東京オリンピックに向け、デジタル教材を活用した"おもてなし"授業 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

東京オリンピックに向け、デジタル教材を活用した"おもてなし"授業

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オリンピック・パラリンピックを題材にした授業が行われた八王子市立横山第二小学校
  • オリンピック・パラリンピックを題材にした授業が行われた八王子市立横山第二小学校
  • 公開授業で使われたデジタル教材。アニメキャラクターとゲーム感覚で学べる
  • 公開授業で使われたデジタル教材。アニメキャラクターとゲーム感覚で学べる
  • 授業をスムーズに進めるワークシート。海外の人へのおもてなしについて学ぶ
  • 2時間目の授業。外国人をお出迎えするシーンがビデオで流れた
  • 外国人との英語でのやりとりが示されていたワークシートも教材として配布
  • 教材のゲームで3つのポイントをゲットし、おもてなし大使に任命された!
  • 日常生活でも実践できるおもてなしとは何か? について考察
 八王子市立横山第二小学校で2月、オリンピック・パラリンピックをテーマにした公開授業が行われた。同校は、東京都のオリンピック・パラリンピック教育推進校に指定されており、今回は6年生の「総合的な学習の時間」において、おもてなしに関する授業が行われた。多様性を尊重しながら、マナー(公徳心)を通じて日本文化の良さを知る。そして豊かな国際感覚を醸成することで、人間関係の形成や積極的な社会参加を促すことが目的だ。

◆ゲーミフィケーションを活用した協働学習教材

 題材として使用された教材は、千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏、筑波大学教授の真田久氏、同大の客員教授である江上いずみ氏の3名が監修し、大日本印刷(DNP)が開発したデジタル教材だ。教材には、デジタルコンテンツのほか、授業構成案(指導案)、ワークシートなどの授業進行ツールも含まれている。その特徴は、おもてなしに基づいて人づくりを進められるように、ゲーミフィケーションを活用した協働学習教材になっている点。アニメーションとともにストーリーが展開し、ゲームを通じて児童がともに学んでいけるシナリオ設計になっている。

◆オリンピックとパラリンピック

 1時間目の授業では、まず挨拶の基本として「同時礼」と「分離礼」の違いについて学んだ。同時礼とは、挨拶と同時にお辞儀をする方法。一方の分離礼は、挨拶をしたあとにお辞儀をする方法だ。ここでは分離礼のほうが丁寧な挨拶であり、相手への気遣いになることが示された。そして児童2人がペアになり、実際に分離礼を練習した。

 2020年に開催される東京オリンピックには、多くの外国人が日本に訪れる。オリンピックを他人事ではなく、自分事として捉え、おもてなしを実践することが大切だ。次に児童たちは、クイズを通じてオリンピックとパラリンピックについて学んだ。「1回目の参加国はいくつの国と地域だったのか?」「パラリンピックの種目数はいくつか?」といった質問に対し、チームごとに話し合い、クラスで1つの答えを集約した。

 生徒たちは、平和な社会を目指すオリンピックと、支え合う社会を目指すパラリンピックの両方について理解したようだ。ステップごとに学習が修了するとスタンプがもらえる「ゲーミフィケーション」の要素が、いっそう生徒のやる気をかき立てていた。

 続いて相手が喜ぶ「おもてなし」の挨拶について学んだ。おもてなしとは、もてなしの丁寧語であるだけでなく「裏も表もないこと」も意味する。まず悪い例の挨拶の映像が流れ、どうしたらよい挨拶になるのか、各人が気づいた点をプリントに列挙。生徒たちは班ごとに意見を交換し、自分たちの意見を発表し合った。「相手を待たさずに積極的に挨拶する」「相手の顔(目)をしっかり見て挨拶する」「お迎えした人が全員でしっかり握手する」などの意見が出された。

◆外国人のおもてなし

 2時間目の授業では、実際に外国人をお出迎えするために、英語による挨拶の練習が行われた。ホストとゲストに分かれて、ペアで会話を復唱したあと、デジタルカウンターの出席番号で選ばれた3名が挨拶を実演。英語をうまく話すことが目的ではなく、すでに学んだ「表情」や「握手」の方法が、おもてなしとして重要だ。ここまで学んだところで、児童たちは3つのポイントをゲットし、教材のなかでおもてなし大使に任命された。

 続いて上級編として、普段の生活で行えるおもてなしの実践について、ふたたびクイズが出題された。外国人の名前を漢字で書いてあげたり、相手の国の言葉で挨拶すると喜んでくれる。逆に子どもの頭をなでることは頭の上には神様がいると信じる国もあることから、国によってはNGだという。

 普段から相手の目を見ながら挨拶することは、おもてなしの1つだ。しかし、おもてなしには、数多くの種類があり、そこに絶対的な正解はない。そこで実際に自分ができそうなおもてなしについて各人が考え、班のなかで意見を交換し合った。ここで生徒たちは、おもてなしが外国人だけでなく、目上の人や、家族、友達にもできることを学んだ。そしてクラス全体として一体どんなおもてなしができるかを考察。最後にクラス30名が目標にするおもてなしについて話し合い、「困っている人がいたら声をかける」「元気よく笑顔で相手の目を見て挨拶する」という目標が定まった。

◆子どもたちの気持ちを温める授業

 授業が終了したあと、サプライズで監修者の江上いずみ氏が登場し、リアルな「おもてなし大使」のメダルのほか、児童全員にオリンピックのバッジをプレゼント。児童たちは初めての公開授業のため少し緊張していたようだったが、よい思い出づくりになったようだ。

 また今回の授業に対する講評会も催された。授業を行った上田隆司教論は「あいさつやおもてなしは、道徳教育の最初の取っ掛かりとして最適な題材です。また教材のゲーム感覚も視覚的に訴えるものとして重要な要素。子どもは本物から学ぶと感動を覚えます。この教材は江上先生が実際にそこにいるかのように丁寧に教えてくださるのがよい点です。また教員の負担が減り、児童のようすを見ながら授業を進められます。福祉の学習とともに、障がい者に対するおもてなしを発展させ、最終的にパラリンピックへの理解につなげたい。この授業はこれだけで終わるものでなく、子どもたちの気持ちを温める授業になると思います。」と述べた。

東京五輪に向け、デジタル教材を活用し“おもてなし”授業…横山第二小学校

《井上猛雄@リセマム》

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