【澤田裕のさいくるくるりん】連載開始から3年。自転車を巡る環境はどのように変わったか | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【澤田裕のさいくるくるりん】連載開始から3年。自転車を巡る環境はどのように変わったか

オピニオン コラム
2014年5月の伊那街道ツーリングでは、このスタイルで2泊3日を過ごした
  • 2014年5月の伊那街道ツーリングでは、このスタイルで2泊3日を過ごした
  • 区域を超えて相互に乗り捨てられるサービスの提供も始まったコミュニティサイクル
  • 泊まりを伴うツーリングには、大容量のサドルバッグに薄型のフロントバッグをプラスしたスタイルを提案
  • ズイフトを利用すれば、家にいながら全世界のサイクリストと競い合える
  • 車道より歩道を走るほうが危険であることを実証。車道は遮るものがないため、ドライバーからよく見える
  • これが歩道だと電柱や街路樹などで遮られ、ドライバーから見えにくい
  • 「自転車は降りて」との看板が立っている千住新橋(国道4号)の歩道を自転車が素通り
  • 国家レベルで整備が進む、台湾の自転車(自行車)道
2014年2月の連載開始から3年。東京・江東区で始まったコミュニティサイクルを紹介した初回からの128回で、さまざまなテーマを取り上げてきました。

この連載の最後にあたって自転車、そしてそれを巡る環境がどのように変化したのかを振り返ってみましょう。

まずはコミュニティサイクルについて。江東区から隣接する中央区、千代田区、港区そして新宿区にも運用が広がり、区域を超えて相互に乗り捨てられるサービス(自転車シェアリング)の提供も始まっています(2015年12月24日公開)。

1月23日には文京区も加わることで山手線内の大半で利用できるようになり、来る2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは外国人観光客の足として役立つことが期待されます。都市部では自転車の移動が、クルマや公共交通機関にも増して移動時間を短縮することも本コラムで示しました(2014年3月21日公開)。

僕自身がツーリングを主体に自転車を楽しんでいるということで、そのノウハウも公開。そこにも近年の流行が見え隠れしています。

ロードバイクでのツーリング、特に泊まりを伴うものでは、パンクなど走行中のトラブルに対処するパーツやツールのほか、着替えやカメラなどさまざま携行する必要があります。

その際、楽に思われるバックパックの利用は、背中の蒸れやダンシングの妨げ、さらに尻が痛くなるといった理由でオススメできないため、大容量のサドルバッグに薄型のフロントバッグをプラスしたスタイルを僕は提案しました(2014年5月29日公開)。

もちろん、収納する荷物はミニマムで、着替えは1組だけとして入浴の際に洗うことも付言。これも最近ではバイクパッキングの名とともにサドルバッグの大容量化が進み、10リットルを優に超える製品も現れたことで収納に伴う苦労は緩和されました。

コミュニティサイクル

アプローチに要する時間と労力を減らす「輪行」も、ノウハウとして取り上げたものの一つです。

近年では多くのサイクリストに認知されて利用者が急増。僕が輪行袋を担いで鉄道に乗るときも、他に何人もの同好の士を見かけることが珍しくありません。

その一方で、規定のサイズを上回ったり車体の一部が袋からはみ出したりといった、鉄道各社の旅客営業規則に抵触する行為も散見。新しく輪行を始めた人は、それが認められるに至った経緯を知らず、安易に考えているからでしょうか。

競輪選手にのみ認められていた輪行…これをサイクリストの団体が運動した結果、徐々に間口が広がってきた。このことを知れば、自分本位の考えも改まることでしょう(2014年5月22日公開)。

このコラムがネットで連載されていることもあり、IT機器の積極的な活用も呼びかけてきました。特にGPSについては紙地図の携帯が不要、雨天や夜間といった悪条件下でも問題なく利用可能といった利点を示すとともに、本体のナビゲーション機能ではなく、ネット上の地図で事前に作成したルートをGPSに読み込んでナビゲートする方法も紹介(2014年10月23日公開)。僕自身、台湾一周の自転車旅行などで大いに活用しました(2015年1月1日公開)。

IT機器の活用では、実際の練習走行をローラー台で体現するソフトウェア、ズイフトも取り上げました(2016年5月12日公開ほか)。

全世界のサイクリストと競い合えるとあって、単調な練習を盛り上げるにはもってこい…ということで、当面の目標としたセンチュリーラン完走を果たした今も、スポーツジムに通わない日に活用しています。

コースの勾配に合わせて負荷が変化するスマートトレーナーの購入こそ思いとどまっていますが、ほとんどのズイフト参加者が利用しているとあって、手に入れるのは時間の問題かもしれません。

そして、この連載を通じて一貫して訴えてきたのが「自転車は車道の左端を走行すべし!」ということです。

2014年4月24日公開のコラムで、車道より歩道を走るほうが危険であることを実証したことに始まり、僕が都内に向かうときに通る国道4号の橋で、歩道通行が強制されていることの問題を示しました(2014年10月2日公開)。

先月30日には港区六本木で、自転車と歩行者が衝突して歩行者の男性が死亡した事故も発生。国道4号の橋と同様、現場となった歩道には「自転車は降りて」との看板が立っていたものの、そのまま乗り続けた結果です。

もちろん加害者である彼の責任は免れないものの、自転車が車道通行していれば起きえなかった事故でした。

車道より歩道を走るほうが危険

自転車が車道を走ることは、自転車自身の走行環境の改善にもつながります。近年はアジア各国において自転車道の整備が進められ、あっという間に日本を追い抜いてしまいました。これは国家レベルで取り組んだからという側面もありますが、自転車の歩道通行という負の遺産を持たないからこそできたこと。

僕が一周に挑んでいる台湾などは、市民の足として使われるオートバイの存在と相まって、多くの幹線道路において並走するクルマから構造分離されたレーンを安全かつ快適に走れます(2016年1月14日公開)。

昨年末には自転車活用推進法が臨時国会で成立。さまざま自転車関連の施策を進めるうえでの根拠が明確にされ、重点的に検討され実施されるべき14の施策も掲げられました。

このなかには◯自転車専用道路や自転車専用車両通行帯等の整備、◯自転車を賃貸する事業の利用者の利便の増進に資する施設の整備、◯自転車と公共交通機関との連携の促進といった、ここまで述べてきたことに密接に関わるものが含まれています。

みなさんがお住まいの地域でも、今後どのような施策が講じられるのかを注意深く見守りつつ、必要に応じ意見を表明していただければと思います。

3年にわたってのご愛読、ありがとうございました。
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