【スーパーフォーミュラ】第7戦 地元もてぎ初勝利、地元小学生424人を前に山本尚貴に吹いた風 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【スーパーフォーミュラ】第7戦 地元もてぎ初勝利、地元小学生424人を前に山本尚貴に吹いた風

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【スーパーフォーミュラ】第7戦 地元もてぎ初勝利、地元小学生424人を前に山本尚貴に吹いた風
  • 【スーパーフォーミュラ】第7戦 地元もてぎ初勝利、地元小学生424人を前に山本尚貴に吹いた風

モビリティリゾートもてぎで20日、ワンデー開催の2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦が行われた。

事前に予想していた優勝候補は、今季ここまで圧倒的な速さ見せ続けランキングトップをひた走る野尻智紀(チーム無限)、波があるものの今季2勝の実績がありもてぎに強い平川亮(インパル)、前戦の初優勝で速さに加え勢いもつけた笹原右京(チーム無限)の3人。ところが蓋を開けてみれば、優勝はやや予想外のドライバーだった。2013年、2018年、2020年と3度のタイトル獲得の実績を持ちながら、チームを移籍した昨季から不調が続いていた山本尚貴(ナカジマレーシング)だ。

【実際の映像】土砂降りの中、激走するスーパーフォーミュラ・マシン

■山本は地元・作新学院出身

山本はもてぎから近い栃木県宇都宮市にある作新学院高等部の卒業生で、今回その小学部の生徒424人をサーキットに招待していた。その子どもたちの前で2年ぶり、そして地元もてぎでの初勝利を見事に飾った。子どもたちが一番見たかったのは山本の優勝に違いないが、ここは勝負の場。ライバルたちが今回だけは、と勝ちを譲ってはもちろんくれない。したがって優勝は山本とチームの実力でしかないのだが、それを後押しする風が吹いたことも確かだ。

まずは予選。Q1を見る限り、B組で2位にコンマ3秒差をつけトップ通過した野尻が最も速そうだった。

ところがQ2で波乱が起きる。12台すべてが終盤のワンアタックを狙いに行った結果、その前の周回でポジションを一斉に駆け引きしあい大渋滞が起きてしまったのだ。そして予選A組トップの笹原がチェッカー前にアタックに入れず。集団に埋もれてしまった野尻も4位に終わり、予選ポイントを獲得できなかった。ポールは今季、特に予選の結果が悪かった山本。「正直、なぜポールが獲れたのか分からない」と予選後語っていたが、トラフィックを回避できていた数人の中のひとりが山本だった。

決勝で山本の勝利を後押ししたのは、スタート直前に降り始めレース中も止まなかった雨だ。ウォームアップ走行までは路面はドライで、いきなりウェット走行となることで安全のためにレースはセーフティカースタートとなった。このためスタートで大きな順位変動はなく、山本もトップをまずはキープ。前を誰も走っていない、最も視界が良い状況で走ることができる山本は以降も有利にレースを進めた。

そして、雨量がほぼ変わらないままレースは中盤へ。このあたりから状況を変えようと中団グループでは思い切ってオーバーテイクをしかける場面も見られたが、大湯都史樹(ナカジマレーシング)のマシントラブルにより3位に浮上した野尻はもちろんリスクを冒すことはなく、優勝が欲しかったはずの2位フェネストラズもバイザー内に雨が入り、前が見難かったことで攻め手を欠いた。山本にとって唯一のピンチが残り10周のタイミングで出たセーフティカーだったが、ここもリスタートを無難に決めるとトップのままチェッカーまで走り切った。

「諦めずに努力を続けていけば必ずチャンスは訪れる」とのメッセージを子どもたちに送っていた山本は、言葉だけでなく現実を見せてその言葉を証明した。勝因について記者に聞かれ、山本は「経験と我慢強さがカギを握ると考えたレースで、失敗がなかったこと。あとは、勝つためにタイヤマネージメントを努力し続けた。でもそれは今までもずっとやってきたこと」だと答えた。

トップからスタートできたことは確かに幸運もあっただろうが、もしそうだとすればレースで最後まで守り切るのは余計に困難だったはず。それをやり遂げられたのはやはり、ドライバーになってからここまでずっと続けてきた努力、そして成績が低迷しても再び優勝できると信じ続けていたから他ならない。これほど説得力のある言葉は滅多に聞けない。きっと、子どもたちの未来への大きな力となったことだろう。

◆第6戦、波乱のレースで笹原右京が初優勝 王者・野尻智紀の首位は揺るがず

◆第5戦、野尻智紀が4戦連続PPでランキング1位堅持  一発の速さが王者決定に影響する熾烈な予選を見よ

◆第4戦 KONDO RACINGのサッシャ・フェネストラズがSF初優勝 PP野尻智紀はジンクス破れず3位

著者プロフィール

前田利幸(まえだとしゆき)●モータースポーツ・ライター

2002年初旬より国内外モータースポーツの取材を開始し、今年で20年目を迎える。日刊ゲンダイ他、多数のメディアに寄稿。単行本はフォーミュラ・ニッポン2005年王者のストーリーを描いた「ARRIVAL POINT(日刊現代出版)」他。現在はモータースポーツ以外に自転車レース、自転車プロダクトの取材・執筆も行う。

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