現地時間14日に行われたラ・リーガ第17節レアル・ソシエダとアスレテック・ビルバオの一戦。伝統のバスクダービーで追加点を挙げ3－1の勝利に貢献し、マン・オブ・ザ・マッチに輝いたのが日本代表MF久保建英である。
◆【実際の映像】久保建英、技あり股抜きから今季3ゴール目 シルバとの“ホットライン”開通
■ラ・リーガでの自己最高ゲーム
久保は今季定位置となっている[4-3-1-2]の2トップで先発すると、足元でボールを受けた際には積極的にドリブルで仕掛け、前線のノルウェー代表FWアレクサンダー・セルロートや元スペイン代表MFダビド・シルバらとは阿吽の呼吸でボールを交換するなど、チームの主力としての存在感をいかんなく発揮する。
今季のレアル・ソシエダにおいて、武器となっているのが久保とシルバによるレフティー2人の共存である。背格好も似た2人は足元の技術に長け、試合の流れを読む戦術眼にも優れるなど共通点も多い。前半37分に生まれたシルバのスルーパスから生まれた久保のゴールは、出し手と受け手が完ぺきに理解し合って生まれたゴールだった。
また、後半15分にはゴール前で1対1となったところをビルバオのDFジェライ・アルバレスがたまらずファウルし、退場に追いやった。さらにチームの大黒柱で、怪我による長期離脱から明けたばかりのミケル・オヤルサバルの復帰弾を演出するなど、試合を通じて存在感を発揮した久保は、ラ・リーガにおける自身最高のパフォーマンスとも呼べる活躍ぶりで、バスクダービーの主役になった。
■成長を見せる守備面での貢献
今季の久保の飛躍を語るうえで見逃せないのが守備面の向上である。これまでたびたび課題として指摘されてきたのがフィジカル面や守備での貢献だ。レンタルでプレーしたマジョルカ、ヘタフェといった、相手に主導権を握られ守勢に回る時間が多いチームの中では、そのウィークポイントを垣間見せるケースも少なくなかった。
しかし、これまでのチームで積み重ねてきた守備やフィジカル勝負の積み重ねが今季のレアル・ソシエダで実を結んでいる。身体つきが一段と逞しくなっただけでなく、前線からのチェイシングや局面での1対1など、“攻撃だけの選手”という見られ方をすることもあった久保が守備面でも確かな進化の跡を見せている。
レアル・ソシエダを率いるイマノル・アルグアシル監督も久保に対して、「強調したいのは守備面での貢献で、私たちのフットボールを完ぺきに理解している」と、守備戦術の理解に対して高い評価を与えている。そこに、ボールポゼッションを得意とするレアル・ソシエダの特徴も久保のプレーに相乗効果をもたらし、ラ・リーガ挑戦4年目にして自分の居場所を見つけたといえる。
■マジョルカ時代を超えるか
レアル・ソシエダの中心選手としての地位を確立しつつある久保だが、数字の面でも自己最高を射程圏内に捉える。マジョルカ時代の2019-20シーズンに記録した4得点5アシストがこれまでのキャリアハイだが、ビルバオ戦でのゴールで、今季は3得点2アシストとなった。このまま順調に数字を積み重ねられれば、スペインにおける自己最高のシーズンは十分見えてくる。
守備面での課題に改善が見られる久保にとって、攻撃面では得点力の向上がレアル・ソシエダだけでなく日本代表でもレギュラーに定着し続ける上で至上命令といえる。チームでは今季同じく飛躍のシーズンを送っている7ゴールのセルロートに加えて、ラ・リーガで4年連続2桁ゴールの実績を持つオヤルサバルがコンディションを上げてくれば、前線でのハイレベルな競争が続いていくだろう。
久保はバスクダービーの主役となり、ファンの心を鷲づかみにした。自身の課題を克服しながら充実のシーズンを送る21歳は、レアル・ソシエダという自身のポテンシャルを最大限生かせる環境をついに手に入れた。ここからさらなる階段を上り、選手として次のステージへと進むことができるか。スペインの地で苦労も重ねてきた“日本の至宝”が花を咲かせようとしている。
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文●井本佳孝（SPREAD編集部）
