明るい笑顔と可憐なユニフォーム姿、そして確かな野球の実力でYouTubeなどでも話題を集める笹川萌さんは学生時代、横浜隼人高校や尚美学園大学といった女子野球の名門校でプレーするなど真剣勝負の世界を経験、その体験が現在の活動に大いに活かされている。
インタビュー後編となる今回は、YouTubeでの活動に至った経緯や、昨今盛り上がりを見せる女子野球界についての考えを聞いた。
【画像ギャラリー】笑顔が眩しい笹川萌さんのプレー写真および私服オフショット
【インタビュー前編】最速120キロの美女左腕・笹川萌が語る「野球と私」白球を追い続けた学生時代
■女子野球選手が抱える不安
高校、大学と女子野球の第一線でプレーをしてきた笹川さんだが、ある壁に直面することになる。女子野球選手が抱える不安の一つとも言える「キャリアパス」の問題だ。
「大学野球をやっていても、『その後どうするの?』という、先が見えない不安はありました。今、頑張っている野球女子も同じ気持ちなんじゃないかなと思います。
(当時は)まだ女子プロ野球もスタートしたばかりで、クラブチームも少なかったので、仕事をしながら野球をするとなると……仕事のストレスを抱えながら野球をやりたくはないなという思いがあったので、ここ(大学)でやりきろうと決めてました」
当時も現在も、男子選手に比べると女子選手の受け皿の絶対数はまだまだ少ない。笹川さん自身も大学卒業のタイミングで一区切りをつけ、就職をしたという。
就職後も草野球レベルでは野球を楽しんでいたという笹川さんだが、この草野球から新しい扉が開くことになった。
■草野球から開いたYouTubeへの扉
「ある時の試合相手に野球YouTuberの向(ムコウ)さんが所属していて、自分がその試合で良いピッチングをして、相手のエースからもヒットを打ったことで、向さんから『こいつはヤバい!』とコラボのお話をいただきました。
最初は『自分なんてそんなたいしたことないですよ』と断ったんですけど、『大丈夫だから!』という勢いに負けて出演したところ……現状にたどり着きました(笑)」
その後の活躍は説明不要だろう。ある時はピッチングで、またある時はバッティングで、笹川さんは野球YouTuberのチャンネルを席巻することになる。
なかでも話題を集めたのは、その左腕から投じられるキレの良いボールだ。高校入学当初から投手を務めていたということも納得の投げっぷりだが、自己ベストの球速については予想外の返答が……。
「女子はなかなか球速が表示される球場でプレーができないんですよ。試合をやっても、大学や球速が出ない球場なので、正確な数字はわからないんです。
硬式野球部に所属する男子に打席に立ってもらった際に「130キロ近くは出てるね」ということでした。130~140キロを経験したことがある人から見た球速ですね。(投げたときは周囲がびっくりして)人だかりができてました(笑)」
■女子野球の現在地と甲子園への思い
YouTubeやSNSなど、時代に沿った手法で野球の醍醐味を発信するという、新たな活躍の場を手にした笹川さんだが、自身を形成した「女子野球」への思いも人一倍強い。まだまだ男子と比べると同じ環境とは言い難いが、それでも徐々に状況は変わってきているとも感じている。
「外から見てわかったことですが、女子野球の発展のために動いてくださっている方々がかなり多いんだなと気づきました。NPBの球団が女子チームを設立したり、クラブチームの数自体も増えてきているので、そういったところで女子野球を続けさせてもらえる環境が増えてきていることは感じています」
環境の整備同様に重要な要素として、笹川さんは女子選手にとっての目標となる大舞台も、将来的には必要と語る。男子に比べると観客がいるなかでのプレーは女子野球にとってレアケースだという実体験も踏まえながら、野球人ならば誰もが憧れる聖地、甲子園への思いも滲ませた。
「(女子選手も甲子園に対して)かなり憧れはあると思います。どれだけ男子球児が羨ましかったことか……(笑)あの場所で、あの観客と、テレビ放送もあって……そういった環境でプレーできることは幸せだと思います。
まだ女子の高校野球は全国各地にチームがあるという状況ではないので、各地方などで選抜大会などが行われてからあの聖地でプレーできるくらいの状況になれば、(女子野球の大会も)甲子園で開催してほしいなと思います」
■究極の目標は「満員のスタジアムで……」
女子野球の醍醐味を伝えていくため、今後も様々なフィールドで活動していく予定だという笹川さん。現在は大阪のクラブチームでのプレーなども行っているが、2月20日には自身のYouTubeチャンネルも開設。SNSでの投稿とあわせて、よりダイレクトに野球の魅力や自身のメッセージを多くの人へ向けて発信していくことになる。
自身の豊富な経験や確かな野球の実力、そして時代に適合した新しい手法で「野球×女子」というコンテンツに向き合う笹川さんだが、そんな彼女が胸に秘める目標とは何なのか。
「究極の目標として、満員のスタジアムで投げたい、というのはありますね。女子野球の発展に携わっていきながら、プロでも草野球でもクラブチームでも、やはり満員の球場でプレーしてみたい」
目を輝かせながらそう語った彼女だが、多くの人々を魅了する最大の理由は、この純粋無垢な野球への愛情を持ち続けているからなのかもしれない。
取材/文・SPREAD編集部
◆最速120キロの美女左腕・笹川萌が語る「野球と私」前編・白球を追い続けた学生時代
◆女子野球は“130キロ”時代目前… あと2キロに迫る森若菜が球速にこだわる訳