
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カーボンフレームが進化し、快適性と動力性との両立を可能としている現在、クロモリロードフレームの乗り心地がいいというのはもはや幻想に近いのかもしれない。このジェイミス・クエストにもしっかりとした振動が伝わってくる。しかし、ショックをブルンブルンといなしながらギャップを乗り越えていく特有の走行感が、未だにクロモリフレームが愛される理由の一つだ。快適性を重視したカーボンフレームは細かな振動を消し去ってしまう。踏んだ時の反発がやわらかく、なおかつバネ感があって体に負担がかからないというクロモリの味は、クロモリにしかない。
バイクの重量と長いリアセンター・長いホイールベース、素材のしなやかさによってもたらされていると思われる安定性は特筆モノ。クエスト一番の持ち味はここだろう。ダウンヒルやコーナリング中に外乱を拾ってもびくともせず、挙動は安定したまま方向性は乱れない。重いがしっかりとしたホイール、マヴィック・アクシウムもその安定性に貢献している。少しのギャップでもパーンと弾かれてしまう軽量ホイール&軽量バイクだとこうはいかない。そういった意味でも、ビギナーに安心してオススメできるバイクの一台である。
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バイク全体のバランスを重視したのだろう、フォークはソフトだ。ハンドルを大きく振ってのダンシングでは左右によじれる感覚を受けるが、フォークだけを強化してもバランスが崩れて進まないバイクになってしまうだろうし、このフレームにはこのくらいがちょうどいい。このクエストで登坂タイムを秒単位で削ることに執念を燃やしたり、ダウンヒルを限界までギンギンに攻めたりするライダーはまずいないだろう。
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
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針のように細いシートステーとチェーンステー、華奢なメインチューブ、ノーブルなカラーリングは飽きが来ず、長く付き合えそうな一台である。最初は気に食わなかったスローピングジオメトリも、ヘッドチューブを長くとることによって無理なくハンドル位置を高くできるという、雰囲気よりも実用性を重視したであろう設計に好感が持てるところだ。リラックスしたポジションで走れるのでビギナーには最適だ。脚への反発も少なく、イージーライドやサイクリングにもいい。
間違ってもこれでレースに出ようとは思わない。乗り手の実力が全く同じなら、最新レースバイクに負けることは目に見えている。闘うバイクではない。レーシングロードバイクが肉食動物なら、このクエストはしなやかな肢体と優しい表情を持った草食動物である。水平線を目指すようなロングライドや、マイペースで情緒ある町並みを巡るツーリングに使ってみたい。
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このバイクの性格を予想して、インプレライドの目的地を海にしてよかった。青い海をバックにタイトル用の写真を撮って、一息ついて、爽やかな陽光の中で久しぶりの潮風を胸いっぱいに吸い込むと、クエストのカラーリングは晴れた海辺にこそ似合うことに気付く。
ロングライド向けのバイクというものは、「目的地まで快適に楽に到達する」 という移動手段としてだけでなく、移動そのものをじっくりと楽しめるファンバイクであるべきだ。このジェイミス・クエストのように。
再び細いフレームにまたがって家に向かって走り出すと、ジワリと粘るフレームが脚力を受け止め、クエストはしっとりと優しい加速を始める。
「ギスギスしたバイクに疲れたら、いつでも乗りにおいで」
そう言われているようで、なんだか温かい気分になれる。
僕は、乗る前にうんざりしていたことなどすっかり忘れてしまうのだ。
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