ボクシングの元ヘビー級3団体統一王者であるマイク・タイソンと、元4階級制覇王者のロイ・ジョーンズ・ジュニアによるエキシビションマッチが28日(日本時間29日)、ロサンゼルスのステイプルズ・センターで行われ、両者は8ラウンドをフルに戦いドローとなった。
今エキシビションは、54歳のタイソンと51歳のジョーンズによる異色のマッチとなったが、随所に往年の輝きやボクシングへの愛情を感じさせる試合展開となり、試合後に笑顔で健闘を称え合う両者の姿が印象的でもあった。
現役選手による“真剣勝負”ではないものの、コロナ禍で一変したスポーツ界においては、また違う意義を感じさせるものとなった。
■他競技のスター選手も大興奮のタイソン“復帰戦”
タイソンにとって約15年ぶりの“復帰戦”は、エキシビションということもあり正式な採点はなく、WBCが選定した元王者3人による採点でドローとなった。
しかし、全8ラウンドを通じて終始圧倒したのはタイソンであった。強烈なボディブローを中心にしたタイソンの攻めの前に、約2年前まで現役であったジョーンズは決定打を許さない展開に持ち込むのが精一杯であった。
試合後にはファンだけでなく、ジョージ・フォアマンやテレンス・クロフォードといったボクシング界のビッグネームから、マジック・ジョンソン(元NBA・レイカーズ)やオデル・ベッカム(NFL・ブラウンズ)など、他競技のスター選手達も興奮気味にSNSでそれぞれの思いをシェアした。
Best exhibition I have ever seen
— George Foreman (@GeorgeForeman) November 29, 2020
「私が見てきた中で、最高のエキシビション」とジョージ・フォアマンは絶賛。
Last night, I watched the fight between Mike Tyson and Roy Jones Jr. Mike has always been one of my favorite fighters and I’m glad both he and Roy didn’t get hurt!
— Earvin Magic Johnson (@MagicJohnson) November 30, 2020
元NBAのスター選手、マジック・ジョンソンも試合観戦を報告し、両者が怪我なく試合を終えたことに安堵のコメント。
■今なおスポーツ界にインパクトを与える、54歳の元“悪童”
かつてはその“悪童”ぶりも大いに話題となったタイソンだが、54歳を迎え約15年ぶりのリング復帰戦となったこの試合では少し異なる表情も垣間見えた。
「まだ俺はやれるんだ」と、自身の存在を再び世界にアピールするかのような軽快なフットワーク。そして、強烈なボディブローは間違いなく相手をマットへ沈めんとするものだが、それでもどこか競技としてボクシングの楽しみを再実感しているようにも見受けられた。
Two legends put on a show Saturday night! #TysonJones
(via @Triller) pic.twitter.com/hbB8MsK1MX
— ESPN Ringside (@ESPNRingside) November 29, 2020
試合後には、ボディブローを受け続けながらなんとかダウンを免れたジョーンズに対して「良い打撃だったはずだが、彼はそれを受けとめた。リスペクトだよ」と語り、フォトセッションではWBCからの記念ベルトと共に、スポーツマンシップに溢れる笑顔を見せた。
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試合後に健闘を称え合うジョーンズ(左)とタイソン (C)Getty Images
また、1000万ドル(約10億4000万円)とされるファイトマネーに関しても、大半を寄付する意向をすでに明らかにしており、今後もチャリティを主眼としたエキシビションマッチの開催に前向きなコメントを残している。無観客試合でありながらも、PPV(ペイパービュー)形態でこの試合を取り扱った米動画配信サービス「FITE」の先行販売額は過去最高を記録と米ヤフー・ファイナンスでも報じられており、今後も同様のエキシビションはスポーツ界における新たな「ヒットコンテンツ」として注目を集めそうだ。
エキシビションでありながら、現役時代さながらのボディメイクで本気の戦いを披露したタイソン。特別ルールとはいえ、この本人の熱の入れ具合があったからこそ、今回の試合がボクシングファンのみならず、スポーツ界全体における大きなトピックとなった一因だろう。
凶悪とまで形容された往年の鋭さと、54歳を迎えた大人の余裕さの双方が内包された8ラウンドの戦い。年齢を感じさせない動きで多くの観戦者に勇気を与えたこの一戦は、マイク・タイソンという不世出のアイコンが今なお人々を魅了する存在であると全世界に証明するものであった。
文・SPREAD編集部