男子テニスのロジャー・フェデラー選手が、長いプロ生活で初めて母の母国・南アフリカで試合を行った。ラファエル・ナダル選手とのエキシビションでダブルスとシングルスをプレーしている。
ケープタウンに降り立ったフェデラー選手は1999年のデビューから、南アフリカでの初試合まで20年もの期間が空いたことを不思議がる。
「やっと南アフリカで試合をする夢が叶った。自分でも分からないんだ。どうしてここまで時間がかかったのか」
幼いころは休暇で南アフリカを訪れたこともあり、この地には家族が住むと思い入れも語る。
「子どものころ、たくさんの休暇を南アフリカで過ごした。ここにはまだ家族がいる。こんなに時間がかかったなんて信じられない」
長年のライバルであり、特別な絆を築いてきたナダル選手が、南アフリカでのエキシビションに応じてくれたことへの感謝も口にした。
「最大のライバルを友人のひとりと呼べるのはいいことだね。彼は私の親友ではないし、私も彼の親友ではないけど」とジョークも交えながら、「私たちは本当にお互いを理解し合っていると思う。私たちは互いに顔を合わせるのが好きで、よく話し、テニスがより良い方向に進むよう気を配っている」と付け加えた。
南アフリカにルーツがあることを誇りに思う
フェデラー選手はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツさんとペアを組み、南アフリカのコメディアン、トレバー・ノアさんとペアを組んだナダル選手とダブルスで対戦。さらにシングルスでナダル選手と3セットマッチを行った。
南アフリカ出身の母リネットさんを伴いコートに現れたフェデラー選手。当地での試合は「いろいろな意味で特別なものになった」と試合後に語った。
「今夜ここに来られて光栄だ。ラファと試合をするのは本当に楽しいことだが、ケープタウンでの初めての経験は、それ以上の意味を持つ。本当にいろいろな意味で特別なものになった。私は南アフリカにルーツがあることを誇りに思っている」
この試合はチケット価格を抑え、多くの観客が来場しやすい値段設定にした。そこには「テニスがビッグなスポーツであることを見せたい」フェデラー選手の思いがあった。その試みはテニス史上最高の観客数5万1954人に繋がった。
大観衆の熱気にナダル選手も興奮した口ぶりとなる。
「いつもどおり僕たちはベストを尽くそうとした。本当に素晴らしいエネルギーを感じることができた。僕たちの気持ちを表現することはできないと思う。このような素晴らしいスタジアムを舞台に、素晴らしい観客の前でプレーできる経験は一生の宝物だ」
エキシビションマッチにはシヤ・コリシも登場
エキシビションマッチには、2019年のラグビーワールドカップで南アフリカ代表の主将を務め、同国に優勝トロフィーを持ち帰ったシヤ・コリシ選手も登場した。地元の英雄が現れたことに5万人の観客もヒートアップ。大歓声で迎える。
コリシ選手はフェデラー選手、ナダル選手とのスリーショットもインスタグラムにアップ。ふたりを「最高のスポーツマンになるために人生を捧げているだけでなく、恩返しの舞台裏で与えている影響力も信じられないほど大きなものがある」と称賛した。
今回の収益はスイスやアフリカの子どもたちを支援する活動費に
今回の試合は、フェデラー選手の地元スイスとアフリカ6ヶ国の幼児教育を支援する「ロジャー・フェデラー財団」の活動の一環として行われた。これまでに同財団は16年間で総額5200万ドル(約57億円)を投じ、約150万人の子どもを援助してきた。
南アフリカでのエキシビションでは、100万ドル(約1億1000万円)の資金調達を目標にしていたが、大幅に超える300万ドル(約3億3000万円)の調達に成功した。
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(c)Getty Images