【GARMIN ForeAthlete 620J インプレ後編】コンパクトでフィット感向上、突き詰めた機能性 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【GARMIN ForeAthlete 620J インプレ後編】コンパクトでフィット感向上、突き詰めた機能性

ウェアラブル ビジネス
自分の走りを総合的に評価してくれるランニングダイナミクス機能。Garminの独自の評価だが、十分に根拠のあるものだ。
  • 自分の走りを総合的に評価してくれるランニングダイナミクス機能。Garminの独自の評価だが、十分に根拠のあるものだ。
  • 本機はカラータッチディスプレイを搭載している。タッチ操作はスマートフォンなどの静電容量式ではなく感圧式なので、押さないと反応しない。慣れるまで戸惑うことがある。
  • GARMIN ForeAthlete 620J
  • ベルトの裏は別の色の素材が貼り付けてあり、その一部が表からも見えることでデザイン状のアクセントになっている。無数の穴と凹みは装着感を驚くほど向上させてくれる。
  • 裏面は絞りこまれた形状となっているため底面の面積が少ない。これの装着感の向上に一役買っていると思われる。右側の4個の接点はクレードルと接触するもので充電やデータ同期などを行う。
  • パソコンに専用ソフトのGarminエクスプレスをインストールしておくことにより、データの同期や本体のバージョンアップ等ができる。
  • Garminエクスプレスは複数のGarmin製デバイスを使用している人にはとても便利なソフトだ。
  • 本機はWi-Fiによるデータ同期にも対応した。パソコンやスマホに頼ること無く、自力でデータ同期ができる。ただし、少し時間がかかるようだ
大量の新機能をざっとチェックしたところで、実際に使ってみた。まず装着感だが、本体がコンパクトで軽量になってくれたおかげで、つけていることを忘れられるほどのフィット感となった。


◆まったく気にならない装着感、カラータッチディスプレイの使いやすさも良好

従来モデルでもとくに不満を感じることはなかったが、本機を装着すると、もう以前にモデルには戻りたくないと感じる。極めて軽量な上に、バンドに網のように開けられた穴も非常に効果的。この穴のお陰で、汗で貼り付いて不快な思いをすることがないのでキツ目にバンドを締めることができる。すると本体がしっかり腕に密着してさらにフィット感が向上するという良循環が生まれる。

腕に装着したら時計モードから通常モードに切り替え、GPS衛星を補足するのを待つ。といっても、本当に数秒で完了してしまう。従来モデルもかなり速くなっていたが、それさえも大幅に上回る速さだ。ほんの2~3年前までは衛星が補足されるのを準備体操をしながら待っていたものだが、すっかり昔話になってしまった。

走りだしてからもコンパクトボディの恩恵は大きく、腕を振っても全く重さを感じないし、大きなランニングウォッチをつけている時につい感じてしまう、周りのランナーに対する気恥ずかしさも皆無だ。地味な発色のカラーディスプレイは直射日光を浴びるような明るい状況下で気持ちいいほどくっきりと見えて気持ちがいい。

ディスプレイには走行距離、タイム、ペースなど様々なデータを自由にレイアウトして表示できる。1画面に表示できるデータは1~4個で、ページをスクロールさせることで数多くのデータを確認できる。その操作はディスプレイをタップするだけなので走りながらでも簡単だ。

初期設定では、1kmごとにラップが刻まれ、ブザーが鳴ってタイムとペースを表示する。また、走りだして数分するとブザーが鳴り、「グッド」、あるいは「ノーマル」、「バッド」と表示される。これはリカバリーアドバイザーによるメッセージで、前回のトレーニングから十分に体力が回復しているかどうかを教えてくれるものだ。もし「バッド」であればオーバーワークとならないようにそのトレーニングは控えめにした方がいい。


◆トレーニング後は自動的にVO2maxを表示そこからフルマラソンの予測タイムも!!

ランニングが終わると、本機の目玉機能であるVO2maxの数値が自動的に表示される。この数値を取扱説明書にある表に当てはめると、年齢、性別に応じて「低い」、「標準」、「高い」といった評価がわかる。VO2maxは10分以上のランニングをすれば測定できるが、より正確な値を得るには、数回の測定をすることが推奨されている。

それにしても、本来ならVO2maxは非常に大掛かりな検査をしなければ測定できないはず。ランナーがものものしいマスクを付けたままトレッドミル(ベルトコンベアのようなランニングマシン)の上を走っている映像をテレビで見たことがある人は多いと思うが、あれこそがVO2maxの測定風景なのだ。

VO2maxを本機はどのように算出しているのか? 気になって調べてみると、簡易的にVO2maxを測定する方法は従来からいくつかあるようだ。例えば12分間で走れる距離を測定し、その距離を所定の計算式に当てはめるとVO2maxの近似値が算出されるという。

では本機もこういった単純な計算式をプログラミングしているだけなのか? それは違うようだ。なぜなら、上記の方法では12分間全力で走る必要があるが、本機では測定時に走るスペースは特に指定されておらず、時間も10分程度でよいとされていて、12分以下でも構わない。また、計算式では走った距離だけを利用しているが、本機はVO2maxの測定にはハートレートセンサーが必須となっていているので、心拍数やGセンサーによる測定値も加味されているはずだ。

こういったことから、本機は走った距離だけでなくさまざまなデータを総合的に判断してVO2maxを算出していると思われる。実際、ゆっくりとしたペースで走って測定してみたが、その時の走行距離を単純な計算式に当てはめた場合よりもずっと高い数値が出る。これは心拍数などからまだ余裕があると判断し、その分を上方修正しているからだろう。

ただ、それでも本機の表示するVO2maxはあくまで目安だ。それは取り扱い説明書にも明記されている。やはり本来の測定方法に比べれば簡易的なものと考えるべきなのだ。しかし、本機を使用しないでVO2maxを測定するとしたら、もっとも簡便な方法でさえ12分間全力で走り、その距離を正確に測定する必要がある。一般の市民ランナーにはほぼ不可能だ。それを考えると、何も考えずに走るだけで、距離や心拍数を考慮したVO2maxを算出できる本機の機能は、目安程度だとしても非常に有用だろう。


◆レースの予測タイムも算出可能

VO2maxが表示される画面には「予想タイム」という項目がある。これをタップすると、5km、10km、ハーフマラソン、フルマラソンを走った時の予想タイムが表示される。なんだかマユツバな機能に感じるが、VO2maxからタイムを予想する計算式は前述の簡便な測定方法と同じように広く知られており、この機能に関してはその計算式に数値を当てはめただけのものと思われる。つまりGarminが勝手におかしな機能を開発したわけではない。

予想タイムは単なるお遊び機能ではなく、実力アップを目指すランナーには非常に重要なものだ。なぜなら、一般によく知られている予想タイムの計算式をうまく利用すれば、自分の目標とするタイムを実現するために必要なVO2maxの数値を求めることができる。例えばフルマラソンで4時間を切りたいなら、VO2maxは43以上必要だ。もちろんこれは単純な計算に過ぎないが、たとえ根拠の薄い数字だとしても、VO2maxの目標値を設定することで毎日のランニングのモチベーションを向上させることができるだろう。


◆ボタンを押すだけでデータ同期、スマホ連携なら屋外でも同期

ランニングが終わったら、本体にそのデータを保存するとともに、Garminが提供する無料のクラウドサービス「Garmin コネクト」にデータを同期することができる。クラウドに保存されたデータは長期にわたって安全に保存され、いつでも過去のデータを参照することが可能だ。

従来のForeAthleteシリーズのモデルは、データを同期するためにパソコンのUSBに接続したクレードルに本体を接続するか、ワイヤレスでのデータ同期が可能なモデルでもパソコンにあらかじめ受信機をセットしておき、パソコンの近くに本体を置いておく必要があった。しかし、本機はWi-Fi対応となり、Wi-Fi圏内であれば、パソコンに接続すること無くデータ同期ができる。本機が直接Garmin Connectと通信をするので、パソコンの電源が入っていなくてもデータ同期が可能だ。

もちろん、従来通りにクレードル日本機を接続してパソコン経由でデータ同期することも可能だ。この場合はパソコン用のGarminデバイス管理ソフトであるGarminエクスプレスがデータ同期を行う。以前はデバイスごとにデバイスドライバをインストールする必要があったが、それでは複数のデバイスを併用する際にパソコンの負担が重くなり、トラブルの原因にもなってしまう。そこでデバイスを一元的に管理できるこのソフトがリリースされた。データ同期だけでなく、本体のバージョンアップや設定を行うこともできて非常に便利だ。ちなみに、前述のWi-Fi機能は最初にGarminエクスプレスでWi-Fi設定をすることで使用可能となる。

データ同期は、スマートフォン用のアプリ、Garmin Connect モバイルを介して行うこともできる。この場合は、スマートフォンとのワイヤレス接続にはBluetoothが使われるので設定も簡単だ。Garmin Connect モバイルを使えば、屋外にいてもトレーニングが終わったらすぐにデータの同期ができるだけでなく、Garmin Connectの全てのデータをいつでも閲覧可能。さらに、ライブトラック機能も利用することができる。

ライブトラックは、自分が走っている場所をリアルタイムでGarmin Connectに表示する機能で、例えば家族にライブトラックを公開しておけば、家族はランニングしている人の現在地をいつでも確認できるので安心だ。もちろん、複数のランナーが同時にランニングし、誰がどこにいるかをトレーナーが画面上で確認して安全で効率的なトレーニングをすることも可能だ。


◆ランニングダイナミクスやリカバリータイムで効果的なトレーニングを

最後に、ここまでに取り上げることができなかった機能をまとめて紹介しよう。まず、走行中に表示されるデータとして、本機から搭載されたのがランニングダイナミクス機能だ。本機と組み合わせるハートレートセンサーにはGセンサーが内蔵されており、胸部に密着しているため体の動きを正確に測定できる。これによってケイデンス(走行ピッチ)、接地時間、上下動を測定し、この3つのデータからランニングダイナミクスを算出する。

ランニングダイナミクスはVO2maxとは違い、Garminが独自に開発したランニング能力の指標だ。その結果は数字ではなく、レッド、オレンジ、グリーン、ブルー、パープルの5色で表示される。レッドがもっとも経験が少なく遅いランナー、パープルが経験の多い、早いランナーを示す。Garminの調査によれば経験の少ないランナーは接地時間が長く、上下動が激しく、ピッチが遅い傾向にあり、そうしたデータから算出しているという。もちろん、ピッチには本機の初期設定で入力するランナーの身長も考慮されている。

トレーニング終了時にはVO2maxとともにリカバリータイムも表示される。基本的な考え方としては、この時間が経過するまでは、次のトレーニングはしない方がいい。トレーニングすればオーバーワークになるということだ。これも簡易的な機能と考えるべきだが、トレーニングスケジュールを考える上で参考になるだろう。特に、健康のために走っている人はオーバーワークをしてもメリットが何もないので、この機能は有用だろう。

そのほか、仮想のライバルと競争できるバーチャルパートナー機能や、自分で考えたトレーニングメニューを入力できるワークアウトトレーニングやインターバルトレーニングと言った機能も引き続き搭載されている。一方、過去の自分の記録と仮想的に競争できるリアルパートナー機能、スピード/ケイデンスセンサーをワイヤレス接続してサイクルコンピューターとして使用する機能は省略された。レースでの自己記録更新のために本格的なトレーニングに挑もうと考えているランナーであれば、持っていて間違いない最新GPSウォッチだ。

【GARMIN ForeAthlete 620J インプレ後編】記録更新を目指すための機能を突き詰めた本格ランナー向けGPSウォッチ

《山田正昭@レスポンス》

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