【アーカイブ2009年】BH G4、ロードバイクは「味」を必要としている…安井行生の徹底インプレ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【アーカイブ2009年】BH G4、ロードバイクは「味」を必要としている…安井行生の徹底インプレ

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【アーカイブ2009年】BH G4、ロードバイクは「味」を必要としている…安井行生の徹底インプレ
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身体にピタリと吸い付く、味わい深いしなやかさ







しなやかな面を強調することに変わりはないが、一度バイクとシンクロしてしまえば、加速にもどかしさはほとんど感じない。なぜならそれは、子供のための絶叫マシンのような分別のないものではなく、「加速とは、望む速度に至るまでに必要ないち過程にすぎない」 と静かに諭すジェントルなマナーとしてあえて抑制されたもの、と感じられるからだ。誤解してほしくないのだが、絶対的な加速性能はそれほど悪いわけではない。あくまで 「レーシングブランドのトップモデル」 として捉えた場合の感想である。



興ざめするはずだったヒルクライムに持ち込んでも、最初に感じた頼りなさは消え失せていた。登坂や加速時のパフォーマンスは、凶暴、というほどではないものの、快活、とは言えるレベルにあることを発見した (といっても大馬力スプリンターや上級ヒルクライマーを大興奮させるほどではなく、小気味いい加速を楽しむためには低めのギアを選ぶ必要はあるが)。



ハンドリングもこのG4の魅力のひとつである。フォークの性格は実に素直。ステア特性は超ニュートラル。直進安定性は抜群にいい。下りでも扱いやすさは健在で、G4はワインディングロードを鳥が舞うように駆け下りていく。…限界を見ようとさえしなければ。



神経を張り詰めて路面状況や対向車の動きに気を配らなければならないほどのスピードでバイクを倒しこんでフォークに横方向の強い応力をかけてやると、それまでニュートラルだったG4は突如アンダーステアに転じ、意図したラインをトレースしようとするライダーに切り増しを迫る。この急激なアンダーステア移行だけがライダーとバイクとの一体化を拒否する唯一のファクターとなり、追い込むと多少の緊張感を伴うダウンヒルとなる。振動吸収性、振動減衰性は、レース用カーボンフレームとしては一般的なレベルだろう。







シートポスト保守派かつ翼断面が空気抵抗に効いてくるほどの速度域で走ることはほとんどない (出来ない) 僕にとって、このISPにスタイル以外に騒ぎ立てるほどの絶対的メリットは見いだせなかったが、デメリットもそれほどないようだ。普通の翼断面シートチューブをそのまま上方に延長しただけで、微調整も可能なのだ。骨盤の幅が狭い人でもペダリング時にふとももの内側が擦れないのは確かに (というかよく考えれば非常に) いい。



所々で少々辛口になってしまうのは、G4に対して 「レーシングブランドのフラッグシップシップ」 というイメージを僕が持っているからで、価格に目を移せば、ブランドによってはサードグレードの数字なのである。それを考えれば十分に納得がいく性能が出ていると言える。それに試乗後、シートポスト部分込みで880gだということを知らされてびっくりした。コーラス+ニュートロンという試乗車では浮き上がるほどの軽さが味わえなかったのがいささか残念だったが、優しい加速も大人しいヒルクライムもダウンヒルでの神経質な振る舞いも、フレーム重量を思えば 「上出来」 の範疇だ。



バイクそのものとは関係ないが、11速になったカンパニョーロのブラケット形状は期待を遥かに越えるほどの素晴らしいフィット感と感動を僕にもたらしてくれた。シフトフィールは (一世代前の) スーパークリアカットなデュラエースに及ばないものの、大のシマノ派だが新型デュラエースのブラケット形状が全く合わなかった僕は食指が動いた。



発売直後に手に入れた79のブラケットの太さその他に辟易し慌てて78を買いなおしたばかりだが、コーラスもしくはちょっと頑張ってレコードにしとけばよかったかと、少しだけ考えてしまった。コーラスで組まれたG4を返却してから、右手の親指が寂しそうにうろつく。



そんな極上カンパフィットも味方してか、総走行距離350kmを超えた頃には、G4は僕の呼吸に同調するかのように、身体にピタリと吸い付いてきた。たった2週間しか乗っていないのに、もう10年も前からペダリングを共にしてきた自分の分身のように一体となって走らせることができたのは、ちょっとした驚きだった。







先進的でありながらレイドバックした魅力も持つ







(長いスパンという意味での) 長距離を走らないとG4のよさは分かりにくい。ガチャ踏みすると進みたがらなくなるが、例えば時速30kmからもう一度加速を始めようとするとき、その柔らかさが高速域において軽快感を増す方向に活きてくる。高速になればなるほど硬さが効くFP7などとは対照的である。ラフなペダリングは受け付けないが、クランクをキレイに回すと滑るように走る。姿カタチは大きく違えど、これは現代のKG481だ!と僕は思った。



それらは、一気に爆発するアッパー系の快楽、という種の楽しさではなく、跨った瞬間からペダルをリリースする瞬間まで、じわりじわりと持続する楽しさを持つ、という点において同一なのだ。G4に人工的サイボーグ感は皆無。人間の生態リズムに近い。限界点の位置ではなく、そこまでの過程に主張がある。そんな言葉にしにくい微妙なニュアンスの仕上げが、実に見事だ。あのしなやかな猫足LOOKは何処へ…とお嘆きの貴方にお勧めしたい。



そういえば481を手に入れたときも、最初は、なんて進まないバイクなんだ、と大枚叩きをひどく後悔したことを思い出した。2週間後には、「これは奇跡の名車だぁ!」 と、当時の僕は誰にというわけでもなく叫んだものである。



G4のシートチューブは、偶然にもそんな昔のLOOKほどに寝ており、シート角は72度となる (最小サイズは一般的な74度)。よってジオメトリ表のトップチューブは長めに表示されるので選ぶときには考慮する必要がある。サドル後退幅を多くとる人にとっては非常にありがたい (ISP=専用ピラーなのでセットバックシートピラーが使用できず、もしシート角が立っていれば選択肢から外さざるを得ないのだ)。







マドンや586は何をやっても何にも起こらない。誤解を恐れずに言えば、味気ない、とそれらを評することもできるかもしれない。対してG4には、感応するスポットを探りながら乗りこなす楽しみがある。これはまた、ただ柔らかいだけのバイクや、「路面の凹凸を乗り手にいかに伝えないか」 という (ロードバイクの本質からは多少ずれた) 点にのみ邁進した自称コンフォートバイクなどは、決して持ち得ないものでもあるだろう。



だから、他のバイクと比べることはできない、というか比べるべきではない、と思う。最新モデルの装いを持ちながら、どこかレイドバックした魅力を備えているG4の真相は深層にある。深い付き合いをしないと、本当の良さは分からない。漫然と走らせるだけでは、本質に触れることはできない。感情をただ叩きつけても、「このバイクでなくてはならない」 と言いたくなるような走りは見せてくれない。己の感性を高め、しかも理性を失うことなく、かつ繊細なやり方でバイクの無言の声を聞き取らんとする努力が必要だが、それはもちろん、現代の高性能バイクがだんだんと失いつつある味である。



そんなぼんやりとしたファクターに対する感受性は人それぞれだ。レース用機材に “味” などそもそも必要ない、とばっさり切り捨てるのも正義。しかし、だからこそ、今のロードバイクは “味” を必要としている、と僕は思いたい。


《》

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