【アーカイブ2009年】サーベロ R3-SL、背徳的な何かを感じさせるほどの快楽という違和感…安井行生の徹底インプレ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【アーカイブ2009年】サーベロ R3-SL、背徳的な何かを感じさせるほどの快楽という違和感…安井行生の徹底インプレ

オピニオン インプレ

安井行生のロードバイク徹底インプレッション



2008ツールのマイヨジョーヌ獲得バイク



今回は安井にとって人生初となるサーベロ。せっかくだから、と08ツール総合優勝のハクが付く最上級モデルのR3-SLを借り、300kmのインプレッションに臨んだ。「パーフェクト!」なんていう、乗り物の試乗記を書かんとする人間が抱く感想としてはおおよそ相応しくない単語を、何度も反芻しながら。



(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)



言うまでもなく、このR3-SLは2008年のツール・ド・フランスにおけるウィニングバイクである。サーベロは1995年設立と新しいカナディアンブランドで、タイムトライアルバイクを得意としていたが、2002年からプロロードチームに供給を開始。03ツールではR2.5という細身のカーボンバイクがチームCSCの走りを支え、04年にはイヴァン・バッソがサーベロを駆り大活躍を見せる。さらに05年モデルのR2.5バイヨンヌはフランスの専門誌で唯一最高評価を得るなど、ロードバイクの分野でも一目置かれる存在に。06年にはR3がデビューし、グランツールの山岳ステージ制覇、パリ~ルーベの2年連続優勝など躍進。そのR3をさらに軽量化したフレームがR3-SLである。



シートステーは驚くほど細いが、チェーンステーは超極太。キャノンデール・スーパーシックスやリドレー・ヘリウムなどと似た設計思想だが、シートステーとチェーンステーの太さの差がここまで大きいバイクも珍しい。



新設計のスクオーバルチェーンステーとの相乗効果でシートステーにかかる負荷は非常に小さくなっているというR3。結果としてシートステーにかかる垂直方向の負荷はほとんど考慮の必要がなくなっている。「シートステーにはリーフスプリングとしての役割が与えられており、最小限のウエイトで強度とねじれ剛性、そして快適性をアップさせている」 とはメーカーの弁。角材のようなダウンチューブ、トップチューブのヘッド側、シートチューブのBB側も四角断面となっており、他のバイクとは趣を異にする、一種異様な雰囲気を持っている。



※バイク単体写真はニューカラー(ブラック×シルバー)の09モデル。サイズの関係で試乗したのは08モデル(ブラック×ホワイト)だが、カラーリング以外に変更点はないという。







スペック







背徳を感じさせるほどの快楽としての違和感







R3-SLの走りっぷりの何と素晴らしかったことか!一言で言い表すなら、「パーフェクト!」 である。全く、ロードバイクとしてほとんど完璧。乗り始めてから数時間はその単語しか思い浮かばなかったほど。



走り出してまず感じるのは、(良い意味での) ヒラヒラとした、しかしあくまでもしっとりとした軽快感があるのに、背中を押し出すようなトルク感も持ち合わせる、という特殊な特性である。力強さに加えて、高い剛性による硬い軽さではなく、バイクに浮力がついたような、ふわりとしたフェザーの軽さがある。



登坂のダンシングでは、しなやかな軽快感 (表現矛盾のような気もするが) がさらに際立ってくる。バイクの上で腰を上げたままどこまでも登れるような錯覚さえ覚え、大垂水峠なんて、これにかかれば (まるで) あっという間 (に思えるの) である。



しかもそれは、パワーのない軽量ライダーやトルクフルな重量級ライダーを「適用外」にカテゴライズして排除してしまうのではなく、「あらゆるタイプのペダリングを受け入れる」 という度量の深さを伴ったものだ。







R3-SLはコントロール性でも期待に応える。躾が行き届いているハンドリングは、過敏すぎもせず、かといって鈍重でもなく、調度いい案配にチューニングされている。与えた操作に対してバイクが見せる挙動に一貫性があり、どんな速度域でも極めてコントローラブルである。



脚当たりは、その高い動的性能と印象を結び付けるのが困難なほど優しい。だから最初は奇異に思うかもしれない。こんなによく進むのに、こんなにソフトなはずがない、と。それは、踏み込まれたヒューマン・パワーや、コーナリング、加減速によって発生するGを、柔らかに、しかししっかりと受け止める動物の脚だ。素材特性に加え、構造が持つ特性によって、その脚の膝でショックを吸収するイメージを伴ってR3は“滑空” する。



ペダリングの軽快感、強大なトラクション、極上の快適性、この3つの (ロードフレームにおいては相反しがちな) ファクターの見事な共存には、ポジティブな意味での違和感を覚える。それも、ここまでくるともはや (全てを手に入れてしまったような) 背徳的な何かを感じさせるほどの快楽、としての違和感である。



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