沖美穂の鉄壁アシストでジロ・デ・イタリア総合優勝 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

沖美穂の鉄壁アシストでジロ・デ・イタリア総合優勝

バックナンバー 過去レポート
 女性版のジロ・デ・イタリアが7月5日から13日までの9日間イタリアで開催され、沖美穂(34)が所属するメニキーニのエース、ファビアナ・ルペリーニ(34=イタリア)が総合優勝した。イタリアチームとして最も重要なステージレースでアシスト役として活躍した沖が大会
  •  女性版のジロ・デ・イタリアが7月5日から13日までの9日間イタリアで開催され、沖美穂(34)が所属するメニキーニのエース、ファビアナ・ルペリーニ(34=イタリア)が総合優勝した。イタリアチームとして最も重要なステージレースでアシスト役として活躍した沖が大会
 女性版のジロ・デ・イタリアが7月5日から13日までの9日間イタリアで開催され、沖美穂(34)が所属するメニキーニのエース、ファビアナ・ルペリーニ(34=イタリア)が総合優勝した。イタリアチームとして最も重要なステージレースでアシスト役として活躍した沖が大会をレポート。

 エースのファビアナはこの大会で過去に4度総合優勝の経験があったが、ここ数年は優勝できずにいました。なぜなら、彼女が総合優勝している時代はコースがとてもきつかったから、勝つべき選手が勝てる大会だったのです。

 今年のコースは私が過去に経験したジロの中で1番長くきついコース設定になっていました。レース前にチームで試走に行った時にも、一番大きいギアを27Tにしないと登れないような18~20%ほどの勾配が1km続いたりして、私個人にとっては泣きそうなコース設定でした。
 でもエースは試走のときからとても満足そうに登りを楽しんで走ってました。本人に聞いても、「これで私が優勝できなかったら、もうどのレースでも優勝できないし。将来自転車を続けることもない」と言い切ってました。

 彼女はその前に、ジロ・デ・トレンティーノ総合優勝、イタリア選手権優勝とコンディションは絶好調でした。レース前から優勝できる自信があったようで、私に「きちんと練習できているか」、「体調はいいか」と毎日のようにメールが届き、私の心配をしてくれるほどの余裕がありました。

 そしてジロ初日。チームミーティングがあり、監督から、「チームは全員がファビアナのアシスト。数日続く平坦のレースではスプリントはやらない。とにかく彼女を集団ゴールさせる」という指示。そして私似は、「ファビアナの自転車に問題があれば、すぐに自転車ごと交換するように」という指示を与えられ、私はとにかく彼女の近くにいるように言われました。きっと彼女より私の方が緊張していたかもしれません。

 そしてレースが始まりました。とにかく彼女の近くを走りました。山岳に入り、ファビアナがアタックすれば、すぐに集団が小さくなり、私は後方の集団で翌日に備えてグループでゴールする日が続きました。最後の3日間はレース前半、チーム全員で集団をコントロールし、最終日は「もう明日は完全に走れないだろう」というくらいに全力を出し切りました。

 特に最終日は約120kmで平均時速43kmと、女子のレースにしてはハイペースで苦しかったですが、残り3kmで「確実にに優勝できる」ことが無線から伝わったときは、ファビアナと一緒に集団の後ろに下がり、彼女が私たちに「ありがとう!」と言いながら、みんなで喜び合ってゴールしました。

 今までたくさんのステージレースを経験しましたが、1番充実感があり、うれしかったです。その後、表彰式で盛り上がり、祝勝会ではファビアナのファンクラブ会長をはじめスポンサーの方々も集まり、とても満足できました。

 その祝勝会の前に彼女は「オリンピックに行けるかどうか」をイタリアの選考委員に電話して聞きました。ちょうど私も近くにいて、彼女の隣でその話をスピーカーを通して聞きましたが、何とも言えない、どうしようもない言い訳で「彼女はオリンピックには行けない」という告知を一緒に聞きました。

 その理由の1つが年齢…。私と同じ34歳。

この時代にまだそんなことにこだわっているのか!?と私は言いたかったです。
フランス代表のジャニー・ロンゴは49歳で代表に選ばれているのに、隣のイタリアでは30代はどんなにレースで勝ちまくっても選ばれないという悲しい現実を目の当たりしました。それでも彼女は最後に「オリンピックよりジロで総合優勝することの方が重要だったから…」という言葉を聞いてこの話は終わりました。

 北京オリンピックまで1カ月を切りました。また今週の土曜日にはレース。そして来週はフランスのステージレースと続きます。

 ここから北京に向けた最終調整が始まります。日本にはオリンピックレースの直前に戻ります。
《編集部》

編集部おすすめの記事

page top