なぜアジア各国では、それほどまでにオートバイが普及しているのでしょうか。もちろん所得の低さゆえ、クルマを購入できないという側面はあるでしょう。ただし台湾や韓国などはクルマも多く、それを正解とすることはできません。むしろ市民の足だから…というのが正解に近いように思われます。
この「市民の足」というのは、まさに歩く代わりにオートバイを使っていることも含まれます。そのせいか各国で歩いている人の姿を見かけることは少なく、歩道も設けられていないか、あってもクルマやオートバイに占拠されていたり、やたらと段差があって歩きにくかったりという代物となっています。

クルマの通行するレーンとは構造分離されている
それに加え、日本の自転車に代わる存在となっている点も見逃せません。ヘルメットをかぶらずオートバイに乗ることも、赤信号で右折(日本でいう左折)することも、短距離とはいえ車道を逆走することも、あるいは市場など人がごった返している場所にオートバイで乗り込んでくることも、すべては日本の自転車乗りと変わらぬ振る舞いといえましょう。乗っているのは老若男女を問わず。これも自転車と同様です。
その一方でいくら自転車代わりといっても免許の取得は必要ですし、アクセルを吹かせばそれなりのスピードが出ますから、公道ではクルマと同じく車両として認知されていますし、両端のレーンは機車(オートバイのこと)優先あるいは専用とされていることが多く、クルマの通行するレーンと構造分離されている例もあります。
で、自転車乗りはこの両端のレーンをオートバイとともに走行するわけですが、スピードはクルマ並みに速くても大きさは自転車と変わりませんし、お互い生身の体で乗っているということで親近感も湧きます。
そのためクルマ(特に大型車両)に追い抜かれるときのような恐怖を感じることはありません。むしろオートバイがあるからこそ前述したレーンが設けられ、自転車も安心して車道を走ることができる…こうした共存共栄の関係になっているのが台湾の道路事情です。

市場内の狭い道にも、オートバイに乗ったまま入ってくる
ちなみに自転車で巡った台南は旧都ということもあり、今でも町のいたるところに細い路地が広がっています。現地の人ならオートバイでという道を自転車で進んでいくと、そこには現地の人々の変わらぬ日常がありました。
日本を訪れる外国人も、ひととおり観光名所を訪ねたあとは日本の日常生活に接してみたいと思うそうですが、それは日本人とて同じこと。その欲求を満たすうえで、まさに自転車は手頃な交通手段といえます。