リオデジャネイロに派遣されるスポーツ気象チームのリーダーを務める浅田佳津雄さんに話を聞いた。ウェザーニューズが選手のパフォーマンスを意識した気象情報の提供を始めたきっかけは、日本中にラグビーブームを巻き起こした2015年のラグビーワールドカップだ。浅田さんは振り返る。
「いろんなご縁がありラグビー代表チームのスタッフと会う機会があった。そのなかで、去年までヘッドコーチを務めていたエディー・ジョーンズさんが天気をすごく気にしていて、スタッフのひとりが毎日朝5時に気象情報を集めてエディーさんたちにレポートしていて大変と聞きました。それならうち(ウェザーニューズ)がやりますよ、というところから始まったんです」
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ウェザーニューズの浅田佳津雄さん
ラグビー日本代表チームとウェザーニューズをつなぐ窓口となったスタッフは、15人制のラグビーワールドカップ終了後は7人制ラグビーを担当することになった。7人制ラグビーはリオデジャネイロ五輪で競技種目となっている。そのスタッフとのつながりで7人制ラグビーもウェザーニューズがサポートすることに決まり、そこからさらに広がりを見せていく。他の競技関係者も紹介してもらえることになり、セーリングやトライアスロンも受け持つことになった。
ウェザーニューズは気象予報を提供するチームには、それぞれの競技にあった要素を入れたシートを送る。一見、普通の天気予報と変わらないようにも思えるが、そこには各競技が必要とするさまざまな要素が盛り込まれている。
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2016世界トライアスロンシリーズ第6戦ストックホルム大会での天気予報 画像提供:ウェザーニューズ
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2016世界トライアスロンシリーズ第6戦ストックホルム大会での天気予報 画像提供:ウェザーニューズ
「トライアスロンですと、種目(スイム→バイク→ラン)が変わるタイミングの天気、気温、光(日差し)があるかないか、風、そういったものを時系列で出します。それとレース時間前後のピンポイント予報、何も色が付いていないところは晴れなのですが、それだけでは表現できないものを言葉で解説、あとはコースに対してどちらから風が吹く傾向にあるか、などです」
7人制ラグビーだったら、「1日3試合ぐらいあるので、その3試合の時間ごとの天気。それぞれのゲームの時間帯の風向きなど」を伝えたという。天気予報が役に立つのは試合だけではない。大会前の合宿先でも有効だ。
「合宿地のその日の天気と先の天気。明日は雨が降るとわかっていれば、今日中に明日やりたい予定のメニューをやっておくか、もしくは明後日にずらすか。そういうスケジューリングのために使っていただいています」
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ウェザーニューズがリオデジャネイロに持ち込む観測機
天気がわかることで「準備ができること」が重要と浅田さん。
「我々一般人でもどこか行き先で雨が降るとわかっていたら折りたたみ傘を持って行く。こういう準備です。選手たちも同じで、雨が降るなら雨の時にやること、やらないことがある。それがわかっている、わかっていないのとで、行き当たりばったりでゲームに臨むのとはぜんぜん違ってくる。そういう心づもりというか、準備ができるのが一番大きい」
代表クラスになると、天候によって戦略や戦術、準備が変わってくると続ける。
「トライアスロンなら風が強いとホイールを変えるとか、雨が降って路面が濡れるならタイヤの空気圧をゆるめにしておくなど微調整をする。ラグビーもスパイクのポイント(の長さ)を変えたりする。事前に知っておくのと知らないのとではぜんぜん違うと思います」
ウェザーニューズは浅田さんら5名のスタッフを日本からリオデジャネイロに派遣し、現地の営業所スタッフ1名も含めた6名で活動する。ウェザーニューズにとっては選手を支えること以外にも、4年後の東京五輪を見据えた経験を積む場にもなる。