プロトレイルランナー・鏑木毅「50歳まで世界トップレベルで戦いたい」単独インタビュー 2ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

プロトレイルランナー・鏑木毅「50歳まで世界トップレベルで戦いたい」単独インタビュー

スポーツ 選手
プロトレイルランナーの鏑木毅選手
  • プロトレイルランナーの鏑木毅選手
  • プロトレイルランナーの鏑木毅選手
  • プロトレイルランナーの鏑木毅選手
■“休憩”で心がけていること

---:スポーツシンポジウムでは「勝つための“質の高い休息”」という話もありました。休憩するときに心がけていることはありますか?

鏑木:短期的に言えば、食事はすぐ摂取する。良質なタンパク質を(体が)ダメージを受けたらすぐに摂ること。あと気がせってくると練習練習って自分を追い込みがちになるので、心を鬼にしてしっかり休む。休むのが恐怖の時がある。結果を出さなければと思うと、休むことが出すべき結果から一歩下がるような感じがして、休めない自分が出てくる。

そうじゃなくて休むことで1回落としておいて、そこから超回復させる気持ちを常に頭にインプットして。その意識を強くもたないとまずいなと、その意識を変えたりしましたね。

---:1週間でこの日は休むとかあるんですか?

鏑木:決めていなくて、体が欲する時ですね。起きた時に心拍数がちょっと高いとか、疲労熱といって少し微熱があるような、体温が高くてダルさで気持ちが乗らない時は、予定していたスケジュールがあっても流して、体の声を正直に聞く。スケジュールがあっても自分の反応がダメだと思ったらキッパリ諦めて練習をしない。自分の体の声を素直に聞く耳を持つ、反応をよく見る、それが重要かな。

---:ディスカッションで「やる気の育て方」という話題がありました。疲れがたまると練習のやる気もなくなると思います。以前は仕事をしながらトレイルランナーとして活動していた鏑木さんは、そんな時どうやってやる気を出していましたか?

鏑木:僕はワクワクする気持ちになるようにモチベーションを持っていく。走ることで自分が知らないステージ、高みに行くことで、見れない世界を見ることができるワクワク感。前向きに、ネガティブに考えずに。疲れてくるとネガティブになってくるじゃないですか。ワクワクする気持ちを起こすことが重要で、義務的になったりするのが一番よくない。

僕自身にとって山を走ることは好きなことなので、(気持ちが)自然に出てくるというか。平日は地味なトレーニングをするんですよね、階段を上ったり、アスファルトでスピードトレーニングをしたり。でも、自分が山で楽しめるために、そのための準備だとか、そういうことを考えながら。

ポジティブにワクワクする気持ちを常に思い出す、僕はそういうところかな。

■クマにも出会ってしまうトレイルラン

---:山を走るトレイルランニングだからこそ、というエピソードがあれば教えてください。

鏑木:世界中のレースで、見たことがない景色を見られたり、絶対に観光では行かないような所を走ったり、そういう喜びがすごくあります。トレイルランニングは山でやるスポーツなので、装備を持っていかないといけない。その装備を持っていかなかったとか、壊れたとか、そういうアクシデントは多いですね。あと会いたくない動物に会ったこともあります(笑)。

---:クマとかですか?

鏑木:クマには5回ぐらい会っています。その内3回は直面しました。あとアメリカに行くとマウンテンライオン(ピューマ)と言う動物も。僕は会ってはいないけど、そういう動物が出るような危ないエリアを走ったりもしました。

---:レース中に困ったトラブルなどありますか?

鏑木:ヘッドライトのトラブルですね。夜間を走るレースにも出るので、壊れたら真っ暗闇ですからね。あと補給を失敗した時。ジェルと言う補給食を持って行くのですが、山に入ってエイドステーション(補給所)に降りてくるけど海外だと道もわからない。思った以上にエイドステーションまで長くて、途中で食料が切れた時もありました。

---:どんどんエピソードが出てきそうですね。

鏑木:色々ありますね、自然のなかでやるスポーツなので。苦しいけど景色に助けられる時もあったり、奥が深いスポーツですね。

---:160km走る時は何を考えているんですか?

けっこう戦略的なことをずっと考えていますね、補給をどうするかとか。30分に1個ジェルを摂らないといけないので、ここで摂るべきかとか、胃腸の調子はどうだとか、ペース配分はどうかとか。意外にボーッとしている時間はあるようでない感じ。

---:景色を見ている余裕は?

鏑木:あります。あとトップ選手同士で(走りながら)会話したりしていますね。そんなにペースが早くないので、世間話みたいな、終わったらビール飲もうかとか、あの山なんて言うの?とか。でも100kmを越えてくると意識がだんだん飛んでくるので、幻覚とか見ながらね。そこを乗り越えるためのメンタルコントロールですかね、無理矢理楽しむんだとコントロールすることはけっこうやってますね。

【次ページ トレイルランはオリンピックになるのか?】
《五味渕秀行》

編集部おすすめの記事

page top