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B1リーグ2022-23シーズン第12節は17日、18日にかけ、愛知県刈谷市にあるウィングアリーナ刈谷で中地区6位シーホース三河対西地区首位の琉球ゴールデンキングス戦が行われた。
◆昨季ファイナルの悔しさを返す 並里成が群馬クレインサンダーズで目指す頂点
■三河に連勝を止められる
琉球は三河戦を前に6連勝と波に乗っていた。GAME1、スリーポイントシュートを効果的に沈めるなど序盤から得点を重ね、76-65で琉球が勝利し連勝を伸ばした。しかし、翌GAME2では、96-81で三河が勝利。連勝を止められた形となった。
今シーズンもキャプテンとして琉球を率いるのは昨年11月、試合中に負傷し左膝前十字靭帯断裂、左外側半月板損傷及び左大腿骨外顆骨挫傷という大怪我を負った田代直希だ。
手術、リハビリを経て今年9月に行われたプレシーズン、仙台89ERS戦で308日ぶりにコートへ戻ってきた際には、沖縄アリーナに詰めかけた多くのファンが、予想より早い復帰を大いに喜んだ。
10月1日に沖縄アリーナで行われた開幕節・対宇都宮ブレックス戦から2カ月以上が経ちシーズンの3分の1が過ぎた。大怪我からの復帰を経てここまでの自身のプレーや変化についてこの日、試合後に話を聞くことができた。
■「思い描くプレーができない」
第一声は「ディフェンスは厳しいかな」だった。
状態は徐々に良くなりつつも「前半、体が冷えている時間帯に思い描くプレーができない。一歩前へ出したい体、頭の中に浮かぶ動きに体がついてこない。後半、体が温まってくれば思うように動いてくれる。マネジメントが今後必要になってくるかな。体と頭のギャップは時間をかけて埋めていくもの」とジレンマを抱えながらのプレー、自分の体やコンディションと丁寧に向き合っていかなければならない覚悟は決めている。
もちろん、一瞬の不安や怖さがある。ただ、今シーズンは「自分のできる範囲で努力することを続けている。少しずつステップアップしていければいい」と決して焦ることはない。感覚を取り戻すと同時に、いずれ自信も取り戻せるだろう。
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ディフェンスについてはまだ「厳しい」と語る田代 (C) 琉球ゴールデンキングス
オフェンス面では「チームバスケットなので、僕の体の調子が万全でなくても他のメンバーが回してくれる。だからこそ、チームとしてのいいバスケットを追求していきたい。ノーマークのシュートを打つというプロセスを踏み続けることが大切」と認識している。
一つひとつ確認しながら、プレーや感覚を取り戻していく作業は根気がいる。「思い描くバスケットができていない。コンディションもあと一歩。以前なら、パッと足が出たところが出ずにやられてしまう不甲斐なさ。消化不良が常にある」と、理想と現実のギャップと戦う日々だ。それでも「昨シーズン、プレーができなかった経験がある。プレーができるということにすごく感謝しているし、楽しもうとしている」と、プレーすることを「楽しい!」と感じるまでにはまだ少し時間が必要なようだ。
■「チームを客観的に俯瞰で見られるようになった」
そんな田代について、桶谷大ヘッドコーチは「今シーズンだけで、全盛期に戻るのは難しいと思うが、昨シーズンプレーしていなかった分、チームをより客観的に俯瞰から見て『チームは今こうですよね』と言えるようになった。コートで気が付いたことを体現したり、みんながそれを理解したりできるようになればチームのためになる」と、復帰後の変化とその期待を示した。
リハビリには東京まで足を運んでいた。そのため「チームから離れ、画面で試合を見ることが多かった。もっとこうしたらチームのバスケットボールは良くなるのに」と第三者目線でチームを見る機会にもなった。この先、その気付きや意見をコートで表現することが理想。さらに、チーム内で共有する際には、キャプテンらしい気遣いを見せる。
「選手個人個人生まれ育った環境や価値観が大きく異なる仲間に頭ごなしに伝えることも失礼に当たる。噛み砕きながら遠回しに伝えることを心掛けている。(自分の意見は)少しずつ浸透していると思うし、みんなも僕の話に耳を傾けてくれている。いい傾向かな」と新たな感触が得られるようになった。キャプテンとして、仲間に寄り添いながら、今できることをチームに還元している。
三河戦では1勝1敗。GAME2ではダバンテ・ガードナーが33得点、アンソニー・ローレンス IIが15得点とオフェンス力を爆発させた三河に敗れ、連勝は7でストップしてしまった。
この先、自身が出場している「セカンドユニットの時間帯を、いかに有意義な時間帯にしていくか。セカンドユニットのプレータイムをもっと伸ばすことができればチームも楽になり効率も上がる。疲労も分散できる。チームにとっても自分にとっても課題」と語った。俯瞰する力はついたと自分自身でも感じている。長いシーズン、好不調の波は多かれ少なかれどんなチームにも訪れる。「うまくいかない時期が来た時に、個性が強いチームなので個人技で打開してしまったりするが、それでは効率や生産性が一気に下がってしまう。辛い時や上手くいかない時こそ、ボールシェアをして人を動かすことを心掛けたい」と先を見据えた。
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今季はファイナルを戦う覚悟だ (C) 琉球ゴールデンキングス
昨シーズン、琉球はファイナルに出場。しかし残念ながら、宇都宮ブレックスに敗れ優勝を逃した。
田代はベンチからファイナルを戦う仲間に声をかけ続けていた。「(琉球は)メンバーがそろっていた。しかし、(ファイナルを前に)新型コロナウィルスの感染者がチーム内で出てしまった。運だな。(その舞台に)立ちたいですよね」とこぼした姿が印象的だった。
まだまだ納得いくプレーができるようになるまでには時間がかかるだろう。決して優勝まで近道するつもりはない。もしかしたら、優勝まで誰よりも長い道を進まねばならないかもしれない。「できるプロセスは全て踏んでいきたい。その結果、優勝できれば満足できる。今は苦しいけれど、もがこう思う」と冷静に語る田代からは、内に秘めた覚悟が伝わってくる気がした。
昨シーズンの悔しさを晴らし悲願の優勝を遂げることができるのか、ぜひ注目したい。
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■著者プロフィール
木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長
テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。