【ボクシング】バンタム級4団体統一王者・井上尚弥と同じ時代を生きる喜びを噛み締めよう モンスターは次のステージへ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【ボクシング】バンタム級4団体統一王者・井上尚弥と同じ時代を生きる喜びを噛み締めよう モンスターは次のステージへ

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【ボクシング】バンタム級4団体統一王者・井上尚弥と同じ時代を生きる喜びを噛み締めよう モンスターは次のステージへ
  • 【ボクシング】バンタム級4団体統一王者・井上尚弥と同じ時代を生きる喜びを噛み締めよう モンスターは次のステージへ

モンスターがついに日本ボクシング界に金字塔を打ち立てた。

◆【実際の映像】モンスター井上尚弥、4団体統一王者となる11ラウンドTKOシーン

◆【実際の映像】井上尚弥、瞬き厳禁の圧巻ラッシュでドネアが大の字KO!「井上尚弥vs.ノニト・ドネア2」モンスターTKO勝利の瞬間

■4本のベルトをかけて両者がリング上で対峙

かつての4階級王者ロイ・ジョーンズ Jr.を彷彿とさせる挑発を見せる井上(左) (C) PXB WORLD SPIRITS / フェニックスバトル・パートナーズ

WBA、WBC、IBF、WBO世界バンタム級タイトルマッチが13日、東京・有明アリーナで行われ、井上尚弥(大橋)がポール・バトラー(イギリス)を11回1分9秒TKOで破り、悲願の4団体統一を成し遂げた。

20時前、井上は引き締まった表情でリングに登場。肉体はオーラを放ち、前日の計量で30グラムオーバーという“オマケ”の影響を払拭する仕上がりを誇示した。一方のバトラーも勝てば4団体統一チャンピオンという条件は同じ。この試合にかける意気込みを全身にみなぎらせた。

■力差のあるエキシビジョンマッチの様相

しかし、試合開始のゴングから1分も経つと、両者の力関係が明らかになる。じっくりとプレッシャーをかける井上に対して、バトラーは下がりながら守りに専念。モンスターはガードの上から力強い左右フックを打ち込み、相手を尻込みさせた。

2ラウンド以降、井上は完全にバトラーのパンチを見切ってしまう。ときおり打ち返してくる左フックを、普段はあまり見せないスウェイバックでトリッキーにかわしてみせる。さらに8ラウンドには、かつてロイ・ジョーンズ Jr.(1990年代から2000年代に活躍、ヘビー級まで4階級制覇)が見せた、両手を後ろに組んで相手を挑発するポーズも。ロープに追い詰めて、ガードを固める相手をサンドバック状態にするシーンも目立つようになった。

バトラーにモンスターを倒すパンチがないことは明白。力差のあるエキシビションマッチ状態になったが、バトラーのディフェンスは堅い。左右のグローブをこめかみにピタリと置き、決定的な被弾を避ける。圧倒的な試合展開のままラウンドが進み、「もしや判定か」という空気が漂った。

■プレッシャーをKOモードに高め、ボディブローでフィニッシュ

第11ラウンド、井上尚弥の連打を浴びロープ際で崩れ落ちるポール・バトラー (C) PXB WORLD SPIRITS / フェニックスバトル・パートナーズ

そして、迎えた11ラウンド。井上は、「行くぞ」というように細かいステップを踏んでコーナーを飛び出し、プレッシャーをKOモードに高めた。すると、相打ちのタイミングで放った左フックがバトラーの顎にヒット。腰を落とした獲物に襲いかかり、ついに連打でノックアウトにつなげた。試合後、敗者は「ボディブローが効いた」と言葉少なに語った。

同じ圧勝でも、判定とKOでは価値がまったく違う。リング上でインタビューを受けた4団体統一王者は、「12月13日は最高の日になりました!」と、晴れ晴れと勝利の雄叫びを上げた。井上は戦績を24戦全勝(21KO)に更新した。

下馬評を覆し11ラウンドまで粘ったポール・バトラーもついにマットに倒れる (C) PXB WORLD SPIRITS / フェニックスバトル・パートナーズ

■次の標的はスーパーバンタム級の全勝王者2人

バンタム級最終章」と自ら宣言した通り、今後はスーパーバンタム級に上げての新たな挑戦が始まる。現在、スーパーバンタム級はWBAとIBFがムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、WBCとWBOがスティーブン・フルトン(アメリカ)がベルトを保持している。

アフマダリエフはリオデジャネイロ五輪の銅メダリストで、戦績は11戦全勝(8KO)。2つの王座を3度防衛中のテクニシャン。一方のフルトンは21戦全勝(8KO)のレコードを持つ評価の高い選手だ。井上を含め、3人の全勝ボクサーがタイトル争いを繰り広げていくことになる。

気の早いファンは「あと2試合でスーパーバンタム級も4団体統一だ」と言いたいだろう。しかし、試合スケジュールはまったく未定だ。井上は全勝王者2人を相手にすることになるのかチューンアップ期間を挟んで、タイトルマッチに臨むか展開が気になるところだ。

いましばし井上尚弥の時代をともに生きる喜びを、じっくりと味わっていきたい。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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