【THE ATHLETE】独立リーグから新人王候補へ、四国の地で飛躍的な成長を遂げた又吉克樹 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】独立リーグから新人王候補へ、四国の地で飛躍的な成長を遂げた又吉克樹

オピニオン コラム
【THE  ATHLETE】独立リーグから新人王候補へ、四国の地で飛躍的な成長を遂げた又吉克樹
  • 【THE  ATHLETE】独立リーグから新人王候補へ、四国の地で飛躍的な成長を遂げた又吉克樹
12月20日に中日の又吉克樹投手が来季の契約を更改した。今季840万円から大幅アップの4000万円。新人ながら中継ぎの柱としてシーズン通し活躍した又吉に、厳冬の中日も財布の紐を緩めた。

又吉は四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズから、2013年オフのドラフト会議で中日ドラゴンズに2位指名され入団。記者会見ではテーブルの上にゴマ油が置かれていたことでも話題となった。


又吉が所属していた四国アイランドリーグplusは、独立リーグと呼ばれる地域に根ざした野球組織だ。プロ野球(NPB)入りを目指す若者たちに、野球ができる環境を用意するプロ・アマどちらにも属さない、独立した組織として運営される。

夢を追うと簡単に言うが、独立リーグの生活は楽ではない。多くの選手は3年程度で自分のキャリアに見切りをつけ他の職を探す。独立リーグはNPBを目指す場所だが、同時に「ここでこれだけやって駄目なら仕方ない」と、新たな一歩を踏み出すための場所でもあるのだ。

寮の施設や練習設備などはNPB球団とは比べるべくもない。道具の数も限られ、用具提供も期待できないため、バットが折れるなどすると手痛い出費だ。

独立リーグの月給はリーグごとの規程に従う。又吉の所属していた四国アイランドリーグplusは、月給10万円~40万円と定められ、又吉は12万円を受け取っていたという。また独立リーグの月給はシーズン中しか払われない。それ以外の時期は他の仕事を探して生活する。

知れば知るほど長く続けられる生活ではない。そんな厳しい環境でも、プロ入りの夢と情熱だけ持って毎年、多くの若者が身を投じる。

又吉は高校時代にコントロールの良さを買われ、1年生からバッティングピッチャーを務めたが、本職は二塁手。本格的に投手へ転向したのは環太平洋大学でのことだった。それまで打たせるのが主な仕事だった又吉は、ストレートも110キロ程度しか出ず、およそ全国レベルと呼べるような投手ではなかった。

しかし投手一本に絞り練習を続けるうち、球速は最速140キロ近くまで上がり、160センチ台だった身長も伸びて力強いボールが投げられるようになった。

天職を見つけた又吉に遅い成長期が訪れる。

香川オリーブガイナーズに入団後もストレートは140キロ台後半に達し、キレのいいスライダーとの組み合わせでNPB入り目指すバッターたちから、次々に三振を奪った。防御率1.64、13勝4敗の成績で最多勝を獲り一躍スカウト注目の選手となった。

急成長を遂げた又吉に多くの球団が興味を示した。中でも中日ドラゴンズは2位という、アイランドリーグ出身選手としては過去最高の順位で指名。独占交渉権を得た。独立リーグでもスカウトの目に留まれば上位指名される。このドラフトに勇気づけられた独立リーガーも多いだろう。

中日入団後の又吉は1年目から中継ぎの柱としてフル稼働。シーズンでは67試合に登板し防御率2.21、9勝1敗、2セーブ、24ホールドの成績だった。オフにはドミニカのウィンターリーグに参加し、ここでも17試合に登板した。


過去に受けたインタビューで又吉は、サイドスローで投げる投手はリリーフで起用されることが多い。しかし自分は先発で2桁勝てるピッチャーになりたい。そして「又吉みたいになりたい」と目標にされる選手になりたいと語っていた。

現在それぞれ別の職場で働いているアイランドリーグの選手たちも、又吉の契約更改はスポーツニュースなどで見聞きしているだろう。自分たちと同じグラウンドで戦っていた選手が、1軍の主力選手として高く評価された。

1年前は同僚だった選手の成功に、次は俺だと奮い立っているはずだ。その気持ちを持って選手たちは来春グラウンドに戻ってくる。
《岩藤健》

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