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
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
F1マシンの製作にも用いられる技術、HIPACTテクノロジーを採用し、カーボンの利点を最大限に引き出すことを哲学とするブルー・コンペティション・サイクルズ。そのトップモデル、RC8は400km試乗後の安井に何を残したか?新興ブランド「BLUE」の真価と存在意義を問う第28回。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
アメリカのアトランタに本拠を構えるブルー・コンペティション・サイクルズ。レースという実戦の場にバイクを積極的に投入することによって、そのフィードバックを製品作りに大きく生かすブランドだ。事実、ブルーのバイクはアメリカ国内外を問わず数々のタイトルを獲得し、さらには世界選手権、オリンピックといったワールドクラスのレースにも出場、UCIワールドカップの表彰台も経験している。社名に 「competition cycles (=競技用自転車)」 との表記が入るのは、決して伊達ではないのだ。
そんなブルーのカーボンフレームは独自の製法で作られている。カーボンチューブの製造過程において、カーボンの中に含まれる気泡の割合、すなわち空孔率を低くすることは極めて重要だ。一般的なカーボンの成形には、金型に入ったカーボン素材の中にエアバッグ (空気で膨らませた風船の芯材) を入れ、それを高圧で膨らませることで圧力をかけ、カーボン繊維間の空孔を減らす工法をとる。しかしブルーのカーボンフレームに採用されているカーボンチューブは、F1マシン製作にも用いられる技術、ハイパクト製法 (HIPACT/High Pressure Solid Compaction) を採用する。これは、従来のエアバッグの代わりにモールド成形された固形の芯材を使うことで、カーボンファイバーをより高圧で密着させ、空孔率の低下を可能にするというテクノロジーだ。自転車カーボンフレームを作るうえで、通常の製法に比べてどれほどのメリットがあるのかは専門外の僕には分からないが、これによってカーボン繊維間の密着度をアップさせ、高い剛性と軽さの両立を実現しているのだという。
ブルーのトップモデルが今回登場するRC8。ハイモジュラスカーボンパイプをカーボンラグで繋ぐ手法で製作され、もちろんハイパクト製法を採用。外ラグ式のフレームで、トップ・ダウンチューブはリブのような形状を残しつつ横方向に扁平されている。シートステーのカーボンの造形自由度を活かしてフィン加工されており、目を引く特徴的な造形となっている (機能的に意味があるのかは疑問だが)。エンドはしっかりとした造りながら細かく切削され、丁寧なディティールは好印象だ。トップチューブ505mmというXSサイズからのラインナップも小柄なライダーや女性には嬉しいポイントだろう。
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例えばフロリダのビーチ、抜けるような青空。金髪碧眼の美少年が桟橋に立ち、青い海に向かって友達のイルカを呼んでいる。そのとき彼がロードバイクに跨っているのだとすれば、そしてそのバイクがBLUEであれば、映画の1シーンのような風景はさらに完璧なものになる。
場所は変わって欧州のどこか。歴史が深く根を張り、重厚さに被われた街角。時は夕刻。長い黒髪をたなびかせながら長身の女の子が自転車に乗ってスルリと駆けて行き、石畳に彼女の細長い影が落ちている。そのとき彼女が乗っているバイク、それもBLUEがいい。
そんな 「自転車のある美しい風景」 へ登場するに相応しい雰囲気を持つBLUE。その見た目から受けるのは、決してバリバリのレーシングモデルという印象ではない。フレームのカラーリングは細く柔らかなラインで、ホワイト、シルバー、そしてブルーが組み合わされる。その青の色味もパキパキに鮮やかなブライトブルーではなく、憂いを含んだスカイブルーという感じ。サワヤカだサワヤカだと皆は言うが、若手男性アイドルの造られた笑顔のような軽薄な爽やかさではなく、スッキリとしていながらもどこか濃厚、それでいて柔和で優しげだ。
しかしロードは走ってナンボ。走りこそがロードバイクの本質である。単なる表面の意匠にすぎないこのカラーリングは一旦忘れて、冷静な判断を試みることにする。
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まずはMAVICキシリウムSLでテストした。踏み込み始めのクランク位置3時あたりではしなやかなフィーリングで、そのルックス同様に優しさを感じさせるものだ。初期加速そのものはとりたてて歯切れのいいものではない。しかし4〜6時のあたりでグワッという力強いトルクに蹴り出されて、頼もしい種類の速度変化フィールに驚かされる。剛性はしっかりと出ており、トルクをかけて踏み込むペダリングにフレームが負けない。そんなフレームの絶妙な剛性バランスのせいか、中速域からはターボがかかったように伸びるのが面白い。
意外だったのは、独特のしなやかさを活かしたダンシングが最高に気持ちいいことだ。一瞬、たゆんとたわんだのち、ゴム鞠がぽよんとバウンドするかのように反発を始め、そこからシュパッという気持ちの良い加速へと繋がっていく。思わずダンシングを多用して走ってしまう。ヒルクライムでもその快感は持続する。シッティングで踏み込んでも、ソフトなカーボンフレームにありがちなもどかしさは感じられない。ビッグギアでガツンと踏むとさすがにたわみを見せるが、軽めのギアで回せばヒュンヒュンヒュンと軽快な加速を繰り返しながら気持ちよく進んでくれる。
フロントフォーク、バックフォーク共に快適性はフルカーボンフレームとしては一般的なもの。吸収性は悪くはないが、減衰は多少苦手か。衝撃がストンと一瞬で収まる減衰性は持っておらず、振動が尾を引いてしまう場面があった。縦に硬いホイールで荒れた路面のダウンヒルを長時間行ったので余計にそう感じられたのかもしれない。
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