）を発揮する3.5リッターエンジンと200kW（272PS）を発揮する電気モーターの組み合わせによる高性能レーシング・ハイブリッド・パワートレーンは、10年以上にわたるル・マン24時間レース参戦で培われ、軽量化と信頼性の向上が図られた。
2023年仕様のGR010 HYBRIDで進化のポイントは、ボディーワーク。車両前部の左右に新たに配されたダイブプレーン空力デバイスと、小型化されたリアウィングのエンドプレート、その他細かなディテールの変更により、操作性と空力安定性が向上している。
また、ブレーキの冷却とレース中の迅速な冷却設定の変更を目的とし、車両前後に新たにベンチレーションが設けられた。加えて、夜間走行時の視認性向上のため、ヘッドライトのレイアウトも変更。
レギュレーションで許される1040kgを達成するため、GR010 HYBRIDの車両重量を軽減する作業も進められた。
GR010 HYBRIDは今年もまた、ワイン製造時の廃棄物や農産物から100％生成されたバイオ燃料を使用。これにより少なくとも65％のCO2排出削減が見込まれ、耐久レースにおけるサスティナビリティ向上への継続的な取り組みに貢献する。
さらに、エネルギー使用量と排出ガスを抑制するために、タイヤウォーマーの使用も禁止されたため、ミシュランは耐久性とパフォーマンスを維持したまま、温度上昇が早く、素早くピーク性能に達するようにデザインされた、新たなコンパウンドのタイヤを開発した。
■小林可夢偉、平川亮が挑む偉業
改良型GR010 HYBRID (C) TOYOTA GAZOO Racing
TGRの2023年ドライバーラインナップは今季も変更なく、ル・マンの勝者とWECのチャンピオン経験者のみという強力な体制で臨む。GR010 HYBRID 7号車は小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスの3名が6年目のシーズンを戦う。昨年のル・マン24時間を制し、WECの世界チャンピオンも獲得したセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の3名がタイトル防衛を目指し8号車をドライブする。
そして、2023年のテスト・リザーブドライバーは、中嶋一貴が担当。3度のル・マン24時間レース王者かつ世界チャンピオンの経験者で、2度のスーパーフォーミュラ・チャンピオンとなった中嶋は21年シーズンをもって引退。今季はTOYOTA GAZOO Racing ヨーロッパ副会長とテスト・リザーブドライバーを兼任する。
チーム代表を兼任する小林は「待ちに待ったシーズンを迎えます。これだけ多くのマニュファクチャラーがハイパーカークラスに参戦するというのはファンの皆様にとっても素晴らしいことですし、チームとしても新たなライバルの登場に気持ちが高まっています。特にル・マン100周年という記念すべき年でもありますし、強力なライバルと優勝を争い、ファンの皆様に楽しんでいただける、記憶に残るシーズンにしたいと思っています。我々は立ち止まることなく、常に『もっといいクルマづくり』を推し進めていきます。そのために、昨年に続きGR010 HYBRIDには幾つかの改良を施して2023年に挑みます。これらのアップデートは東富士とドイツ・ケルンのチームメンバー、パートナーやサプライヤーの皆様との強い協力関係により生み出されたもので、関係者全員の尽力に感謝したいと思います。この改良型車両を、ロールアウトとプレシーズンテストで走らせたドライバーたちの印象は、とても好感触で、ル・マン制覇とWECタイトル防衛に向けた自信を与えてくれるものでした」とさらなる連覇に自信を覗かせる。
2022年、チーム代表としての初勝利に笑みを浮かべる小林可夢偉（C）TGR
WECの2023年シーズンは、3月11日、12日に行われるプロローグテストで幕を開け、17日のセブリング1000マイルレースで開幕戦を迎える。以降、4月16日の第2戦ポルティマオ6時間（ポルトガル）、4月29日の第3戦スパ・フランコルシャン6時間（ベルギー）戦を経て、シーズンのハイライトとなる第4戦ル・マン24時間レースとなる。
100周年の記念レースとなる今年のル・マン24時間レースは6月10日、11日にかけ開催。シーズン後半の3戦は、7月9日のモンツァ6時間（イタリア）、9月10日の富士6時間、そして、11月4日バーレーン8時間（バーレーン）と全7戦で争われる。
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文●SPREAD編集部
