【インタビュー】野中生萌「クライミングで人間力が上がった」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インタビュー】野中生萌「クライミングで人間力が上がった」

スポーツ 選手
プロフリークライマーの野中生萌(2017年5月20日)
  • プロフリークライマーの野中生萌(2017年5月20日)
  • ップ八王子大会、決勝の第3課題を完登した野中生萌(2017年5月7日)
  • ップ八王子大会、準決勝の課題に挑む野中生萌(2017年5月7日)
  • ップ八王子大会、決勝の課題に挑む野中生萌(2017年5月7日)
  • 『三井不動産クライミングパーク for TOKYO 2020』で野中生萌ら日本代表選手によるクライミングアカデミーが開催(2017年5月20日)
昨年はクライミング世界選手権で銀メダルを獲得、ワールドカップ(W杯)年間ランキング2位とボルダリングで躍動したプロフリークライマーの野中生萌(みほう)選手。

5月に開催されたボルダリングW杯八王子大会が大盛況で幕を閉じたことに、「去年と比較して、チケットの売り切れが起きるなど多くの人が集まり、クライミングが広がっていることを感じます」と喜びを見せる。

スポーツクライミングが2020年東京五輪の正式種目に採用されたことで、メダル候補としても注目を集める野中選手に話を聞いた。(聞き手はCYCLE編集部・大日方航)

野中生萌選手

---:野中選手は初めてクライミングをした時の感覚を覚えていますか? 9歳のときにお父さんの登山に着いていって、クライミングに出会ったそうですね。

野中生萌選手(以下、野中):強く覚えています。もともと体を動かすのは好きで、公園のアスレチックで遊ぶことと同じ感覚でした。単純に楽しいな、と。高いところからの景色も綺麗ですし。

競技になると誰かと競わなければいけないし、自分との戦いもあるので純粋に楽しさだけではありません。でも初心に帰って、「クライミングは楽しい」という感覚があるから辞めずに続けていられるのだと思います。

---:これからクライミングを始めてみようとする人もいると思います。クライミングに向いている性格、体格などはありますか?

野中:実際に選手を見ればわかりますが、選手一人ひとりによって体格や身長、メンタルも違います。ですから、こうだから(クライミングが)できる、できないというのはないと思います。どんな人でもできるのがクライミングのいいところです。

ボルダリングW杯八王子大会は3位で表彰台に

---:競技を観戦するときはどんなところに注目すると楽しめるでしょうか?

野中:初めて観戦される方はホールドやルートの難易度はわからないと思いますが、選手の登り方の違い、「こうやってもいけるんだ」という見方ができると面白いと思います。

---:2020年東京五輪の正式種目にスポーツクライミングが選ばれましたね。

野中:私が始めたころは周囲にクライミングジムもなく、選手もいなかったので、(五輪種目への採用に)びっくりしたし、信じられなかったです。クライミングは楽しいということを多くの人が共感してくれているからこそ、広がっているのだと思います。その反面、競技化されたことによりさまざまなルールなどで縛られていくのは残念です。

2017年5月に20歳の誕生日を迎えた野中選手

---:五輪への手ごたえは?

野中:3種目(※)あるので大変だという思いもあります。ボルタリングに関してはトップに近い位置にいるので、そこは自信を持って伸ばしていきたいです。あとは練習を積んで…。

※五輪でスポーツクライミングは「ボルダリング」「リード」「スピード」の3種複合競技として行われる。ボルダリングは4~5mの壁を使い、複数の課題をこなして完登できた数を競う。リードは12m以上の壁をロープで安全確保しながら登り、登った高さを競う。スピードは15mの壁を2名同時にスタートして、登る速さを競う。

---:日本ではまだなじみの少ない「スピード」に関してはどういった意識を抱いているでしょうか。

野中:私はスピードが好きで、やっていて楽しいです。そもそもリードも得意なわけではないので、(東京五輪で)リードやボルタリングに懸けるという戦い方はできません。全体的に力を上げられたらと思っています。

『三井不動産クライミングパーク for TOKYO 2020』で子どもたちに指導

---:クライミングをしていて人生に役立ったことはありましたか?

野中:何事も諦めないこと。ひとつのことについてよく考えるようになりました。どうしたらいいのかと、熱くいっても冷静さを残しつつ、客観的に見たりとか。クライミングを通して人間力が上がった気がします。私生活でも、何を取り組むにも最初から無理だと決めつけずに挑戦するようになりました。

---:今後の目標を教えてください。

野中:クライミング界で一番強い選手になりたいです。肉体的にも、精神的にも。人間としても、色々な人から憧れられる選手になりたい。努力すること、諦めないことです。

●野中生萌(のなか みほう)
1997年5月21日生まれ、東京都豊島区出身。東京都山岳連盟所属。スポーツクライミング日本代表(ボルダリングS代表、リードB代表)。2016年からKDDI株式会社が結成した「TEAM au」のメンバーとしても活動。2013年からクライミングW杯に参戦。当初はリードだったが2014年からボルダリングにシフトし、同年6月のW杯フランス・ラヴェル大会で初表彰台の2位に。2016年は5月のW杯インド・ナビムンバイ大会で初優勝を飾り、8月のW杯ドイツ・ミュンヘン大会で2勝目を挙げ、9月の世界選手権パリ大会で銀メダルを獲得した。ボルダリングW杯年間ランキングは2014年5位、2015年3位、2016年2位。
《大日方航》

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