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ペナントレースはいよいよ佳境に突入したが、セ・リーグは依然として阪神、ヤクルト、巨人による三つ巴の争いが続いている。3.5ゲーム差内での熾烈な戦いの行方は、まだまだ不透明だ。
SPREAD編集部では、現役時代に前述の3球団に所属し4度のリーグ優勝、そして日本一にも貢献した野球評論家・広澤克実氏へのインタビューを実施。これまでの経験や関連するデータを交えながら、各チームのキーマンと終盤戦の展望を占う。今回は首位をキープしてシーズン終盤を迎えた阪神について話を聞いた。
◆ヤクルトと巨人は“虎の尾”を掴めるか…OB広澤克実氏が考える両球団のキーマンとは
■広澤氏が改めて語る佐藤輝の評価と期待
前半戦を13年ぶりの首位で折り返した阪神は、19日現在でも2位ヤクルトに2.5ゲーム差をつけてその座をキープ。躍進の原動力となった存在について尋ねると、広澤氏は即答で「佐藤輝と中野、この2人が大きいですね」とルーキーコンビの名を挙げた。新人離れした長打力と豪快なスイングが持ち味の佐藤輝明は、現在2軍で再調整中だがここまで23本塁打、60打点をマーク。また、同じくルーキーの中野拓夢もレギュラーの座を掴み打率.276、22盗塁の活躍でチームに新風を吹き込んだ。
今季の球界を大いに騒がせてきた佐藤輝のパワーについて、現役時代に強打で鳴らした広澤氏は改めて「バケモン」と最大級の賛辞を送り、改めてその評価を語った。
「他の選手なら詰まってフライアウトになる打球が、佐藤輝の場合は逆方向でもホームランになる。パワーという面では桁外れです。
佐藤輝の良い点のひとつは、ステップ幅が小さいこと。ステップ幅が広くなるとパワーを生かせないのですが、彼はステップ幅がすごく狭い。将来さらに飛躍する可能性もあると感じています。ステップ幅が狭いことは、ある意味才能でもあるんですよ。王(貞治)さんもステップ幅は狭かったです」。
間違いなく、今季の阪神を支えたのは若きスラッガーのバットだった。しかし、そんな佐藤輝も8月下旬からは調子を崩し、7日には開幕から継続してきた連続試合出場もストップ。現在は2軍での調整が続いている。1軍への再昇格は20日以降だが、依然として混戦模様のセ・リーグを制するために、一刻も早く復調のきっかけを掴みたいところだ。
広澤氏は佐藤輝の起用法について、今季以降も見据える必要があるのではと“提言”した。
「佐藤輝や大山に主軸としての活躍を今後も期待するなら、(調子を落とした際も)まずはスタメンで起用することが大事だと感じています。そのうえで、結果次第では彼らに代打を出す。このスタイルだと、“心”が刺激されるんですよ。(ベンチスタートの場合だと)悔しさもあるんだけど、ホッとしてしまう部分も少しある。それに、代打で1打席立つだけでは結果を残すことも難しい。育成のための選択肢としてはこういう考え方もあるのかなと思います」。
佐藤輝や大山悠輔同様に、デビュー直後からチームの主軸を務め、その後は移籍や代打など様々な経験を積みながら306本のアーチをかけた広澤氏は、若虎のさらなる成長を楽しみにしている様子だった。
■三つ巴のセ・リーグを制するのは「阪神じゃないかと…」
8月末には一時首位を明け渡すも、再浮上しセ・リーグを引っ張る阪神の姿に、優勝を期待するファンも少なくはないはず。広澤氏も三つ巴の混戦を制するのは、阪神ではないかと予想した。
「ヤクルトには山田と村上がいますが、やはり投手力が課題。巨人は(一部選手の離脱などのチーム状況があり)フルスロットルでの総力戦状態になったのが少し早い気がするし、ここから息切れもある。やはりセ・リーグ首位でシーズンを終えるのは、阪神じゃないかと思います」。
事実、満身創痍で前半戦を乗り切った巨人は、現有戦力をフルに生かした原辰徳監督の采配もあり現在3位につけているが、9月は3勝8敗4分と負け越し。広澤氏が言及したように、失速の兆候も見え隠れしている。
19日には、甲子園で阪神と巨人の第19回戦が予定されている。直接対決は残り7試合。阪神がセーフティリードを確保するのか、それとも巨人が再度の追い込みで奇跡の逆転を果たすのか。まずは今季最後となる聖地での“伝統の一戦”に注目したい。
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文・SPREAD編集部