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冒頭から手前味噌で恐縮ながら、年末恒例のスポーツ10大ニュース企画は2001年にMSNでスタートして以来その後、「Yahoo!ニュース個人」へと引っ越し、そしてさらにSPREADへ、おかげさまで今年第20回を数える。振り返ればよくぞ、ここまで生き延びたもの。関係各位にはあらためて御礼申し上げる。
世界はいまだにコロナ禍にあり、濃厚接触認定された者と同席した上、自覚症状がありながらサッカー天皇杯を観戦する観客が現れるなど、スポーツを取り巻く世界でも愚か者が散見されるが、それでも「スポーツの火」が消えることなく持続されている事実は、スポーツの存在価値の現れだと信じたいもの。
1年延期となり異例の「オリンピック・イヤー」となった2021年のスポーツ、いつも通り独断と偏見のみでランキングした。
次点 新型コロナの影響下、東京五輪開催 しかし他各種大会はなぜか中止に
昨年に続き今年も新型コロナに席巻されたスポーツ界、いや世界ではあるが、一年間の延期を経て「2020年の」東京五輪が開催された。その是非や成否については後年、評価が定められるだろうゆえ、ここでは言及しない。まずは開催されたという事実だ。
【東京五輪】あらためて考えたいスポーツの存在意義 東京五輪開会式に思う
しかし、いささか不思議に思われるのは、それ以外の国際スポーツイベントは軒並み中止の判断に至った点。テニスではジャパン・ウィメンズ・オープンを筆頭に歴史ある東レ・パンパシ、楽天ジャパン・オープンなどが選手および関係者の入国管理不能を理由にキャンセル。モータースポーツ界でも、F1の日本GP、ラリージャパン、鈴鹿8時間耐久、MotoGPなどが休止に追い込まれ、トヨタの豊田章男社長が「五輪はOKなのに、四輪も二輪もNGとは…」と苦言を呈したほど。関係各位の無念をお察しする。
次点 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会・森喜朗会長が辞任
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東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(2021年1月28日) (C)Getty Images
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会・森喜朗会長(当時)が2月3日に行われた日本オリンピック委員会の臨時評議会で女性蔑視発言。後に撤回・謝罪し、国際オリンピック委員会を含め関係各所から「お咎めなし」とされた。
ところが、こちらも五輪トップスポンサーであるトヨタ自動車・豊田章男社長を始めとし世界中からの批難に晒され12日に辞任。これに続き五輪担当者の不祥事が芋づる式に露呈し、日本およびスポーツ界の旧態然とした体質が詳らかになった。古い日本は、この五輪で本当に変わったのか……、今後が気になるばかり。
森喜朗会長辞任でも変わらない政界・スポーツ界にはびこる「旧体制」というグローバル問題
第10位 陸上男子100mで山縣亮太が日本新記録の9秒95を樹立
かつて「日本人が100メートルで10秒を切るのは無理」と囁かれた時代があった。世界では1968年に9秒台に突入したものの、98年に伊東浩司が10秒フラットを記録して以来、その日本記録を破る選手は現れたなかった。しかし2017年9月9日に桐生祥秀が9秒98を記録、日本人として初めて10秒を切ると、19年5月にはサニブラウン・アブデル・ハキームが、その7月には小池祐貴が9秒台に突入。そしてオリンピックイヤーの6月6日に山縣亮太が9秒95の日本記録を樹立した。これだけのタレントが揃っていれば、東京五輪の400mリレーに期待が膨らんだのも無理からぬことだろう。
なお現在の世界記録は2009年8月16日にジャマイカのウサイン・ボルトが記録した9秒58。実に12年間、これを上回る記録は世界でもない。
【陸上】山縣亮太の日本新で夢が膨らむ400メートルリレー 9秒台ホルダーが4人そろう豪華布陣も
第9位 史上最多45度の優勝を誇る第69代横綱白鵬が引退
日本の国技・大相撲で史上最多の優勝45回を誇る第69代横綱白鵬が現役引退の意向を固めたと9月27日に報道。30日に日本相撲協会の理事会で承認された。白鵬は2000年に15歳で来日、01年3月に初土俵を踏むと04年1月に十両、同年5月に史上4番目の若さで新入幕を果たした。06年5月場所で大関昇進後、初優勝を遂げると、07年7月場所から横綱となった。
優勝回数45回は大鵬の32回を大きく上回る史上1位。全勝優勝16度も歴代1位。63連勝は、双葉山の「不滅の69連勝」に次ぐ2位、7場所連続優勝は朝青龍に並ぶ1位タイ。横綱在位84場所、通算1187勝、幕内1093勝などすべて歴代1位と記録づくめの相撲人生だった。
時として日本出身力士ではない点からも過小評価されるケースもあり、特に横綱らしからぬ取り組みや品格をめぐる論争を巻き落としたものの、まさに一時代を築き上げた力士である点には、一点の曇りもなかろう。
第8位 スキージャンプ高梨沙羅が男女を通し前人未到の109度目表彰台 優勝回数も60を突破
スキージャンプの高梨沙羅は2月19日に行われたワールドカップでこのシーズン3勝目を挙げ通算60勝を達成した。男女を通じてのこれまでの最多は男子、グレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)の53勝、女子ではマーレン・ルンビの30勝が次点であることを考えると、高梨の突出した記録が理解できるだろう。
【スキー】高梨沙羅、ジャンプ歴代最多更新の通算60勝目 男女歴代最多表彰台の大記録まであと「2」
高梨はさらに3月13日、ワールドカップ個人女子第12戦で2位に入賞。男子のヤンネ・アホネン(フィンランド)を抜き最多となる109度目の表彰台に立った。こちらも女子の次点はルンビの62回。また日本の「レジェンド」葛西紀明の勝利数は17、表彰台回数は63。こうした観点からも、高梨がいかに偉大な傑出した選手か明らかではあるものの、スキージャンプが「日本で大人気のスポーツ」ではないため、彼女は日本でもっとも過小評価されているアスリートのひとりと考えられる。
※記録はすべて20−21年シーズン終了時
第7位 ル・マン24時間で小林可夢偉組が初優勝
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2021年最終戦表彰台 中央が中嶋組、左に小林組(C)TGR
これまた日本では過小評価されている世界3大自動車レースのひとつ、世界耐久選手権(WEC)・第89回ル・マン24時間レース決勝が開催され、最上位ハイパーカークラスのトヨタGR010 HYBRID7号車が8月22日、トップでチェッカー、小林可夢偉−ホセ・マリア・ロペス−マイク・コンウェイ組が優勝した。小林は悲願のル・マン初優勝。4連覇を狙った中嶋一貴−セバスチャン・ブエミ−ブレンドン・ハートレイ組は2位に終わった。なお、トヨタとしてはル・マン4連覇を達成。
また、トヨタはこのクラスで2021年シーズン6戦全勝。小林組3勝、中嶋組3勝ながら、年間ランキングでも小林組がドライバーズ・チャンピオンとなった。中嶋はシーズン後、レーシング・ドライバーとして引退を表明。ここ4年間、トヨタ黄金時代の一翼を担っていただけに、来年以降のトヨタの挑戦にどんな影響を及ぼすか、本10大ニュース・ランキングでも18年以来「常連」となっていただけに、かなり気になるところ。
【WEC】TOYOTA GAZOO Racing ハイパーカー全レースを制覇 勇退の中嶋一貴組が有終の美、小林可夢偉組が王者戴冠
第6位 大坂なおみが2度目の全豪オープン制覇しグランドスラム大会4勝 そして休養
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2度目の全豪オープン優勝を果たした大坂なおみ(2021年2月20日)(C)Getty Images
テニス四大大会のひとつ全豪オープンは2月20日、女子シングルスの決勝が行われ、第3シードの大坂なおみが第22シードのジェニファー・ブレイディ(アメリカ)を6-4、6-3で破り、2年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。大坂にとってグランドスラム大会制覇は4度目。大坂はこれで4大大会決勝は負け知らずの4連勝。まさに女王と呼ばれるレベルまで上り詰めた。
【テニス】大坂なおみ完勝、2年ぶり2度目の全豪制覇 四大大会4勝目
この偉業の後、続く全仏オープンでは記者会見を拒否、2回戦で棄権を選んだ。その後、全米の四大大会初制覇以来、うつに悩まされていると吐露。一躍、アスリートのメンタル面に脚光を浴びせる結果となった。
その後、復帰した東京五輪、全米オープンともに本人が納得できる結果が出せなかっただけに、年明けの全豪で健在を示すのか、復活を陰ながら見守りたい。
第5位 ホンダF1撤退、最終年最終戦最終周でレッドブルのフェルスタッペンが年間王者を奪取
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インタビューに応じたマックス・フェルスタッペン(2021年4月29日)(C) Red Bull Racing Honda
1960年代、80年代、2000年代、そして2010年代と4期にわたってモータースポーツの最高峰F1に挑戦し続けてきたホンダが2020年10月2日、2021年シーズンを持ってF1からの撤退を発表。
今季を最終年とし、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、セルジオ・ペレス、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー、角田裕毅の4台体制で挑んだ。中でもエースのフェルスタッペンは、F1 7度制覇の絶対王者メルセデスのルイス・ハミルトンと真っ向勝負となり、ドライバーズ・チャンピオン争いを同点で最終戦を迎えた。
上位でフィニッシュした者が王者という決定戦で、ポールポジションながらスタートに失敗したフェルスタッペンは終始ハミルトンに遅れをとりレースは終盤へ。レース中の事故が幸いし、セーフティー・カー導入から再スタートを切ったシーズン最終周、土壇場でレッドブルのマシンがメルセデスをパス、そのままチェッカーを切り、ホンダ・エンジンで走りきったフェルスタッペンが自身初の、ホンダにとっては1991年のアイルトン・セナ以来のドライバーズ・チャンピオンを獲得した。
レース・スチュワードの判断が問題視されるレースとなり後味の悪さは残ったが、日本のモータースポーツ・ファンにとって最高の幕切れとなった点は否めないだろう。ホンダ、実に30年ぶりのチャンピオン、非常に感慨深い。
【F1】最終年最終戦最終周でホンダが30年ぶりの年間王者を奪取 「挑戦が報われ感無量」と田辺TD
第4位 笹生優花と畑岡奈紗のメジャープレーオフ末、笹生が全米女子オープン初優勝の快挙
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悲願のメジャー初優勝を飾った笹生優花(C)Getty Images
第76回全米女子オープンは6月6日、カリフォルニア州オリンピッククラブ・レイクコースで最終日が行われ、笹生優花と畑岡奈紗が通算4アンダーと首位で並び、日本選手同士による初の米メジャー大会プレーオフに持ち込まれた。
結果、プレーオフ第3ホール目で笹生がバーディーを決め初優勝。日本の女子選手として、1977年の樋口久子(全米プロゴルフ選手権)、2019年の渋野日向子(全英女子オープン)以来、3人目となるメジャー大会制覇を成し遂げた。
女子ゴルフは一昨年、渋野による42年ぶりの快挙に湧いたばかりだったが、黄金世代からプラチナ世代と呼ばれる選手層の厚さが、すぐさま偉業として目に見える結果に結びついた。国内でも女子ゴルフ人気の趨勢はごぞんじの通り。またすぐさまメジャーを制する選手が輩出されるのか、期待。
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第3位 バスケットボール日本女子代表が銀メダルを獲得
東京五輪では多くの日本選手がメダルを獲得。アスリートにとっては、それまでの労苦が実を結んだ大会だったと捉えたい。だが、ひとつひとつの偉業についてこちらのランキングで取り上げたのでは、10大ニュースどころではなくなってしまうので、お察しの通り東京五輪を素通りして来た。
ただし、ひとつこの快挙だけは記しておかなければならない。バスケットボール日本女子代表が、並みいる競合を打ち破り銀メダルを奪取した。
もともと男子よりも女子のほうが「世界に近い」と囁かれ、少なくともアジアでは4連覇中(今年5連覇を達成)、日本バスケットボール協会三屋裕子会長の口からも「女子はメダル」という発言が飛び出すほどだった。
ところが、WNBAでも活躍した絶対エースの渡嘉敷来夢はケガでメンバーから外れ、危機感が漂っていたのも事実。高さが求められるコンタクトスポーツの中で、果たしてどこまで実力を出し切れるかは本番まで不透明だった。
それが身長では及ばないヨーロッパの競合を次々と撃破。決勝で五輪6連覇中(つまり東京で7連覇達成)、絶対女王のアメリカ代表に敗れはしたもの、それに次ぐ銀メダルなど、まさに夢のような出来事だった。
アメリカ男子が東京五輪で4連覇達成という点を考えれば、アメリカ女子がいかにバスケ界に君臨している理解されるだろう。その次点とあれば、銀メダルでも十二分にあっぱれ!
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第2位 松山英樹がアジア人として初めて米メジャー大会を制覇
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アジア人初のマスターズ 優勝を果たした松山英樹 (C)Getty Images
正直、今年の1位はどちらにすべきなのではないかと今もって悩むところ。これまで青木功、ジャンボ尾崎、中嶋常幸、丸山茂樹などなどの先人が挑んでは跳ね返されてきたゴルフの米メジャー制覇、それをついにやってのける男が現れた。しかも、あの「マスターズで」だ。
第85回となるPGAメジャー大会「マスターズ・トーナメント」は4月11日、ジョージア州オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで最終日が行われ、松山英樹が通算10アンダーで優勝、アジア人として初めてとなるPGAメジャー大会制覇を果たした。
優勝後のコメントを求められ、ただ「サンキュー」とだけ応える松山の姿を目にし、このひと言にどれだけの思いが込められているか想像しただけで、少々目頭が熱くなってしまった。まさに日本のゴルフ史の金字塔として長くファンの記憶に残る偉業だろう。
松山は今後、さらにメジャー大会を制するゴルファーとなるのか……期待大。
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第1位 エンゼルスの大谷翔平、「スポーツ・パーソン・オブ・ザ・イヤー」ならず
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エンゼルス・大谷翔平(C)Getty Images
松山には悪いが、今年は「大谷イヤー」として差し支えないだろう。二刀流でのMLBオールスター出場など、その快挙を数えるといとまなく、またオフシーズンに入ってもなお、いったい現在、何冠目なのかわからないほど「賞タイム」の連続。
大谷を1位に据えるにしても、どのシーンを切り取ろうかと唸ったものの逆に昨年、大坂なおみも受賞した米老舗誌『スポーツ・イラストレーテッド』の「スポーツパーソン・オブ・ザ・イヤー」に選出 “されなかった”という点で少々驚いた。ゆえに、こちらを2021年の1位とした。
選出されたのは、NFLのレジェンド、トム・ブレイディだった。このあたりに少し「アメリカらしさ」をぷんぷんと感じる。
【MLB】米老舗スポーツ誌は“今年の顔”に大谷翔平を選ばず 「同意できない」の声が噴出
大谷がMLBのMVPに選出されるにあたりアメリカの記者が「大谷が毎年、こんな活躍を続けるとMVPは大谷しか獲れなくなってしまう。この際は『大谷翔平賞』を特別に作り、彼にはそれを授与したほうがよいのではないか」と発言していた。言い得て妙だと思ったが、そうするとこの「10大ニュース」シリーズも毎年、大谷が1位に……などという現象が生じるかかもしれない。
はて、来年、大谷はどこまで我々を驚かしてくれるのだろうか。楽しみだ。
さて、みなさんの今年のトップ10ニュースはいかがだっただろうか。ぜひご自身でも2021年のスポーツを振り返ってもらいたい。
それではみなさん、来年こそは良いお年を。
著者プロフィール
たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー
『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。
MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。
推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。
リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。