パラサイクリングはUCI(国際自転車競技連合)のもとで行われる障害者の自転車競技だ。選手は障害の種類と使用する自転車により4つのクラスに分けられ、さらに障害の度合いにより分類される。参加する選手の障害の種類は大まかに四肢障害(切断、機能障害)、脳性麻痺、視覚障害、下半身不随だ。
■パラサイクリングの世界チャンピオン、藤田征樹
両脚のヒザから下を失った藤田征樹は通常の二輪自転車を使ったCクラスに区分される。切断、機能障害、麻痺などの四肢の障害を持つ選手が参加するクラスで、藤田はその中でC1からC5のなかのC3にエントリーする。ちなみにTクラスは三輪車を使用し、麻痺などの重度の障害を持つ選手。Bクラスは2人乗りタンデム自転車を使用し、前に乗る選手(パイロット)は健常者で、後ろに視覚障害の選手(ストーカー)が乗る。Hカテゴリーは手でこぐハンドサイクルを使用し、下半身不随などの選手がエントリーする。
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藤田征樹
C3クラスの藤田は大学でトライアスロンをしていたが、交通事故で両脚を切断。それでもトライアスロンをやめず、さらにはパラサイクリングへの参加をすすめられて2008年には北京パラリンピックに出場。2009年には世界選手権のトラック種目で1位になり、世界チャンピオンの称号である5色の虹色ジャージ、アルカンシエルを獲得した。
藤田の快進撃は止まらない。2012年のロンドンパラリンピックではロードレースのタイムトライアルで2大会連続の銅メダル。そして2015年の世界選手権ではロードレースで世界チャンピオンになった。つまり現在、日本にいてアルカンシエルを着用する存在なのである。
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陸上パラ選手の佐藤真海(中央)。右が藤田、左はパラサイクリストの石井雅史
2016年にリオデジャネイロ・パラリンピックを控え、統括団体である日本パラサイクリング連盟はその存在を積極的にアピールしている。東日本復興支援のサイクリングイベント、ツール・ド・東北にも選手を派遣し、2020東京五輪・パラリンピック招致に活躍した陸上パラ選手の佐藤真海とともに自転車の魅力を全国に向けて発信した。
さらに10月にはツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに参戦。世界各国からパラサイクリングの世界チャンピオンが来日し、サーキットコースでタイムトライアルを競うという。
そして2016年1月には伊豆大島でパラサイクリングアジア選手権が開催される。勝つために、速く走るために人一倍の努力をして己の肉体を酷使する。その運動レベルがどれほど高いのか。さいたまや伊豆大島で目撃してみたいと思う。