【THE REAL】浦和レッズ・駒井善成が研ぎすます「伝家の宝刀」…必殺ドリブルで悲願の年間王者へ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】浦和レッズ・駒井善成が研ぎすます「伝家の宝刀」…必殺ドリブルで悲願の年間王者へ

オピニオン コラム

駒井善成 参考画像(2016年5月25日)
  • 駒井善成 参考画像(2016年5月25日)
  • 駒井善成 参考画像(2016年5月25日)
  • 駒井善成 参考画像(2016年3月2日)
  • 駒井善成 参考画像(2016年5月18日)
右タッチライン際をドリブルで駆けあがりながら、浦和レッズのMF駒井善成は後半のキックオフ前に、チームメートからささやかれた言葉を思い出していた。

「奥までえぐったときは、ふんわりしたヤツでもいいから上げてくれ。そうしたら、オレたちのほうが絶対に勝つから」

ゴールライン付近まで侵入したときは山なりのクロスを――レッズのワントップ・興梠慎三から、変幻自在かつ高速のドリブルを武器とする駒井へ託された、ゴールへの青写真は後半27分に現実のものとなる。

駒井善成 参考画像
(c) Getty Images

ジュビロ磐田のホーム、エコパスタジアムに乗り込んだ10月29日のJ1セカンドステージ第16節。引き分け以上でレッズのセカンドステージ制覇が決まる一戦は、両チームともに無得点のまま推移していった。

前半から主導権を握り、猛攻を仕掛けるレッズ。残留争いに巻き込まれているジュビロも懸命に守る。パスワークでなかなか崩せない状況で、駒井はいまこそ自らの存在意義を見いだそうとしていた。

「1対1の局面で勝つのが僕の仕事。どれだけパスをつないでコンビネーションで攻めても、簡単に決定的なチャンスを作れるほど甘い試合はここにきてほとんどないので。ましてや相手も残留に向けて必死ななかで、1対1のところで勝つことを、僕と関根(貴大)がどれだけ見せつけられるか。そうしなきゃダメだということは、関根ともよく話していました」

■ギアをトップにあげて相手を置き去りに

レッズのフォーメーションは、攻撃時には「3‐4‐2‐1」から「4‐1‐5」へと変わる。そして「5」の左右両翼を担ったのが、ジュビロ戦では21歳の関根と24歳の駒井のドリブラーだった。

ドリブルで相手を置き去りにする、いわゆる「はがす」というプレーを成功させれば、それだけ相手守備網に綻びが生じる。ボールを失うリスクもあるが、危険を冒す分だけ成功したときの見返りも大きい。

見返りとは、もちろんゴール。ハーフウェイライン付近でDF森脇良太からパスを受け、前を向いた駒井は途中出場で投入されたばかりのFW李忠成が右タッチライン際に張っていることに気がつく。

おそらくはこの瞬間、背番号18は「勝負のときだ」と判断したのだろう。ドリブルでボールをもち運び、まずは李へ縦パスを預ける。DF森下俊のマークを受けながら、李が巧みにボールをキープする。

その間に駒井は李の内側を駆けあがり、短い横パスを受け取る。背後からはMF齊藤和樹が、正面にはキャプテンのMF上田康太が立ちはだかる状況に、駒井はむしろ心を躍らせていた。

「一発で試合を決定づけることができる!」

ボールをもってから意図的にドリブルのスピードを落とし、齊藤と上田を引きつける。そのうえで一気にギアをトップにあげて、縦へ抜け出す。案の定、ふたりは瞬時にして置き去りにされる。

上田だけは必死に追走してきたが、右タッチライン際を駆け抜けていく駒井との距離を縮められない。そして、視界にゴールラインが映ってきたときに、興梠から託されたミッションを遂行する。

「とりあえずニアの選手だけには引っかからないように。(興梠)慎三さんに言われたようにしようと」

目の前に立ちはだかった180センチのセンターバック、大井健太郎が飛び上がっても届かない山なりのクロスは、その時点で味方がいなかったマイナスの方向へ緩やかな放物線を描いていく。

駒井善成 参考画像
(c) Getty Images

次の瞬間、もうひとりのセンターバック・藤田義明にマークされていたMF武藤雄樹が離れるように、ゴールとは反対の方向へバックステップを踏みながら、クロスの落下点へ向けてジャンプする。

宙を舞いながら、それでも武藤は隙が生じていたゴールの左隅から目を離さない。しっかりと首を振って額の分部をヒットさせ、狙いを定めたコースへボールの軌道を変える。

好守を演じてきたポーランド出身の守護神、カミンスキーが必死にダイブするも届かない。ジュビロの戦意を萎えさせ、ステージ優勝を手繰り寄せる一発をアシストした駒井は、武藤への感謝を真っ先に口にした。

「トップスピードで(ゴールライン際まで)入っていったので、実は武藤君のことがばっちりと見えていたわけではないんです。ほとんど点という状態で見えている感じでしたね。アシストできたこと、一発で仕留められたことはすごく嬉しいですけど、本当に難しい体勢から決めてくれたので、武藤君の技術の高さのおかげというゴールだったと思います。

今日はなかなかいい形を作れなかったけど、後半に入れば相手が空いてくることはわかっていたので。そのための前半だったと思っていたし、だからこそ守備に対してみんなすごく集中していた。流れが悪いときならば、両方のストッパーが前に出た背後をカウンターで突かれるシーンが多かったんですけど、これまでの経験から学んで上手く対応できたことが、こうやって結果につながっているのかなと」

■相手に畏怖される最強のドリブラー

1992年6月6日に京都市山科区で産声をあげた。FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)やFW宇佐美貴史(アウグスブルク)らと同じ、才能あふれる「プラチナ世代」に名前を連ねてきた。

小学生時代から地元の京都サンガで心技体を磨き、2011シーズンにはトップチームへ昇格。168センチ、64キロの小さな体で自在にドリブルを操るプレースタイルに、いつしかこんなニックネームがつけられた。

「古都のメッシ」

50メートル走のベストは6秒5と平凡ながら、トップスピードに達するまでが桁外れに速い。だから相手を置き去りにできる。J2の舞台で戦いながら、最強ドリブラーとして相手に畏怖される存在となった。

迎えた昨シーズンの終盤。レッズからオファーが届く。駒井のプレーに魅せられたのは攻撃的なサッカーを志向し、選手たちから親しみを込めて「ミシャ」と呼ばれるミハイロ・ペトロヴィッチ監督だった。

サンガのファン・サポーターから愛される存在だった駒井は、ことあるごとに残留を懇願される。水戸ホーリーホックをホームに迎えた11月23日の最終節後には、こんな横断幕が掲げられた。

「京都の未来には善成が必要」

熟慮を重ねた末に、駒井は念願でもあったJ1へ挑むことを決める。契約を残していたサンガへレッズから違約金が支払われる状況も、13年間もすごしたサンガを離れる決意を後押しした。

育ててくれたサンガへの恩を感じているからこそ、新天地に溶け込もうと積極的に動いた。開幕へ向けたキャンプで同部屋になった日本代表DF槙野智章は、駒井の姿をほほえましく感じていたと振り返る。

「いままでのウチの試合(の映像)をしっかりと見ていたし、他の選手たちに対しても『どのような動きをすればいいですか』と積極的にコミュニケーションを取っている姿を見てきたので、フィットするのに何ら時間はかからないと思っていました」

駒井善成 参考画像
(c) Getty Images

ファーストステージは途中出場から徐々にプレー時間を伸ばし、最後の4試合のうち3戦で先発を果たした。迎えたセカンドステージ。選手層の厚さが問われる夏場から、コンスタントに先発の座を射止め続ける。

セカンドステージと年間総合順位のトップを川崎フロンターレと争いながら、日々の練習ではチームメートたちと切磋琢磨をハイレベルで演じる。レッズでしか味わえない充実感が、駒井を成長させる糧になった。

「僕は今年から加入しましたけど、それでもミシャが練習から調子のよしあしを見ていることがわかる。少しでも調子が悪かったらすぐに先発から外されますし、そういう緊張感を全員がもっている。他のチームのことはわかりませんけど、僕たちの練習は試合と同じくらいの激しさでやっている。だからこそすごくいい雰囲気が生まれているし、それがチームにもいい流れをもたらしていると思う」

■レッズの年間チャンピオンに向けて

宿敵・ガンバ大阪と対峙した10月15日のYBCルヴァンカップ決勝では、負傷したMF宇賀神友弥に変わって前半36分からスクランブル出場。関根とともに、左右両翼からチャンスを作り続けた。

PK戦の末にガンバを撃破し、実に10年ぶりとなる国内三大タイトルを獲得したYBCルヴァンカップのときとは対照的に、ジュビロ戦後のレッズは派手なガッツポーズも、ましてや弾けるような笑顔もなかった。

唯一無二の目標は年間チャンピオン。レッズにとってステージ優勝はあくまでも通過点であり、すでにチャンピオンシップ進出を決めていたことも、選手たちのいつも通りの立ち居振る舞いにつながった。

昨シーズンもファーストステージを無敗で制し、年間総合順位2位でチャンピオンシップに進みながら、準決勝でガンバに煮え湯を飲まされた。高く、険しい頂を目指す緊張感は、駒井にも十分に伝わっている。

「やっぱり去年の悔しさがあるんでしょうね。ステージで優勝しても、チャンピオンシップを取れなかったら何の意味もない。その意味で僕たちの目がセカンドステージの最終戦へすでに向けられていたことが、記者の皆さんにも伝わったと思います。(セカンドステージ優勝は)もちろん嬉しいですけど、僕たちは最終戦を勝って、年間チャンピオンを取ることしか考えていません」

11月3日のセカンドステージ最終節は、ホームの埼玉スタジアムに横浜F・マリノスを迎える。勝てば勝ち点1差で追ってくるフロンターレを振り切り、年間総合1位となってチャンピオンシップ決勝へシードされる。

一発勝負で行われる今月23日の準決勝をチェックしながら、29日に敵地で、来月3日には埼玉スタジアムで行われる決勝へ向けて、たっぷりと時間をかけて準備を積むことが頂点への最短距離となる。

当初は売れ行きが鈍かったマリノス戦のチケットは、年間総合1位がかかる状況となったことで、前売り段階で完売した。今シーズン最多となる5万6000人以上の大観衆の前で相手守備網を切り裂き、スタンドを熱狂させる瞬間を思い描きながら、駒井は静かに「伝家の宝刀」ドリブルの切れ味を研ぎすませる。
《藤江直人》

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