【THE REAL】世界に衝撃を与えた連続ゴール…MF柴崎岳のクールな仮面の下に脈打つ熱き血潮 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】世界に衝撃を与えた連続ゴール…MF柴崎岳のクールな仮面の下に脈打つ熱き血潮

オピニオン コラム

柴崎岳 参考画像(2016年12月18日)
  • 柴崎岳 参考画像(2016年12月18日)
  • FIFAクラブワールドカップ決勝、レアル・マドリード対鹿島アントラーズ(2016年12月18日)
  • FIFAクラブワールドカップ決勝、レアル・マドリード対鹿島アントラーズ(2016年12月18日)
  • FIFAクラブワールドカップ決勝、レアル・マドリード対鹿島アントラーズ(2016年12月18日)
  • FIFAクラブワールドカップ決勝、レアル・マドリード対鹿島アントラーズ(2016年12月18日)
  • FIFAクラブワールドカップ、レアル・マドリードが世界一に(2016年12月18日)
  • 柴崎岳 参考画像(2015年5月5日)
■日本中に勇気を与えた同点ゴール

ほとんど変えることのないクールな表情からは、どのような感情を抱いているのかを読み取ることは難しい。それでも、ほんの一瞬だけ見せた何気ない仕草から、鹿島アントラーズのMF柴崎岳が胸中に同居させた喜びと手応えが伝わってきた。

横浜国際総合競技場で18日夜にキックオフを迎えたFIFAクラブワールドカップ決勝。銀河系軍団と畏怖されるヨーロッパ王者、レアル・マドリードの牙城に開催国代表のJ1王者、アントラーズが風穴を開けた前半終了間際のことだった。

起死回生の同点弾でチームメイトやベンチで戦況を見つめる石井正忠監督以下の首脳陣、そして7万人近くの大観衆で埋め尽くされたスタンドを狂喜乱舞させた直後のこと。柴崎は右拳を握り締め、注視しなければ見逃してしまいがちの小さなガッツポーズを作っていた。

「僕一人だけの力で奪ったものではないですし、チームとしての流れやプレーがあったなかでのゴールだったので。みんなに感謝したいですけど、勝っていればもっと、もっと喜べたとは思うので」

左サイドを個人技で突破したFW土居聖真が、ややマイナス気味の方向へあげたクロス。低く、速い弾道が自身を目がけて迫ってくるなかで、今シーズンから「10」番を背負う24歳はニアサイドへ走りながら思考回路をフル回転させていた。

「ダイレクトでは打てなかったので、しっかりとトラップしようと思いました」

右太ももでのトラップはやや大きくなって前方へ弾み、一度はDFラファエル・バランにブロックされる。それでも抜群のボディバランスで踏みとどまり、こぼれ球を再び自らの間合いに呼び込んだ。

上半身を強引に捻りながら、利き足とは逆の左足を一閃。低く抑えられたボレー弾がゴールの右隅へ、対角線上を切り裂いていく。レアル・マドリードの守護神、ケイラー・ナバスが懸命に伸ばした左手の先をかすめ、ネットを揺らした瞬間に抱いた心境を、後方で見ていたMF永木亮太はこう振り返る。

「あれで勇気をもらいました。勝てる、という気持ちも芽生えてきたので」

■世界中を驚愕させた逆転ゴール

もっとも、これは序章にすぎなかった。さらなる衝撃が横浜を発信源として、全世界へ発信されたのは後半7分。歓喜の輪の中心でもみくちゃにされたのは、またもや柴崎だった。

DF植田直通が前線の右サイドへ送った縦パスを、キャプテンのDFセルヒオ・ラモスがクリアする。しかし、これがやや雑なものとなり、敵陣のほぼ中央にいた柴崎のもとへ落下してくる。

MFルーカス・バスケスを背負いながら、ワンバウンドしたボールを柴崎が支配下に収める。この時点で相手には油断の類がまだ残っていたのか。バスケスがかけてくるプレッシャーが意外と緩い。

ボールを失うことなく、さらにはバスケスが繰り出した中途半端なボディコンタクトを前方へ加速する力に変えて飛び出す。前方に立ちはだかったDFダニエル・カルバハルを、左へかわした直後だった。

「あの場面では、いろいろなパスのコースも探していました。ただ、いい形で抜け出せたので。左足のシュートには自信がないわけではないので。しっかりと思い切りよく蹴れたと思います」

このときも上半身を思い切り捻り、このときに生じたパワーをもボールに伝える。左足から放たれた強烈な弾道が、ゴールの左ポストぎりぎりを正確無比に射抜く。ナバスの必死のダイブも届かない。

勢いあまってピッチのうえに転倒した柴崎には、シュートの行方は見えていなかった。それでも、耳をつんざくような大声援と、ゴール裏に陣取るアントラーズサポーターの熱狂ぶりから状況は理解できた。

「歓声というか、みんなが喜んでくれていたので入ったのかなと。まだ勝利は確定していなかったし、まだまだ試合は続くので、ゴールを決めたとはいえ、それほど感情を露わにすることはなかったですね」

■クールな仮面を脱ぎ捨てない理由

ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドを筆頭に、世界各国からスーパースターが集うレアル・マドリードからリードを奪い、目の色を変えさせ、本気にさせる一撃を決めた。

FIFAクラブワールドカップ決勝、レアル・マドリード対鹿島アントラーズ(2016年12月18日)

図らずも世界中から注目を浴びることになった柴崎はしかし、笑顔すら見せなかった。この先に訪れる試練の時間帯を覚悟しているかのように、クールな仮面を決して脱ぎ捨てようとはしなかった。

なぜここまで冷静沈着でいられるのか。強化部長として在職21年目を迎えているアントラーズの鈴木満常務取締役は、柴崎の目線の高さと関係していると説明してくれたことがあった。

「非常に意識が高いので、もっともっと上のレベルを目指していくために、いろいろな課題を自分の中で整理しながら、自分自身を客観的に評価していくことができる選手なので」

名門・青森山田高校から加入したのは2011シーズン。高校2年生の時点でアントラーズと異例ともいえる仮契約を交わした逸材は、加入2年目の2012シーズンから早くも必要不可欠な存在となる。

ヤマザキナビスコカップ(YBCルヴァンカップ)連覇に貢献して大会MVPを獲得。その年のJリーグアウォーズでは、プロ野球でいう新人王にあたるベストヤングプレーヤー賞を受賞する。

「柴崎の両足は宝箱だ。開ければものすごい光を発する。必ず日本代表に選ばれる非凡な才能を、何とかして輝かせることだけを考えている」

こう語ったのは、アントラーズのトニーニョ・セレーゾ前監督だ。左右両足から繰り出される良質なパスから華麗なプレースタイルを思い浮かべるが、柴崎が他の選手と一線を画すのは別の部分にある。

柴崎岳 参考画像(2015年5月5日)

米子北高校から柴崎と同じ2011シーズンにアントラーズへ加入。ポジションこそ違うものの、お互いを意識しながら切磋琢磨してきたDF昌子源から、こんな言葉を聞いたことがある。

「(柴崎)岳があそこまで走るから、俺らも走れる。岳は間違いなくアントラーズを支える心臓。フィジカル練習ひとつ取っても、岳がいるから俺たちも『しんどい』とか『疲れた』とか言えないんです」

■2年後のW杯ロシア大会にかける思い

最終的にはロナウドにハットトリックを達成され、延長戦の末に2‐4で屈した決勝の直後のこと。手応えよりも悔しさのほうがはるかに大きいと、柴崎は終わったばかりの120分間を振り返っている。

FIFAクラブワールドカップ、レアル・マドリードが世界一に(2016年12月18日)

「チームとして通用した部分もあります。ただ、結果だけにとらわれずに、細かく見ればやっぱり差はあると思うので、そういうところを一つひとつクリアにしていく作業は追々していきたい」

柴崎にとっては2014年10月、ハビエル・アギーレ前監督に率いられた日本代表の一員として臨んだ、王国・ブラジル代表との国際親善試合以来となる“世界”との邂逅だった。

このときは後半開始早々に自身のトラップミスを拾われ、電光石火で仕掛けられたカウンターから、最後はFWネイマール(バルセロナ)にゴールを決められる手痛い授業料を支払った。

「ああいう選手(ネイマール)がいるチームと対峙することや上回ることを、常に目指していかないと。並大抵の成長速度では僕の現役時代のなかでは対応できないと思うので、自分のトップフォームの期間のなかで、成長速度をあげながらやっていく必要があるのかなと思う」

痛感したのはただ単に上手いだけではなく、強さをも兼ね備えていなければ“世界”では戦えないこと。成長速度をあげたいという思いは、レアル・マドリードとの真剣勝負を経てさらに増幅された。

「パスの1本1本が重いし、味方にとって受けやすいパスを出している印象があった。ポジショニングも非常に細かかったし、非常にディフェンスのしづらい攻撃でした。まだまだやらなければいけないことはたくさんあるし、むしろ大変なのはこれからなのかなと思います」

FIFAクラブワールドカップ決勝、レアル・マドリード対鹿島アントラーズ(2016年12月18日)

球際における攻防で物足りない、と思われているのか。フランス語で「決闘」を意味する『デュエル』を求めるバヒド・ハリルホジッチ監督に率いられる日本代表には、長く招集されていない。

それでも、現役の選手である以上は日の丸にこだわる。出場資格のあった2012年のロンドン五輪をはじめ、なかなか大舞台に縁のなかった柴崎から、こんな言葉を聞いたこともある。

「次のワールドカップでは26歳。すごくいい年齢で迎えられると思うので」

掲げる目線が高いからこそ、目の前の出来事に一喜一憂しない。決勝戦での大活躍で周囲はヨーロッパ移籍へ向けてかまびすしいが、柴崎自身は地に足をつけながら、課題をひとつずつ塗り潰していく作業に集中していく。
《藤江直人》

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