【THE REAL】新司令塔・清武弘嗣を取り巻く光と影…ハリルジャパンとセビージャで見せるコントラスト | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】新司令塔・清武弘嗣を取り巻く光と影…ハリルジャパンとセビージャで見せるコントラスト

オピニオン コラム

サッカー日本代表の清武弘嗣 参考画像(2016年11月15日)
  • サッカー日本代表の清武弘嗣 参考画像(2016年11月15日)
  • サッカー日本代表の清武弘嗣 参考画像(2016年11月15日)
  • 清武弘嗣 参考画像(2016年8月9日)
  • セビージャのホルヘ・サンパオリ監督 参考画像(2016年9月27日)
  • サッカー日本代表の清武弘嗣 参考画像(2016年11月15日)
  • サッカー日本代表の清武弘嗣 参考画像(2016年6月7日)
  • サッカー日本代表の清武弘嗣 参考画像(2016年6月7日)
  • 清武弘嗣 参考画像(2016年8月20日)
トップ下として2試合ともに先発し、合計で135分間プレー。PKを獲得した場合にキッカーを務める大役も担い、実際にPKによるゴールをひとつずつ決めて、味方のゴールもふたつアシストした。

オマーン代表との国際親善試合、そしてサウジアラビア代表とのワールドカップ・アジア最終予選に連勝したハリルジャパンの11月シリーズ。そのなかで、清武弘嗣は突出した存在感を放ち続けた。

清武弘嗣 参考画像
(c) Getty Images

特にサウジアラビア戦。必勝を義務づけられた大一番で、背番号13は卓越したパスセンス、ゴールに向かう貪欲な姿勢、球際の激しい攻防を厭わない闘争心を発揮。日本代表の攻撃陣を力強くけん引した。

それでも、後半19分には香川真司(ボルシア・ドルトムント)との交代でベンチに下げられた。後半開始早々に相手の悪質なファウルで痛めた左足首は、清武本人によれば「問題はない」という。

■セビージャで遠ざかる実戦

2‐1で逃げ切った勝利の余韻が残る試合後の公式会見。埼玉スタジアム内のインタビュールームで、日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督は清武の交代に関してこう言及している。

「クラブで試合に出ていないので、60分以上はもたない」

ふたつのクラブで4シーズンにわたってプレーしてきたドイツから今夏、戦いの舞台をスペインへ移した。UEFAヨーロッパリーグで三連覇を達成した強豪・セビージャFCで、背番号14を託された。

公式戦デビューは8月9日。UEFAチャンピオンズリーグを制したレアル・マドリードとのスーパーカップで先発出場。チームは2‐3で敗れたものの、清武は延長戦を含めた120分間を戦い抜いた。

ホームのエスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスフアンにエスパニョールを迎えた、同20日のリーガ・エスパニョーラ開幕戦でも先発フル出場。1ゴール1アシストの活躍で、チームを勝利に導いた。

8月9日、セビージャで公式戦デビューした清武弘嗣(中央)
(c) Getty Images

続くビジャレアルとの第2節でも先発して後半16分までプレー。しかし、9月17日のエイバルとの第4節で先発フル出場したのを最後に、順風満帆だった軌跡は突然の一時停止を余儀なくされる。

以来、リーグ戦では一度もピッチに立っていない。11月2日のUEFAチャンピオンズリーグのディナモ・ザグレブ戦で後半30分から投入されたのが、実に46日ぶりとなるセビージャでの実戦だった。

セビージャの一員になったときから、最高峰の舞台であるUEFAチャンピオンズリーグへ「早くあのピッチへ立ってみたい」と思いを馳せていた。しかし、グループリーグの3試合を終えても出番は訪れない。

「本当に久しぶりに試合に出たので、試合が終わった後に『あっ、チャンピオンズリーグだったんだ』くらいの感じしかしませんでしたね」

チャンピオンズリーグに抱いていた憧憬の思いよりも、目の前の現実のことばかりに考えを巡らせていたのだろう。4日後に行われた強豪バルセロナとの大一番も、再びベンチで90分間を終えた。

■不足しているコミュニケーション

不完全燃焼の思いを抱きながら、茨城県内で合宿中だったハリルジャパンに合流したのが11月8日。メディアからチャンピオンズリーグデビューの感想を聞かれた清武は、ちょっぴりおどけて周囲を笑わせた。

なぜこんなにも出場機会を得られなくなってしまったのか。ひとつは清武の獲得をクラブ側に希望したウナイ・エメリ前監督(現パリ・サンジェルマン監督)が、清武がハノーファーから完全移籍で加入した直後に勇退したことがあげられる。

後任にはチリ代表を率いてワールドカップ・ブラジル大会で旋風を巻き起こし、2015年のコパ・アメリカではチリを初めて南米王者に導いたアルゼンチン出身のホルヘ・サンパオリ氏が就任した。

南米屈指の戦術家として知られる56歳の知将は、セビージャでも中盤のハイプレスと、そこから繰り出されるショートカウンターを徹底。スピードのあるツートップに変えてから、一気に調子をあげてきた。

セビージャのホルヘ・サンパオリ監督 参考画像
(c) Getty Images

清武にとって不運だったのは、9月以降の国際Aマッチデーウイークで日本代表に招集されるたびに、サンパオリ監督が課す密度の濃い練習のもとでチームが戦い方を固めていったことだろう。

加えて、夏の移籍マーケットが閉まる直前に、セビージャは元フランス代表の司令塔で、しばしば「天才」と称されるサミル・ナスリを、マンチェスター・シティから期限付き移籍で獲得する。

清武がスペイン語を話せず、通訳も置いていないため、サンパオリ監督や選手たちとコミュニケーションを密に図れないことも響いている。ドイツでは役に立った英語も、スペインでは通じないことが多い。

こうした状況も手伝って、時間の経過とともにサンパオリ監督の選択肢のなかに、清武の名前は含まれなくなっていく。それでも、懸念される試合勘の欠如に対して、清武はこんな言葉を残してもいた。

「試合勘というものは衰えることはないと思っているし、実際、(ディナモ・ザグレブ戦でも)そんなに気にならなかった。ただ、正直、(アディショナルタイムも含めた)20分間で疲れた部分もあった。体力、気持ち、体のコンディションやフィジカル面は落とさないように心がけてきたけど、試合に出られていない状況なのでどうなのかな、というのはありますね」

だからこそ、ハリルジャパンの一員として臨む今回の11月シリーズには、並々ならぬ思いをかけていた。たとえばオマーン戦。キックオフへ向けてアップをしながら、こんな思いが込みあげてきたという。

「(本田)圭佑君(ACミラン)と(吉田)麻也君(サウサンプトン)は先発メンバーでしたけど、あとはみんな若いな、と。自分もしっかりしなきゃいけない年代だし、いい突き上げができればいいとも」

清武弘嗣 参考画像
(c) Getty Images

最終ラインには左から酒井高徳(ハンブルガーSV)、丸山祐市(FC東京)、吉田をはさんで酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)と、1989年1月1日以降に生まれたロンドン五輪世代が名前を連ねた。

ボランチの山口蛍(セレッソ大坂)と左ウイングの齋藤学(横浜F・マリノス)も然り。そして最前線には1年5月ぶりに代表復帰を果たした、同じくロンドン五輪世代の大迫勇也(1.FCケルン)がいる。

「サコ(大迫)は前でどっしりと構えてくれる。ずっと代表で一緒にやってきて、オリンピック本大会には一緒に行けなかったけど、サコ以上にボールを収められる選手はいないと僕は思っているので。実際にサコのところでタメができたし、ケルンでずっと試合に出ていることで磨かれた得点感覚を出してもくれた。そういう勢いが、いまのサコにはありますよね」

大迫を使って攻撃を組み立て、大迫を中心に点を取る。青写真通りの展開で大迫の2ゴールを演出し、自らもPKを決めた。迎えたサウジアラビア戦。信頼を得たハリルホジッチ監督から、再び先発を託された。

■「今日は俺らが頑張らないとダメだね」

興奮と緊張が胸中で交錯するキックオフ直前。同じくオマーン戦に続いてワントップで起用された大迫と交わした、何気ない会話のなかに不退転の決意が込められていた。大迫がその中身を明かす。

「今日は俺らが頑張らないとダメだね、という話をふたりでしていたので。ここでやらないとダメやろって。ダメなら俺らは終わりだから、みたいな感じで」

先発に指名されたことは確かに嬉しい。武者震いすら覚えるが、同時に責任も生まれる。日本代表を勝利に導けず、ワールドカップ・ロシア大会へ通じる道に深い霧が立ち込めてしまったとしたら――。

そのときは代表失格の烙印を甘んじて受け入れる。いわば背水の陣を敷いて誓った打倒・サウジアラビア。自らにプレッシャーをかける姿勢は、この数年間、常に本田たちが貫いてきたものだった。

清武弘嗣 参考画像
(c) Getty Images

日本代表における清武のキャリアは長い。A代表デビューは2011年8月10日。アルベルト・ザッケローニ元監督のもとで臨んだ韓国代表戦で途中出場し、ふたつのアシストをマークした。

その後もザックジャパンの常連にはなかったが、絶対的なポジションを手にすることはできない。初めてのワールドカップとなったブラジル大会も、コロンビア代表との最終戦で途中出場しただけに終わった。

「本当にチームが強くなるためには、普段は出ていない選手が出たときにしっかりやることが大事だし、それこそが底上げがうまくいっている証拠だと思う。いままではなかなか結果を出せなくて、代表での5年間はそういうもどかしい気持ちというものを抱えながらずっとやってきたので」

忸怩たる思いを燃えるようなパッションに変えて、サウジアラビア戦のピッチで体現した。難敵を撃破し、日本代表をグループBの2位へ押し上げた原動力は大迫であり、左ウイングでフル出場したロンドン五輪世代の原口元気(ヘルタ・ベルリン)であり、そして清武だった。

■大きな意味をもつ1点

試合の流れを大きく左右する先制点。前半終了間際に、それをもぎ取ったのは日本だった。自ら仕掛けて放ったシュートが相手の左腕に当たり、獲得したPKを清武が冷静かつ豪快にゴール左隅に蹴り込んだ。

今回の2試合では、試合中に獲得したPKを蹴るのは本田であり、背番号4がピッチにいないときは清武と決まっていた。それだけ寄せられる信頼は厚い。サウジアラビア戦で先発から外れた本田からは、試合前に「ある言葉」をかけられた。

「実際にPKを決めることによって、どんどん自信になってくるからと。だからこそ、この1点は自分にとって、すごく大きな意味をもつと思います」

本田も香川も、そしてFW岡崎慎司(レスター・シティ)もいない前半のピッチを差配し、日本代表に大きな流れをもたらした。勝利とともにつかんだ大きな手応えを、しかし、セビージャで体現する機会はすぐには訪れなかった。

清武弘嗣 参考画像
(c) Getty Images

現地時間19日に行われたディポルティーボ・ラ・コルーニャとのリーグ戦。先発はもちろんのこと、ベンチで戦況を見つめる7人のリザーブのなかにも、清武の名前を見つけることはできなかった。

サンパオリ監督は国際Aマッチデーウイーク明けの試合で一貫して、日本代表から戻ってきた清武をベンチ外としている。アジアとスペインを往復した、長距離移動に対する懸念もそこにはあるのだろう。

しかし、同じ条件のもとで長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)と酒井宏は合流直後のリーグ戦で先発フル出場。大迫も72分間プレーし、サウジアラビア戦で限界を超える驚異的な運動量を見せて、ダメ押しゴールまで決めた原口も後半17分からピッチに立っている。

何よりも11月シリーズで招集された14人のヨーロッパ組のうち、先週末のリーグ戦でベンチ入りしなかったのは、清武以外には第3ゴールキーパーの立場にいる川島永嗣(FCメス)しかいなかった。

試合には出場しなかったものの、本田も香川も吉田もベンチ入りしている。酒井高は合流後にキャプテンに就任している。まずは限りなく低くなったセビージャでの序列を、必死になってあげなければいけない。

清武弘嗣 参考画像
(c) Getty Images

これまではセビージャで不足していた実戦での経験を、日本代表の一員としてプレーすることで補う構図が描かれてきた。しかし、次なるハリルジャパンの招集は、来年3月末まで待たなければいけない。

ハリルホジッチ監督をして「60分以上はもたない」と言わしめるなど、すでにゲーム体力の面で顔を出しはじめている弊害がさらに大きくなってしまえば、ようやくつかんだトップ下のポジションも危うくなる。

「頑張ります、はい」

スペインでの覚悟を問われた清武は、短い言葉を残してチームバスに乗り込んだ。代表でずば抜けた結果を残しても、自身が不在の間の練習でセビージャはさらに戦い方を揺るぎないものにしている。

今後も悪循環が続き、サンパオリ監督の構想にぎりぎり入る当落線上をさまよい続けるとしたら、1月に開く冬の移籍マーケットで何らかの決断を下さなければならないのではないか。

来年9月まで続くアジア最終予選を勝ち抜くことを考えたとき、ハリルジャパンとセビージャとであまりに存在感を異にする清武の姿を見て、移籍もやむを得ないのではと考えずにはいられない。
《藤江直人》

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