鈴木啓太が代表を務めるAuB、腸内環境を整えるサプリを発表　研究開発の経緯、コミュニティの設立も

10月2日、サッカー元日本代表の鈴木啓太さんが都内で記者発表会を開き、自身が代表を務めるAuB株式会社の新商品「AuB BASE」を発表。事業戦略や研究成果についても語った。

AuB株式会社はアスリートの腸内細菌を研究するスタートアップ。2015年に設立され、2016年1月から鈴木さんが代表取締役を務める。

サッカー選手として生きた16年間

鈴木さんは2000年、自身が18歳の時に浦和レッドダイヤモンズ（レッズ）に入団。イビチャ・オシムさんが日本代表監督に就任した2006年にはA代表に初選出された。

以降、同監督が指揮を執った期間は唯一、全試合に先発で出場。オシムジャパンを支えた。

Jリーグでは2年連続でベストイレブンに選ばれ、強豪レッズのキャプテンを3年間務めた。熱いプレーとは裏腹に甘いマスクで女性サポーターからも高い人気を誇り、2016年に惜しまれながら現役を引退した。

(c)Getty Images

この日、ブラックのスーツに身を包んで会場に現れた鈴木さんがまず語ったのは「サポーターへの思い」だった。

レッズの一員としてプレーした時も、日の丸をつけて活躍した時も「一番の財産はファン、サポーター、応援してくれる人たちの存在でした」と話す。

支えてくれた人たちに対して自分には何ができるのか、どんな形で恩返しができるのかという思いを胸に抱き、現在はAuB株式会社の代表として研究に心血を注ぐ日々を送る。

その研究とは、アスリートの腸内環境に関するもの。栄養士の母を持ち、幼少期から健康管理のために「便を見なさい」と言われてきたという鈴木さんは、現役時代も腸内環境のケアでコンディションを作ってきた。

アスリートたちはパフォーマンスを上げるため、日々過酷なトレーニングに取り組み続けている。しかしどれだけトレーニングをしても、本番でコンディションが悪ければ本来の実力を出し切ることはできない。これはアスリートに限らず一般の人でも同じだ。

「コンディションが整わないで自分の力を発揮できないのが、一番悲しいこと」

そんな課題をサポートするために開発されたのが、腸内環境を整えるサプリメント「AuB BASE」だ。

「AuB BASE」は27競技500人以上のアスリートから検体をもらい、腸内環境の研究をした後に開発された。4年という長い時間を費やした研究の成果が詰まっている。

当初はアスリートに「便をもらえないか」と急に打診しても断られてしまうなど、検体を集めるうえで苦労があったと語る。

しかし、それまでの研究成果を見せたり、検体をもらった一人ひとりに研究結果をもとにしたアドバイスをする、という活動を繰り返すことで協力してくれる人がどんどん増えたという。

腸内細菌に関する講演会時

そして、「AuB BASE」の販売だけでなく、自身が監督となり「AuBフットサル部」を創設するということも明かされた。

浦和レッズ在籍時から、応援してくれるサポーターたちの熱を肌で感じ、スポーツを通じたコミュニティの強さを感じていたというエピソードを披露。

その経験が、自身で「コミュニティを作る」ことに繋がった。今後はフットサル以外にも、さまざまなスポーツのコミュニティをつくっていきたいと目を輝かせる。

AuBの今後の展望としては、「次世代アスリートの育成やサポートを通じて社会貢献していきたい」と語った。

今回の発表会では、鈴木さん自身が出演するコーポレートムービーがうまく流れないという一幕があった。

しかし鈴木さんは穏やかに笑って、「（ムービーが）流れませんか？」と確認。スタッフが駆け付けて調整している間に「いい船出ですね」といたずらっ子のように微笑み、「僕よりもPCが緊張しているかも（笑）」という冗談で報道陣の笑いを誘う場面もあった。

発表会後に名刺交換や追加質問を受ける際も、列になる報道陣に対して表情豊かに、そして一人ひとりに頭を下げて丁寧に受け答えする姿が非常に印象的だった。

自分よりも背が低い相手に対しては少し腰をかがめ、目線を合わせる。質疑応答のときにも、質問に答える前に毎回笑顔で「ありがとうございます」とお礼をしていたのも、鈴木さんの人柄を感じられる場面だった。

≪文・写真　大塚ちえ≫