【MLB】Take Me Out to the Ball Game オークランド・アスレチックス観戦記 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【MLB】Take Me Out to the Ball Game オークランド・アスレチックス観戦記

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【MLB】Take Me Out to the Ball Game オークランド・アスレチックス観戦記
  • 【MLB】Take Me Out to the Ball Game オークランド・アスレチックス観戦記

旅の途中でオークランドに住む友人の家にやっかいになった。やはりアメリカといえばベースボール! 自然と「野球を観にいこう!」と相成った。

残念ながら地元、オークランド・アスレチックスは今年、低迷している。アメリカン・リーグ西地区5チームのなかで最下位だ。7月9日現在、チーム打率.210、チーム防御率4.34は両方とも最低で、30近い負け越しになっている。

一方、対戦相手のヒューストン・アストロズは2位のシアトル・マリナーズにゲーム差13をつけて首位を独走中。この数字だけをみれば勝つ可能性は低く感じるが、野球はチームの実力どおりに勝敗が決まるわけではない。

日本ではニューヨーク・ヤンキース大谷翔平所属のロサンゼルス・エンゼルスばかりが話題ではあるが、アスレチックはリーグ優勝15回、ワールドシリーズ制覇9度を誇る古豪である。1901年、アメリカン・リーグ創設とともに球団もフィラデルフィアで設立され、1968年にここカリフォルニア州オークランドに移転している。

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最下位ともなると昔のパ・リーグのように観客もまばら 撮影:牧野森太郎

1972年からはワールドシリーズ3連覇を成し遂げたが、戦後3連覇以上を達成したのはヤンキースとアスレチックスのみである。また、ブラッド・ピット主演で映画化された『マネー・ボール』を実践、セイバーメトリクスをメジャーにしたのもアスレチックスだった。

2011年シーズンには松井秀喜が在籍。これを記憶している日本のファンも多いだろう。イニングの合間に流れる球団のイメージビデオの中にも、いまだ松井の姿があった。また、岡島秀樹岩村明憲薮恵壹らも在籍した過去がある。

マスコットは、白い象のストンパー。何かと思ったら、1905年のワールドシリーズで対戦相手のニューヨーク・ヤンキーズの監督が、「アスレチックスは、白い象のように意味がない存在だ」と発言したのを逆手にとったのだそうだ。「白い象」には、「意味がない」という意味がある!? 歴史のあるマスコットなのだ。

由緒あるマスコットは、白い象の「ストンパー」 撮影:牧野森太郎

さて、いよいよスタジアムだ。本拠地オークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムは、海に近いエリアに位置している。試合開始の時間が迫ってファンが続々押し寄せて……と思っていたが、なんと球場は空席が目立つ。アストロズの一塁側は、まるで閑散としている。これは、いったいどうしたことだ……。

■アスレチックスもラスベガスに移転の噂が……

アスレチックスは新球場建設の問題が長年くすぶっている。そんな中、2019年にはNBAのゴールデンステート・ウォリアーズがオークランドからサンフランシスコに、2020年にはNFLのレイダースがラスベガスに移転してしまった。アスレチックスもラスベガスに移転するという噂が流れ、ファン離れが著しいという。オンラインで販売されているチケットは11ドルと格安。当日、窓口で買ったチケットも15ドルだった。ともすれば「オークランド・アスレチックス」を観戦できる残り少ない機会かもしれない。

それでもレプリカユニフォームを着て応援する熱いファンがいる。なんとか「勢いのある姿を見せてほしい」と期待していると、2回に5番バッターのエルビス・アンドルスが2ランホームランを放って先制、先発のポール・ブラックバーンも3回までパーフェクト・ピッチングを見せる。外野席のサポーターも盛り上がる。ゴーゴー! アスレチックス!

しかし、4回にアレックス・ブレグマンの2ラン・ホームランなどで逆転されると、5回にはマーティン・マルドナドの3ランで2−6と突き放されてしまった。日本の応援を真似したのか、トランペットを吹いているファンがいたが、その調子外れの音色がだんだんもの悲しくなってきた。

スタンドが静かになるのと対照的に、バーエリアが盛り上がっている。女性DJが威勢のいい音楽を流し、ダンス・フロアさながらにユニフォーム姿の人たちが踊っている。オークランドは有名ラッパーを次々に輩出しているラッパー天国なのだ。ここだけを見たら大勝ムードかと勘違いしそうだ。

スタジアムなのに普通にDJがいるあたりも本場なり 撮影:牧野森太郎

バーの雰囲気もいい。クラフトビールのタップがズラッと並び、ウイスキーやスピリッツの品ぞろえも豊富だ。カクテルの注文が入ると、バーテンが手際よくシェイカーを振っている。

そのほか、ビリヤードや卓球台が置いてあるのにもビックリした。大人も子どもも、けっこう楽しそうに卓球をしている。日本の球場ではありえない光景だ。試合観戦は二の次、というファンも多いのかもしれない。Take Me Out to the Ball Gameを口ずさめば、勝っても負けてもおかまいなし?   野球を楽しむのがアメリカン・スタイルか。まさに「ボールパーク」の名の通りだ。

負け試合にもかかわらず陽気なアメリカン もはや試合は関係ない? 撮影:牧野森太郎

結局、試合は3-8で終了。アスレチックスのヒットは4本だけだった。応援の甲斐なく負けてしまったが、ボールパークに行くのは、やっぱり楽しい。チャンスがあれば、アメリカ各地の球場に足を運んでみたい。その気持ちが強くなった観戦だった。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

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