【山口和幸のツール・ド・フランス日記】スポーツイベントにおけるテロ対策 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸のツール・ド・フランス日記】スポーツイベントにおけるテロ対策

スポーツ 短信
スタート地点に近づく関係者は入場ゲートで荷物チェックされる
  • スタート地点に近づく関係者は入場ゲートで荷物チェックされる
  • 2016年のツール・ド・フランス期間中にニースでテロが発生し、翌日はゴール後の表彰式で黙とうが行われた
  • 2017ツール・ド・フランス開幕地、ドイツのデュッセルドルフでは2重の荷物チェックがあった
  • ツール・ド・フランスの関係者にはIDカードが、関係車両にはステッカーが配給される
  • ツール・ド・フランスには約50人の憲兵隊が帯同するほか、1万人以上が沿道で立哨する
  • IDカードは入場できる場所が指示され、そのマークがないと絶対に入場できない
  • 小さなバッグもチェックされ、調査済みのリボンが付けられる
  • みんなが楽しみにしているスポーツイベントだけに楽しい想い出だけを持ち帰りたい
憎むべき卑劣なテロが多発するフランスで、世界中から大観衆が詰まるスポーツイベントはどんな対策を施して万一の事態に備えているのだろうか?ツール・ド・フランスの現場でも連日のように厳重な警戒が行われている。

テロとは政治的な主張を衝撃的に広めるために無差別な殺傷を行って人々を恐怖に落とし込むこと。その語源は1989年のフランス革命を主導した政党ジャコバン派が行った恐怖政治(テルール)だ。その象徴は粛正の最終手段ギロチン。一般の人たちはどれだけ「恐怖」を感じたことだろう。

2016年のツール・ド・フランス期間中、ニースでテロが発生。翌日はゴール後の表彰式で黙とうが行われた

2015年11月にパリで発生した同時多発テロを受けて、2016年からツール・ド・フランスの警備態勢は厳重になった。さらに2016年のツール・ド・フランス期間中にニースの花火大会に暴走カミオンが群衆に突入するテロが発生。ツール・ド・フランス最終日のパリ・シャンゼリゼは1周6kmあるサーキットコースを全封鎖して、そこにアクセスする人たちの荷物検査を実施した。

基本的には鉄柵で仕切って規制エリアを設定し、そこに入場する人をチェックする。IDカードを厳密にチェックし、顔見知りでも持ち合わせていなかったら絶対に入場させない。2017年の開幕日は2重に荷物検査があった。それ以降も毎日、規制エリアに入るときは荷物チェックを行う。

2017ツール・ド・フランス開幕地、ドイツのデュッセルドルフでは2重の荷物チェックがあった

スタジアムで行われるスポーツなどとは違って、一般道を走るツール・ド・フランスは明らかに無防備だ。かつてはバスク地方の独立を目指す人たちの襲撃を受けたり、原発廃止を訴える市民団体が道路を封鎖してレースが一時マヒしたりした。ただし文化として定着し、宗教を超えて多くの人たちが楽しみにしている祭典をテロリストとしても攻撃対象にすれば正義は得られない。かつてはそんな人間としての最後の良心も存在したはずなのだが。

とにかく最善の警備態勢は続けてくれたほうがいい。すべての関係者も自分たちを守ってくれることになるのだから、毎日文句を言わずにバッグのファスナーを率先して開けている。
《山口和幸》

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