ちょっと早い帰省客も乗る、8月アタマの東北新幹線でのこと。上野から乗り込む人々の中に「輪行男」がいた。年の頃、20代の前半あたりだろうか、困ったことに、この輪行男、例の「外すのは前輪だけ」スタイルで乗り込んできたものだから、もう、ほかの乗客に邪魔で仕方がない。
そりゃそうだよ。前輪外しただけだと、完成車と30cm程度しか長さ変わらないんだから。おまけに写真を見れば分かるけど、自転車の後半が「頭隠して尻隠さず」状態になっている。もう自転車だとバレバレで(しかも恐らくDHバー付きだ)乗客によっては「ちっ、自転車なんか載せてるよ」と舌打ちしてる。
男、すいません、すいません、と恐縮しながら(たぶん悪いヤツじゃないんだろう)デッキに置こうとするんだが、その後から乗客が中に入れない。縦にしたり斜めにしたりして、ようやく人々客車に入り、新幹線はホームを出た。
誰が始めたのか知らないけれど、この「外すのは前輪だけ」スタイルはよくないね。数年前から思っていたけど、いまやハッキリそう思う。体裁だけ「一応、袋に詰めました」「一応、一部(だけ)分解しました」というばかりで、現実、小さくならんのだから。
実際に迷惑。このままでは「輪行禁止」なんてことが言われかねない。自転車への風当たりが激しくなってきてる昨今、その可能性はなくはないのだ。
若い人々(今回の彼もそうだね)は知らないかもしれないが、輪行というのは、70年代、日本サイクリング協会(JCA)が当時の国鉄に認めさせた、ひとつの成果なのでありましてね。その際「他の乗客に気づかう」「自転車を極力小さくたたむ」などのマナー遵守を誓った上で、その証明としてJCAの会員証を提示したものだ。その後、JRの民営化にともない、一般にもフリーになったのだけれど、いわゆる「自転車ブーム」だからこそ、そうした先人の努力を無にしないようにしたいと思う。輪行は、極力、他者の邪魔にならないように。少なくとも、前後輪を外すくらいのことはした方がいい。
《疋田智》