【THE ATHLETE】錦織圭が見せた成長の証、7度の敗戦を糧にマレー撃破 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】錦織圭が見せた成長の証、7度の敗戦を糧にマレー撃破

オピニオン コラム
錦織圭が全米オープン4強入り(2016年9月7日)
  • 錦織圭が全米オープン4強入り(2016年9月7日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年9月7日)
  • アンディ・マレー 参考画像(2016年9月7日)
  • アンディ・マレー 参考画像(2016年9月7日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年9月7日)
  • アンディ・マレー 参考画像(2016年9月7日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年9月7日)
  • 錦織圭(左)がマレーに勝利して全米オープン4強入り(2016年9月7日)
全米オープンテニスで9月7日、男子シングルス準々決勝が行われた。第6シードの錦織圭は第2シードのアンディ・マレーと対戦し1-6、6-4、4-6、6-1、7-5で勝利。3時間57分の激闘を制して準決勝に進んだ。

「意識しすぎた」と言う第1セット、錦織はファーストサーブが入らず苦しみ、ラリーでも攻め急いでポイントを落とす悪い流れに乗ってしまう。

マレーは過去1勝7敗と大きく負け越し、直近の対戦でもデビスカップとリオデジャネイロ五輪の準決勝で敗れた相手。意識するなというのは難しい話だった。

■降雨中断が流れを変える

試合の流れが変わったのは第2セット。錦織のサービスゲームで雨が降り始め、開閉式の屋根を閉めるため試合が一時中断。この間にコーチと話し、頭を切り換えた。

「出だしがあんまり良くなかった。すごくミスが多くて狙いすぎていた部分もあった。なるべく落ち着いて2、3セット目からはドンドン打っていけた。長いラリーもわざとではないですけど、ちょっと耐えるように頑張ってプレーするように心がけていました」


錦織圭 (c) Getty Images



アンディ・マレー (c) Getty Images

その言葉通り再開後の錦織は無理な攻め急ぎや、すぐにでもポイントがほしいという焦ったプレーが減った。心は熱く、頭は冷静にマレーをネット越しに追い詰める。

息を吹き返した錦織だがマレーも百戦錬磨の強者。第3セットの第1ゲームをブレークし、すぐに流れを自分へ引き寄せる。このセットは錦織が2回、マレーが3回相手のサービスゲームをブレークする激しい攻防の末にマレーが取った。

■気持ちを乱したマレー、自分をコントロールした錦織

セットカウント1-2で後はなくなったが、それでも勢いは錦織にあった。今大会ここまで粘られたことのないマレーは、連戦の疲れもあり苛立ちを隠せなくなってくる。

それが顕著に表れたのは第4セットの第3ゲーム。錦織のサービスゲームでマレーはブレークポイントを握っていた。勝負に大きく影響する大事なポイント。行き詰まるラリーが展開される最中、会場の音響装置が『ヴォン』といった音を発する。試合前の練習中から見られた機械トラブルだ。


錦織圭 (c) Getty Images

プレーのやり直しを命じられたマレーが激昂。激しく心を乱す。対する錦織は冷静に、起こったことをあるがままに受け入れながら気持ちを次のプレーに向けていた。この混乱に乗じて錦織が一気にセットを奪い返しセットカウント2-2に並ぶ。

「多くのアップダウンがあったけど冷静でいようと思った。今日やったことで一番重要なのはそれだと思う」

マレーのメンタルに乱れが見える第5セット。錦織は第1ゲームでブレークに成功した。だが第4ゲームをブレークバックされ追いつかれると、1ブレークアップで迎えた第8ゲームでも再びブレークバック。特に第8ゲームは40-0から追いつかれてのダウン。


アンディ・マレー (c) Getty Images

一気に流れがマレーへ傾いてしまいかねない展開だったが、この瞬間も錦織は自らを律していた。

「本心はかなり落ち込んでましたけど反省は試合のあとにして、いまできることを頑張ろうと。ブレークのチャンスもくると思っていたので、最後まで諦めずにできて良かったです」

錦織に勝機が訪れたのは第11ゲーム。マレーのミスでブレークポイントをつかむと仕留めきってブレークに成功。第12ゲームをキープして勝利した。

■勝負所で発揮した冷静な積極性

この試合で錦織はアンフォーストエラーを60本記録している。マレーが46本だから多くも感じられるが、ウィナーの数でもマレー29本に対し錦織は48本と上回った。

第3セットまでウィナーの数は錦織25本、マレー21本。これが第4セット以降は錦織23本、マレー8本と大きな差がつく。

アンフォーストエラーの数も第3セットまでは錦織39本、マレー21本。だが第4セット以降になると錦織21本、マレー25本で逆転する。

アンフォーストエラーを4本に抑えた第4セットも、決して錦織は消極的なテニスをしたわけではない。ネットへも積極的に出てポイントにつなげている。ただ前半にあったような無理な攻め、マレーに『打たされる』形でのショットをなくした。自分自身のコントロールを取り戻した。

試合中の立て直しが可能だったのは多くの訓練と経験を積んできたからだろう。当然その経験には過去、マレーに喫した7敗も含まれている。負けたことも糧にしながら成長したからこその勝利だ。


錦織圭がアンディ・マレーに勝利 (c) Getty Images




《岩藤健》

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