【アーカイブ2009年】BMC SLX01、これに拍手を送らずしてどうする…安井行生の徹底インプレ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【アーカイブ2009年】BMC SLX01、これに拍手を送らずしてどうする…安井行生の徹底インプレ

オピニオン インプレ

SLX01×レイノルズには抗いがたい魅力がある







というわけで、「確かにカッコイイけど結局デザインモノってのは往々にしてナァ…」 と、あまり健全とは言えない猜疑心を抱えたまま走り出したのだが、疑いは驚きに変わった。あっさりと。いきなり安直な感想を一言で述べるとすれば、「SLX01は、かなり速い」。基本をしっかりと押さえた高い実力が感じられ、想像以上の走りに嬉しくなったその一方で、またしても説得力のない自分の言い掛かりの数々が悲しくなるのであった。要するに、スイスの頭脳集団は、世界一素晴らしいスタイリングの中に、正しいロードバイクの基本性能を、正しく閉じ込めることに成功していた。



喉越しスッキリの加速は素晴らしく、坂もよく登り、なにより最高の高速巡航を僕にプレゼントしてくれた。それらはSLX01の確かな事実だ。ただし、試乗車に装着されていたレイノルズのホイールに限って言えば、という条件付きで。だからベタ褒めはしない。



次の日に自分のキシリウムSLに交換して走り出してすぐ、このバイクの評価は難しい、と思った。それまでの好印象がどんよりと曇り、暗転してしまったのである。同じバイクとは思えないほどぬたっとした踏み味になってしまった。それは、ホイール自体の性能差をはるかに越えたギャップだと感じた。



某エンジニア氏はそれについてこう言う。



「チェーンステー、というよりハンガー全体が硬く入力に対してのたわみが少ないフレームに硬いホイールを組み合わせると、クランクを踏み下ろそうとしたときに、バイク側はその入力の全てを (フレームやホイールをたわませるのではなく) 加速に使おうとする。体重の軽い人やパワーのない人は (そこまでの加速をさせるパワーのない人は)、そのプロセスを“クランクがなかなか降りていかない”と受けとり、重ったるく感じる。これがサイクリストがよく言う“踏み負ける”ということ。



ハンガー~ホイールの剛性が適正だと、程度なしなりによってクランクがススッと下がるように感じ、そこにライダーは“回しやすい、気持ちいい”という印象を持つ。剛性が低すぎると、もちろん進まなくなるんだけど。



だから、キシリウムSLにして進まなくなったように感じたのは、SLX01のぶっといチェーンステーと小さい面積で構成される高剛性バックに、硬いSLを組み合わせたのが原因じゃないかな」



確かに僕の最もスパルタンだと言われていた時代のSLに比べて、レイノルズ・46DV-ULは横方向に明らかにしなやかだ。だから、「SLX01×キシリウムSL×安井行生の体重・脚力」 では、重ったるいバイクだと感じ、「SLX01×レイノルズ・46DV-UL×安井行生の体重・脚力」 では、羽のように軽く走る素晴らしいバイクだ、と感じたのだろう。もちろん、「SLX01×レイノルズ・46DV-UL」 で柔らかいと感じる人もいれば、「SLX01×キシリウムSL」 が最高だと思う人もいると思う。







トレックのOCLVがガチガチの剛性を誇っていた時代、ボントレガーのホイールはわざとしなやかに味付けされていた、という話を聞いたことがある。高剛性化が進む近年のロードフレームに合わせて、MAVICのロードホイールは (同じモデルでも) 年々しなやかさを調整している、とも言われている。フレームとホイールの相性は本当に難しいのだ。



このBMCも様々なホイールで試してみた。どの組み合わせで評価すべきか迷ったが、わざわざ悪い状態で試乗するのも公平ではないと考え、以下、最も相性が良いと思われたレイノルズでの評価を行う (ただ、自分のバイクでもレイノルズを使い、その絶対的な性能と性格を見極めんと努め、ホイールによるアドバンテージはなるべく差し引こうと努力した)。



しかしSLX01×レイノルズ・46DV-UL、この組み合わせは本当に最高だ。フレームの縦剛性の高さと、ホイールが持つ横方向の絶妙なしなやかさが、隣り合うパズルピースのようにピタリとはまる。漕ぎ出しの瞬間こそ俊敏ではないが、タイヤ半回転ほどの楚々たる仕草を見せた後、いきなりトラクションをドバッと吐き出し始め、そこから高速へのスピードの伸びはたいしたものだ。



以前、このSLX01の前モデルといわれているSLT01に乗っていたことがある。ラスタカラーのファンキーなバイクだった。非常に快適だったがしかしお世辞にもキレがあるとは言えず、モッサリ感が性に合わず一ヶ月ほど乗って売り払ってしまった。



SLX01は表面こそSLT01のようにしっとりとしているが、その芯はSLT01と違って強靭だ。どんなにラフに踏み込んでも顎を出さない。ダウンチューブ~チェーンステーの動力ラインにアルミを使っている効果だろうか。確かに、頼もしい 「旧き良きアルミのガッシリ感」 がベースになっている感じはある。







ミドルグレードにして唯我独尊、という快作







それにこのバイクは高速巡航が素晴らしい。軽量エアロホイールということを差し引いても、高速域へ引っ張りあげるように誘う加速性と、糸を引くように走る巡航性はかなりいい。ホイールの絶妙な横剛性、動力伝達に優れたチェーンステー、直進安定性に優れたフォークなどのおかげだろう。それらが溶けて混ざり合い、高速域まで加速が衰えない。



登坂でも痛痒は感じない。トルクにフレームが負けないので、フレームの芯に近づけば近づくほど強靭さが感じられるようになり、いかにも重力に抗っている、という感じでグイグイと力強く進む。



僕がSLT01を手放すと決めた理由の一つであるフロントフォークの弱さ、それはSLX01では見事に払拭されていた。ネガティブなたわみは少ないし、ダンシングで左右に大きく振っても、バイクの挙動は正確さを失わない。ハンドリングもいい。直進安定性、ナチュラルな操作性、正確な舵応答性の3点において、ONDAフォークに匹敵するほどいいと思った (落ち着きとカミソリのような鋭さを併せ持つONDA、どこまでもスッキリ素直なBMC Straight Edge、という性格の違いはあるにせよ)。



SLX01はダウンヒルも嫌がらない。フレームに強い応力がかかるハイスピードの下りにあっても、モノコックのヘッド部分が強いおかげか、SLX01の振舞いはすべてが自然。SLX01は、希有なハンドリングマシンなのである。動的性能に死角は少ない。



ただし、乗り心地には洗練の余地ありか。微少な振動は綺麗に消し去ってくれるし、大きな凹凸の角はマイルドにしてくれており、快適性は高い。しかし振動減衰性は積極的に称えようとは思えなかった。ストレートフォークの形状的特性かシートチューブのアルミが持つ素材特性か、振動の収束スピードは速くない。だからコーナーの途中でタイヤが外乱を拾うと、一瞬、接地感が希薄になる。が、怖いと感じるほどではないし、価格を考えれば十分すぎる性能であるといえる。







結論。SLX01は、極めて真っ当なロードバイクだった。「アルミとカーボンの幸福な結婚」 とか、「異素材の華麗なる競演!」 なんていう華々しいフレーズは相応しくないにしても、芯のあるアルミの踏み味や堅強なヘッド剛性、高周波での良好な振動吸収性などは、もしかしたらその特殊な構造ならではのものかもしれない、と思わせた。



強いて探せば欠点は挙がる。踏み出しに限って言えば軽快感は少ないし、大きな振動の収束感も古い。大味なところもある。前述した通り、僕はホイールを選ぶフレームだと感じた。だが、これに惚れてしまった人にとっては、些細なことと言えば些細なことだし、そうでない人にとっても、その実際に些細な欠点のどれもが、些細なこと、として済ませられるレベルに収まっている。見た目だけで選んでも、動力性能にがっかりすることはないだろう。価格を考慮すればなおさら。



ただひとつ残念なのは、このフレームには小さいサイズが存在しないことだ。最小サイズでもトップチューブ長は530mmもある。これはまったくいただけない。ミニサイクリストとして抗議したい。ようやく欲情する対象となりうる自転車に巡り逢えたにも関わらず、しかし乗れるサイズがないことに気付き、購入を諦めた人は多いのではないか。スモールサイズのラインナップを強く望む。



なんにせよ、僕はこのSLX01を喝采をもって迎えたいと思ったし、積極的に褒めたいと思った。「バイクの出来は不満の少ないレベルにある」 ということが理由の半分で、「決定的なアイデンティティをその性能と見事に同居させている」 ことと 「アンダー30万円でそれを実現している」 ことが残りの理由の全てだ。ミドルグレードにしてこの煌めく存在感は、今のロードバイク界が得難いものだろう。同じ市場に群がるライバル達と見比べてみればその意味が分かるのではないか。だから、ミドルグレードとはいえ、SLX01は高価なバイクを買えない人が消極的に選ぶバイクではない。



ウラには販売競争の論理や商品力の強化といった計略が渦巻いているのかもしれないが、単なるサラリーマン・エンジニアではなく、本当の自転車好きが楽しみながら作ったのだろうという、そんな根拠はないがしかしハッピーなイメージすら湧き上がらせる、僕らの自転車趣味の世界を楽しくしてくれそうな一台。これに拍手を送らずしてどうする。



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