【THE REAL】ガンバ大阪の注目株・堂安律の現在位置…U-19アジア制覇とMVPに輝いたホープ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】ガンバ大阪の注目株・堂安律の現在位置…U-19アジア制覇とMVPに輝いたホープ

オピニオン コラム

堂安律 参考画像(2015年11月15日)
  • 堂安律 参考画像(2015年11月15日)
  • 堂安律 参考画像(2015年11月15日)
  • 堂安律 参考画像(2015年5月27日)
  • 堂安律 参考画像(2015年5月27日)
左利きでありながら、任されるポジションは中盤の右サイドが多い。アタッキングサードに攻め入るや中央へと切れ込んでいき、ボールをもち替えることなく、勢いに乗ったまま利き足を思い切り振り抜く。

求められるのはパスやクロスではなく、まずはシュート。U‐19日本代表の一員として臨んだ先のAFC・U‐19アジア選手権。U‐19タジキスタン代表との準々決勝でも、堂安律(どうあん りつ/ガンバ大阪)は得意とする位置から輝きを放った。

堂安律 参考画像
(c) Getty Images

1点のリードで迎えた前半19分。左タッチライン際から上げられたクロスが味方に合わず、右サイドへと流れてくる。ペナルティーエリアの右角あたりでボールを拾った堂安は、迷うことなく左足を一閃させる。

カーブ回転がかけられたシュートは、美しい放物線を描きながらゴールへの対角線上を結ぶ空間を切り裂き、左上へと吸い込まれた。相手ゴールキーパーが一歩も動くことができない一撃に、18歳の無邪気な笑顔が弾けた。

後半にも2ゴールを追加したU‐19日本代表はベスト4に進出。4大会連続で逃してきたFIFA・U‐20ワールドカップへの出場権を、まるで当然とばかりに危なげなく獲得したが、快進撃にはまだ続編が用意されていた。

■大会MVPが照れくさい

控えメンバー中心の編成で、U‐19ベトナム代表を3‐0で一蹴した準決勝を経て臨んだファイナル。フィジカルの強さで上回るU‐19サウジアラビア代表と繰り広げられた、延長戦を含めた120分間の死闘で堂安は右サイドで奮闘する。

チームとして得点こそ奪えなかったが、失点も与えない。これでグループリーグから通算して全6試合、合計570分間にわたる無失点を達成。突入したPK戦でも5人全員が決めて、ひとりが失敗したサウジアラビアを振り切った。

堂安は先蹴りだった日本の2番手として登場し、大胆不敵にもど真ん中へ蹴り込んでネットを揺らしている。長くこの大会に挑戦してきた日本だが、頂点に立つのは7度目の決勝戦進出で初めてとなる快挙でもあった。

内山篤監督以下の首脳陣、1997年1月1日以降に産声をあげ、4年後の東京五輪で主軸となる23人の若き代表選手たちが喜びを爆発させてから数十分後。引き揚げたロッカールームで、堂安は意外な言葉を口にしている。

「ディフェンス陣のみんなに、本当に申し訳なかったというか。無失点だからこそ優勝できたと思っているので、個人的には雄太君やトミ、亨介がMVPかなと思っていたので、そのことは正直にみんなへ伝えました」

アジア・サッカー連盟から手渡された大会MVPの称号が、どう考えても照れくさかった。5試合で先発出場し、452分間もプレーしながら、タジキスタン戦の1ゴールに甘んじた自分自身に納得がいかなかった。

■飛び級でJリーガーに

中東バーレーンの首都マナマで、決勝戦を戦い抜いてから約24時間後の10月31日。深夜の羽田空港に凱旋帰国したU‐19日本代表のなかで、堂安がその胸中に抱えてきた手土産は、手応えよりも課題が占める割合がはるかに大きかった。

だからこそ、大会MVPの栄誉を仲間に捧げている。“雄太君”とはDF中山雄太(柏レイソル)、“トミ”とはDF冨安健洋(アビスパ福岡)、“亨介”とはGK小島亨介(早稲田大学2年)であり、いずれも無失点優勝に貢献していたからだ。

「特にグループリーグで、コンディションがあまりよくなかった。大会を通しても1ゴールでしたし、その意味では攻撃陣を引っ張ることができなかった。グループリーグの3試合を見た人はわかると思いますけど、ボールを失う回数が多くて、あまり効率的な攻撃もできなかった。本当にグループリーグでは、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

これが現時点での実力やと思っていますけれども、逆に自分のよさを出すことができれば、準々決勝や決勝のように違いを出せるというか、周囲から『うまい』と言われるようなプレーを見せることができた。すべての試合で自信をもってピッチに立ってはいましたけど、自分のよさを出せるか出せないかで、できたかできないかも決まっていましたね。

堂安律 参考画像
(c) Getty Images

決勝は無得点だったし、前線でのコミュニケーションやアイディアを出していく部分で課題や反省点は残りましたけど、守備に関してはみんな本当にハードに戦っていた。最近はA代表でよく『球際、球際』と言われていますけれども、自分を含めてそういうところを強く意識して、継続できているのかなと思います」

今シーズンからガンバのユースからトップチームに昇格した。6月に18歳の誕生日を迎えた堂安は、本来ならば来春の高校卒業を待ってプロ契約を結ぶところを、いわゆる「飛び級」でJリーガーとなった。

■英国紙で注目を集める

ガンバでは稀有な才能を搭載するユース所属選手を、ひと足早くトップチームへ昇格させることで、さらなる成長を促してきた伝統がある。稲本潤一(現コンサドーレ札幌)や宇佐美貴史(現アウクスブルク)、井手口陽介に次いで、堂安は6人目の「飛び級」となる。

もっとも、172センチ、70キロの体に宿る可能性に魅せられていたのは、何もガンバだけではない。昨年10月のこと。英国の日刊紙『ガーディアン』が「1988年生まれの将来有望なサッカー界の50人」という特集を組んだ。

そのなかに日本人選手で唯一、堂安が含まれていたことで知名度は一気にアップ。年が明けた1月下旬には、今度は英国の高級紙『デイリー・テレグラフ』が「Ritsu Doan」の名前を報じた。

「チェルシーが昨年の武藤嘉紀に続いて、日本人選手に興味を示している」

チェルシーが堂安を獲得したうえで、ガンバへ期限付き移籍させるという記事の内容にガンバのフロントは不快感を隠せなかったが、いずれにしてもヨーロッパの各クラブの間に堂安の名前は一気に浸透していく。

■長谷川監督と宇佐美貴史からのアドバイス

そして、今年の夏。オランダの名門PSVアイントホーフェンから、堂安を期限付き移籍で獲得したいというオファーが届いた。適性を見極めたうえで完全移籍にも切り替えられる可能性もあったが、堂安は熟慮の末に断っている。

理由のひとつはガンバを率いる長谷川健太監督から「まだガンバでプレーしたほうがいい」と、サッカー人生を歩む先輩としてのアドバイスを受けたこと。もうひとつはガンバの育成組織で心技体を磨いた先輩、宇佐美の存在だった。

今夏にブンデスリーガのアウクスブルクへ完全移籍した宇佐美も、堂安に対して「残ったほうがいい」とアドバイスしている。そこには、まだガンバで何ひとつ成し遂げていないぞ、という檄が込められていた。

昨シーズンはユースに所属したままトップチームの試合に出場できる2種登録選手として、J1の舞台に二度立った。しかし、念願のプロになった今シーズン、堂安の主戦場はJ1ではなくJ3だった。

ガンバは今シーズンから、U‐23チームをJ3に参戦させている。将来有望な若手に真剣勝負を経験させることで成長を加速させる青写真のなかで、堂安は19試合、計1697分間にわたってプレーしている。

堂安律(左) 参考画像
(c) Getty Images

奪ったゴール数は「9」で、これは得点ランキングの5位タイにつけている。そのなかにはSC相模原戦で、元日本代表の守護神として一時代を築いた川口能活から奪った、無回転の強烈なミドルシュートも含まれている。

「いやいや、シーズンの最初から『卒業したい』という意識なんですけど…」

J3が活躍の舞台となったことに決して満足していない堂安だが、同じくガンバ大阪U- 23で実戦経験を積んだDF初瀬亮、MF市丸瑞希がU‐19日本代表に選出され、優勝に貢献した事実には感謝の思いを抱いている。

「ガンバからこうやって3人が選出されているということは、試合勘といった部分などで効果はあったのかなと思う。今大会は特にグループリーグで満足できなかったと言いましたけど、ハードワークという部分では自分でもよく走れたと思っているので、その意味ではJ3という舞台はよかったんじゃないかと」

■次の目標は天皇杯

帰国から中2日で行われたセカンドステージ最終節。ガンバは敵地・等々力陸上競技場で川崎フロンターレと対戦し、前半に背負った2点のビハインドを、後半20分からの11分間でひっくり返す鮮やかな逆転勝ちを収めた。

もっとも、J3での活躍が認められ、セカンドステージでは5度ベンチ入りを果たし、そのうち3度、合計25分間にわたって途中出場を果たしている堂安は疲労が考慮されたのか、遠征メンバーには入れなかった。

バーレーンの地でともに戦ったフロンターレのMF三好康児が先発出場し、ガンバ相手にゴールまで決める活躍を演じた一方で、自身は敵地で6日に行われるJ3の大分トリニータ戦へ備える。それでも、堂安は次なる目標を描いている。

「やっぱりJ1は最終節しか残っていないので、次は天皇杯になるんですけど、今年は決勝がガンバのホームで行われることもあってモチベーションも上がっていますし、アピールして天皇杯のメンバーには絡めるようにしないと」

ACLを戦ったことで4回戦から登場する天皇杯では、11月9日にJ2の清水エスパルスをホームの市立吹田サッカースタジアムに迎える。そして、新国立競技場が完成するまでは持ち回り制となっている2017年元日の決勝戦の会場も、偶然にも吹田となっている。

前人未到の大会三連覇を狙うガンバの一員として、2017年の幕開けから勝利に貢献し、自信に経験を上乗せして臨むプロとしての2年目のシーズンへ。5月には最初の目標となるFIFA・U‐20ワールドカップが韓国で幕を開ける。

宇佐美を含めた世代が出場資格を有していた2011年のコロンビア大会を含めて、いつしか日本サッカー界にとって近いようで遠くなっていた檜舞台も、堂安にはプレッシャーにはなりえなかった。

「チームのみんなはどのように思っていたのかわからないけど、個人的には自分たちの代は自分たちの代だと思っていたし、4大会も連続して出られなかった分だけ、逆に自分たちが出られればすごいことだと感じてもいたので。僕にとっては出場することへ不安やプレッシャーを感じるよりは、楽しみのほうが多かったですね。

大会自体は普通にやれば勝てると思っているし、そこは自信をもってピッチに立たないと。ビビッていたら、余計に押し込まれる展開になると思うので。今回の大会で得たものは大きかったし、これから先、みんなが所属クラブで改善して、さらに一人ひとりが自信をもって戦えば、必ずいい結果を出せると思っています」

東京五輪への第一歩となる20歳以下の世界一決定戦も、世界が注目するホープ・堂安にとっては通過点。まずはガンバで攻撃を司る稀有な才能にさらに磨きをかけて、飛躍の年へのステップに変えていく。
《藤江直人》

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