【Bリーグ】宇都宮ブレックス元ヘッドコーチ安齋竜三が、越谷アルファーズで目指す未来 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【Bリーグ】宇都宮ブレックス元ヘッドコーチ安齋竜三が、越谷アルファーズで目指す未来

新着 ビジネス
【Bリーグ】宇都宮ブレックス元ヘッドコーチ安齋竜三が、越谷アルファーズで目指す未来
  • 【Bリーグ】宇都宮ブレックス元ヘッドコーチ安齋竜三が、越谷アルファーズで目指す未来

2021-22シーズン、宇都宮ブレックスを2度目の頂点へ導いた安齋竜三ヘッドコーチ(HC)、オフシーズンに宇都宮との契約満了が発表された際には、その去就に大きな注目が集まった。

◆「キムタク、スポーツベッティング始めるってよ」 JSCが新スポーツくじを発売、木村拓哉さんがアンバサダーに

■ヘッドコーチはやらないと決めていた

安齋が選んだ次なる挑戦は、B2リーグでB1リーグ昇格を目指し戦う越谷アルファーズだった。

拓殖大学卒業後、前身の大塚商会アルファーズに入団しプロキャリアをスタートさせた。彼にとってゆかりあるチームに、チャンピオンリングを携え戻ってきたのだ。今シーズンに限っては、HCはやらないと決めていた。「越谷のオーナーには20年以上お世話になっているし、家族は宇都宮にいる。今も試合後に戻っているので、近いことも大きな理由」だった。

宇都宮では創設期から選手として活躍し、その後コーチの道を歩んだ。淋しさがなかったわけではないが、最後のシーズンに優勝までたどり着き「やるべきことはやれた」と達成感のほうが大きかった。11月6日に行われた福島ファイヤーボンズ戦後には、チャンピオンリング贈呈式が行われた。宇都宮のファンも会場につめかけていた。「嬉しかった。アシスタントコーチでもヘッドコーチでも、リングをもらえることは限られた人しか手にできない」と喜んだ。

現在、越谷ではアドバイザーという立場でチームと向き合っている。「コーチ業とメインは変わらない。プラス、宇都宮で創設から15年いた経験を元に、チームのマネージャーやトレーナー、経営にもアドバイスをしている」。

コーチとしては、桜木ジェイアールがスーパーバイジングコーチとして主に指揮し、安齋は一歩下がった場所に控える。試合中も同様。ただ、ここぞという際には立ち上がり後方から指示を飛ばしている。

■B1昇格へはまず意識改革から

越谷がB1昇格を果たすために、まず意識改革から。「ブレックスと比較すると、意識やバスケに対する姿勢が違う。(ブレックスは)ファンとスポンサーを念頭に置いていて、感謝をプレーで表現するための準備を、日々の練習から意識付けられていた」。もちろん、そこには長く日本バスケットボール界を牽引し続ける田臥勇太らの存在が大きかった。「みんな(田臥を)見習っていた。外国籍選手も努力家だった。練習時間が限られた中で、余計その時間を大切にしていた」と振り返る。

越谷はまだまだプロチームとしても発展途上。「若い選手や経験が多くない選手もいるからこそ、自分のためだけにプレーをするのではない」と、安齋は伝えている。開幕からここまで、既に「まだ足りないが、徐々にプロとしてお金をもらっていることへの意識が芽生えている。練習内容も変わってきた。選手たちで練習について、ミスについて、各々声を掛け合うようになった」と変化が見え始めている。 そんな桜木ジェイアールや選手たちは、すでに安齋が加わってからの変化や効果について語っている。桜木は「試合前日に緊張しなくなった」と明かす。安齋はこれについて「自分で追い込んでいただけかもしれないが、試合になると考えてしまいすぎるところがあった」と分析。安斎自身、優勝を成し遂げた昨シーズンは、佐々宜央、町田洋介両アシスタントコーチに部分的に託したことで楽になった経験から、桜木とも「お互いの感覚で助け合い、任せ合っている」という。

安齋とともに、今シーズンから加入したスモールフォワード菊地祥平もチームに大きな影響を与えている。シューティングガードの長谷川智也は先日、試合後の会見で安齋と菊地からは「勝者のメンタリティーがもたらされている。言葉の重みが違う」と語っていた。

■優勝を成し遂げたもの同士の理解

菊地の前所属チームはアルバルク東京。当たり前のことを常にやり続ける。やらないと指摘される環境にいた。菊地は「やり続けることができれば、競った状況でも、オフェンスの機会、いいディフェンス、リバウンドに繋がる。なんとなくプレーしてはズルズルと負けてしまうこともあり、急にやろうとしてもできない」という。菊地は、練習からその姿勢を示してくれている。安斎はそれを「厳しい時でも声をかけたことを率先してやってくれる」と評価する。優勝を成し遂げたもの同士、勝つために、目標を達成するために必要なこと、犠牲にすべきこと、様々理解している。安齋にとっても菊地は頼もしい存在なのだ。

最初に比べれば「いいチームになってきている。個々の意識も高くなっている。だが、成績はある程度残っているが、負けておかしくない試合もあった。やることをしっかりやれているから勝ちゲームになっている。これを続けていけるかが鍵になる」と名指揮官は指摘しつつ、「1回負けて崩れてしまうこともある。それを避けたい」と常に危機感も持ち合わせる。

12月8日現在、各チーム19試合を終え、16勝3敗。越谷はB2首位を走っている。しかし、「勝ってきたチームにいた人間は、決して今の成績には何も感じていない」。

チームを強化すると同時に、クラブの運営面でも課題に取り組む。「お客様にもっと観戦に来てもらえるように」、少しでも貢献できればと自身のSNSも活性化させた。

宇都宮のホーム、ブレックスアリーナは特有な空間。チームを後押しするファンの声援は相手チームが恐れるほどだ。「震えるほどの歓声だった。チャンピオンシップなどは凄まじい。指揮をとっていることは幸せなことだなと思った。応援されるなら応えなければ」と常に感じていた。

現在も声を出しての応援は制限されている。だが、越谷でも作り上げたいもの、目指すものは見えている。そのために「まずは認知してもらうこと、試合に足を運んでもらうこと。開幕戦は3000人を越える観客が詰めかけてくれた。これが日常になるように」と挑戦は始まったばかりだ。

■ラーメンの投稿ばかり?

ヘッドコーチはやらないと決めていても、同じような立場でバスケットボールと向き合っている。しかしこの先の「将来展望はまだ見えていない」そうだ。

まずは越谷をB1へ昇格させることが使命。最近、サッカー日本代表の活躍が大きく話題になった、FIFAワールドカップ2022も熱心に観戦した。他のスポーツも様々チェックする。画面に映し出されると「コーチの身振り手振りや表情に注目する」といい、指導者のドキュメンタリー番組などを興味深く見るそうだ。おそらく近い将来、またヘッドコーチという肩書きでファンを沸かせ、日本バスケットボールに貢献するのだろうと思う。 越谷の次なる対戦にも注目したい。10日、11日にはアウェー、長崎に乗り込み、今シーズンB3リーグから昇格してきた長崎ヴェルカとの対戦が待っている。長崎には、以前宇都宮に所属していたジェフ・ギブスやLJ・ピークが在籍している。「対戦は楽しみ。B2リーグからもBリーグを押し上げ、盛り上げて行けたら」と語ってくれた。 インタビューの終わり、「試合会場へぜひ足を運んで欲しい。SNSも頑張るので。ラーメンの投稿ばかりだけど」などと時折ユーモアたっぷりに話す。試合では険しい安齋の姿をよく見てきたが、そう水を向けると「ファンのみなさんが怒ったところが見たいと言うから(笑)」と最後までちゃめっ気ある一面を見せてくれた。

バスケットボールに愚直に真摯に向き合い続けている。そんな安齋が、新たな仲間とどんなチームを作り上げるのか。そして、B1昇格を果たすことができるのか、ぜひ期待したい。

◆【Bリーグ】宇都宮ブレックス、5季ぶり王者 その強さの秘密

◆白鴎大を初の日本一に導いた網野友雄監督インタビュー 「日本バスケの世界的認知を目指したい」

◆【スポーツビジネスを読む】公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ島田慎二チェアマン 前編 「なんでやねん」からの代表理事CEO就任

■著者プロフィール

木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長

テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。

《SPREAD》
page top