【THE REAL】身内への甘さと自浄能力の欠如。八百長騒動で露呈した日本サッカー協会の旧態依然 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】身内への甘さと自浄能力の欠如。八百長騒動で露呈した日本サッカー協会の旧態依然

オピニオン コラム
日本サッカー協会がアギーレ監督の解任を発表(c)Getty Images
  • 日本サッカー協会がアギーレ監督の解任を発表(c)Getty Images
  • 日本サッカー協会がアギーレ監督の解任を発表(c)Getty Images
  • 日本サッカー協会がアギーレ監督の解任を発表 大仁会長(c)Getty Images
日本サッカー協会は、組織としての体をなしていないのではないか。日本代表のハビエル・アギーレ前監督を解任した後の対応を見ていると、懐疑的な視線を向けられずにはいられなくなる。

電撃解任から9日後の12日。月例で開催される理事会が東京・文京区のJFAハウスで行われ、アギーレ前監督との契約に至った経緯、八百長疑惑が表面化した後の日本協会の対応、解約解除に至った判断の三点に対する是非が審議された。




■アギーレ選出、責任の所在はどこに

理事会は日本協会における最高議決機関で、どのような議題に対しても最終的には理事会の意思が反映される。結論から先に言えば、三点に関して大仁邦彌会長、アギーレ前監督の招聘に携わった原博実専務理事と霜田正浩強化担当技術委員長に対して「責任はない」と結論づけられた。

契約に至った点とは、いわゆるアギーレ前監督の「任命責任」となる。交渉が合意に達した約3カ月後にスペインの一般紙『アス』で八百長疑惑が初めて報じられたことと、スペイン検察庁の反汚職課が水面下で調査してきたことを勘案すれば、「事前に八百長疑惑を予見するのは難しかった」とする理事会の結論はある意味でうなづける。

契約解除に至った判断は、前回のオピニオンでも記したように最初にして最後のタイミングだった。ゆえに理事会が出した結論に異論はないが、二つ目の疑惑表面化後の日本協会の対応については、特に大仁会長のリーダーシップの欠如が俎上にあがらなかった点が不思議でならない。

■トップの判断開示、その時期と重要性の認識は

スペインの検察当局がアギーレ前監督を含む41人とひとつの法人を告発したのが、日本時間の昨年12月15日深夜。一夜明けてメディアに対応したのは西澤和剛コミュニケーション部部長(当時)と、日本協会の法務委員長を務める弁護士の三好豊理事だけだった。

大仁会長が初めて公の場に姿を現し、メディアに対応したのは3日後の12月18日。もっとも形態は、フットサル日本代表の国際親善試合が行われた東京・駒沢体育館内での囲み取材だった。年末に行われたアギーレ前監督の釈明会見にも、大仁会長は同席していない。

公式な記者会見に臨んだのは、1カ月という時間が経過した1月15日。このときも告発状がバレンシアの裁判所に受理されたという一報が飛び込んできたことを受けての対応で、何もなければ大勢のメディアを前にしてひな壇に座ることもなかったはずだ。

表現は悪いかもしれないが、時間が経過するのをひたすら待っているだけのように見えてならなかった。あくまでも結果論だが、大仁会長が毅然とした態度で日本協会の方針や今後取り得る対応を早い段階で示していれば、八百長疑惑騒動がいたずらに拡大することも、日本代表チームを取り巻くイメージが大きくダウンすることもなかったはずだ。




■最高議決機関、形骸化への危惧

第三者から見れば後手を踏み続けたと映る日本協会の対応も、日本協会の身内から見れば問題なしなしとなる。理事会でのやり取りを、三好法務委員長はこのように振り返っている。

「疑惑レベルで打つべき点はすべて打った、むしろ難しいかじ取りを求められるなかでよくやったという肯定的な意見が出ました」

これまでにも同じパターンが繰り返されてきた。グループリーグで1勝もできない惨敗を喫したワールドカップ・ブラジル大会の総括も分析も何もないまま、大会期間中にアギーレ前監督招聘が内定したときも、理事から「あまりに拙速だ」という異論や批判は出なかった。

八百長疑惑が告発された直後に行われた昨年12月の理事会では、冒頭で大仁会長からアジアカップでも引き続きアギーレ前監督に指揮を執らせることが報告された。日本協会としてアギーレ前監督に緊急のヒアリングを実施し、問題ないと判断したことが理由とされたが、ここでも理事から反対意見は出なかった。

最高議決機関が形骸化し、単なる追認機関となっていた感は否めない。今回の理事会でも「何らかのペナルティーを科すべきというのならば言ってほしい」という大仁会長の提案に対して、責任なしで幕引きとしたいとする結論が出された。

もし異論や反論を唱えれば、これまでの理事会で何も言わなかったではないかという批判がブーメランのように跳ね返ってくることも考えられる。理事の間に自分自身を可愛がる保身の意識が働いていたとすれば、自由闊達に議論を交わす雰囲気はまず生まれないし、これからも同じような問題が繰り返されるだろう。組織としての体をなしていない、と冒頭で疑問を呈した理由がここにある。

■大仁会長ら給与「自主返納」に見る、組織体質

理事会で責任なしとされた後に大仁会長、原専務理事、霜田技術委員長が4カ月間にわたる給与の自主返納を申し出て了承された。原専務理事と霜田技術委員長の30%に対して50%を返納する大仁会長は、その理由をこう説明している。

「選手やサポーター、スポンサー、そして関係者に心配や迷惑をかけた。私の責任が一番重いということです」

誰に何の心配や迷惑をかけたのか。一連の過程で第三者が募らせたのは、日本協会に対する失望感だけだ。そもそも、大仁会長自身が「責任」の二文字を明言するのならば、自主返納ではなく理事会主導による「減給処分」が妥当だったのではないか。

日本サッカー界が悲願として掲げてきたプロ化に踏み切って20年あまり。数多くの選手がヨーロッパを中心とする海外でプレーする状況が生まれた一方で、国内の頂点に立つ日本協会が自浄能力に著しく欠け、我が身可愛さから身内にも甘くなる、旧態依然とした組織であることが図らずも浮き彫りとなった。
《藤江直人》

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