【THE REAL】ハリルジャパンの一番星、原口元気を成長させる危機感…ドイツの地で脈打つ好循環 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】ハリルジャパンの一番星、原口元気を成長させる危機感…ドイツの地で脈打つ好循環

オピニオン コラム

サッカー日本代表の原口元気 参考画像(2016年10月11日)
  • サッカー日本代表の原口元気 参考画像(2016年10月11日)
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目の前の「試合に出たい」という思いと、これからも「試合に出続けたい」という思い。言葉にすれば似ている感情だが、選手の胸中に生まれるプレッシャーは対極に位置するものといっていい。

日々の練習において前者は焦りや不必要な気負いといったネガティブな要素をもたらし、後者は直近の試合で出た課題を次の機会までに克服したいというポジティブな姿勢を生み出す。

そして、いま現在のハリルジャパンでもっとも眩い輝きを放っているFW原口元気は、もっと「試合に出続けたい」というプレッシャーを真正面から受け止め、さらなる成長への糧に変えている。

サッカー日本代表の原口元気 (c) Getty Images

イラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選に臨むために帰国した10月上旬。所属するヘルタ・ベルリンで開幕からフル出場を続ける25歳は、何度も「危機感」という言葉を口にしている。

「自信といったものはまったくないです。むしろ、もっとやらなきゃという危機感しかない。今回もゴールを取れなかったら…取れなかったらというか、パッとしなかったらベンチへ戻されるというか、そういう立場だと思っているので危機感しかない。でも、危機感をもってプレーしているときに、一番いい結果が出ると思うので、メンタル的にはいい状態なのかなと思っています」

■イラク代表戦で芸術的なヒール弾を放つ

原口が抱く危機感とピッチのうえにおけるパフォーマンスが鮮やかに一致したシーンが、両チームともに無得点の均衡を破った、10月6日のイラク代表戦の前半26分に飛び出した先制ゴールとなる。

自陣でイラク代表の選手がパス回しをしているところへ、原口が猛然とプレスバック。こぼれ球をMF清武弘嗣(セビージャ)が拾うのを見るや、Uターンしてスプリントをかける。

並走するFW岡崎慎司(レスター・シティ)がファーサイドへ走り、相手のマークふたりを引きつける。ポッカリとスペースが空いたニアサイドへ、原口は一気に加速していく。

ボールはドリブルで30メートル近い距離を持ち運んだ清武からFW本田圭佑(ACミラン)を介して、その背後を回るように走り込み、追い抜いていった清武へ再び託される。

狙いを定めた清武のグラウンダーのクロスはニアサイドへ。相手ゴールキーパーの前に飛び込んできた原口がボールをまたぎ、次の瞬間、右足のかかとでコースを変えた。

芸術的なヒール弾が、ゴールの奥へゆっくりと吸い込まれていく。浦和レッズ時代に慣れ親しんだ埼玉スタジアムのカクテル光線に、原口の無邪気な笑顔が映えた。

イラク代表戦で原口元気が先制点を決める (c) Getty Images

「あれは自分のよさが出たと思う。ああいうボールの奪い方は得意なので。その後に前へ出ていって、キヨ君(清武)と(本田)圭佑君がいいコンビネーションで崩してくれたので、いいところへ入れることができた。ヘルタ(・ベルリン)だと、あの位置には入れないですからね。おこぼれを狙うような感じになるけど、代表だとオカさん(岡崎)が自分の入るスペースをうまく作ってくれる。

シュートのシーンは落ち着いていたし、(かかとで)決まってよかった。あれだけ速い攻撃ができれば、どんな相手に対してもチャンスを作れると思う。逆に考えれば、その後の試合のなかで、ああいう形の攻撃がなかなか形にならなかったのは課題ですね。個の部分ではチャンスを作り出せた場面はありましたけど、コンビネーションではなかなかチャンスを作れなかったので」

■ゴール前におけるクオリティーが課題

敵地バンコクで9月6日に行われた、タイ代表とのアジア最終予選第2戦に続く連続ゴール。もっとも、イラク代表戦を前にして、原口はゴールこそが「一番自信のない部分」と公言していた。

「ゴール前におけるクオリティーが僕の課題。変な話ですけど、他の部分が上がったなかで、そこだけついてきていない感じなので。タイ戦では出ましたけど、今後も続けていければ形になってきて、初めて自信や実力に変わっていくと思っている。自分が伸ばしてきた部分やいまの自分にできることをやって、焦ることなく90分間を通じてゴールを意識してプレーすることで、形になってくれたらいいかなと」

2列目の左サイドというもっとも得意とするポジションで、開幕戦から8試合連続で先発フル出場を続けている今シーズンのブンデスリーガで、実はまだゴールをマークしていない。

それでも、ハンガリー出身のダールダイ・パール監督から厚い信頼を寄せられている理由は、原口をして「他の部分があがってきた」と言わしめた、チームに対する献身性を体現できるようになったからだ。

原口自身、ヘルタ・ベルリンとハリルジャパンにおいて、ピッチのうえで求められている役割が違っていることをイラク戦前に明かしている。

「ヘルタでのプレーをそのまま、というわけにはいかない。ヘルタでは(攻撃と守備が)半々くらいでやっていますけど、代表ではもっと攻撃に比重をかけられる。監督からも『フォワードだから点を取れ』と言われているので、どのようなプレーを出そうか、いろいろとイメージしながら、いままでやってきたことをできるので楽しいですけどね」

ヘルタ・ベルリンでプレーする原口元気 (c) Getty Images

■日本人のイメージを覆す

活躍の舞台をドイツの地へ求めて3シーズン目。言語はもちろんのこと、文化も風習も日本とはまったく違う異国の地にようやく慣れ親しんだことで、生来の“ふてぶてしさ”を発揮できるようになった。

決して遠くない海外挑戦のために、浦和レッズ時代から家庭教師をつけて英語を学んでいたことも奏功したのだろう。積極的に自己アピールする姿に、いまではチーム内でこう言われているという。

「お前、本当に日本人なのか?」

どちらかと言えばおとなしく、黙々と仕事に徹する日本人のイメージを覆した。レッズ時代と変わらぬ姿を表現できるようになったことが、レギュラー奪取につながったのだろう。

守備にも全力を尽くすうえで、ゴールできないという現実を逃げることなく受け止める。日々の練習で課題を追求する姿勢がさらなる成長を呼び起こし、日本代表でのパフォーマンスにも好影響を与える。

極めてポジティブなサイクルのなかにいる状況を、原口はこんな言葉で表したことがある。それは2年間の苦難を乗り越えた末にたどり着いた、海外でプレーするための理想の境地でもあった。

「どれだけ気持ちをプレーに乗せられるか、だと思うので。言葉では簡単に言えますけど、そんなに簡単なことじゃない。それを普段からヘルタできるようになっているので、代表でも自然に出せると思う」

浦和レッズ時代の原口元気 (c) Getty Images

■左サイドでの先発に武者震いと危機感

ホームでまさかの苦杯をなめた、9月1日のUAE(アラブ首長国連邦)代表とのアジア最終予選第1戦。後半30分から原口が投入されたが、ポジションは何とボランチだった。

バヒド・ハリルホジッチ監督は「ボールをもち運べる」と原口のドリブルを評価し、幾度となく不慣れなボランチで起用してきた。裏返せば、もっとも得意とする左サイドでの序列は低かったことになる。

そうした状況でUAE代表に屈し、左サイドの1番手だったFW宇佐美貴史は新天地アウグスブルクで出場機会を得ていない。迎えたタイ代表戦。もっとも得意とする左サイドで先発を告げられた原口は、武者震いと危機感を胸中に同居させている。

「久しぶりに左で使ってもらって、このチャンスを逃したらもう次はないだろう」

原口元気 (c) Getty Images

高揚感と緊張感がほどよいバランスで競演することで、生まれたダイナミックかつ積極的なプレーは、舞台を敵地メルボルンへ移したオーストラリア代表とのアジア最終予選第4戦でも輝きを放った。

開始わずか5分。ショートカウンターからボールをキープする本田を追い越し、トップスピードに乗った体勢でパスを受けて、相手ゴールキーパーの冷静かつ的確に射抜いたのは原口だった。

時計の針を巻き戻せば、相手のパスをカットしたのも原口。ボールはキャプテンのMF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)を介し、ワントップで起用された本田へ託されていた。

その間に原口は全速力でスプリントをかけた。最終的にゴールとなって帰結したが、ときには無駄走りになるケースもある。それでも守備を含めて、原口は誰よりも多くの距離を駆け抜ける。

後半開始早々にオーストラリア代表に与えたPKも、危機を察知して懸命に戻ってきた原口が、パスを受けたFWトミ・ユリッチを背後から倒したプレーで与えていた。

原口自身は「止まれなかった」と反省の弁を口にしたが、原口の気配を感じたユリッチが巧みに“間”を作り、倒されることを誘発したといってもいい。献身的な姿勢と表裏一体だったからこそ、試合後のハリルホジッチ監督も原口をねぎらったのだろう。

攻守両面でたくましく変貌を遂げる原口の姿は、レッズ時代にもっとも可愛がられ、原口がが去った後のレッズを託され、昨シーズンから原口がルーキーイヤーにつけた「24」番を志願して背負っているMF関根貴大に新鮮な驚きと刺激をも与えている。

「日本代表のなかで一番戦っていたと思う。守備でもあれだけ頑張って走れるのはすごいこと。ああいうプレーをすればチームとしても助かるはずなので、自分も見習っていきたい」

笑顔でこう語っていたのはタイ代表戦後だった。その後のイラク代表戦、オーストラリア代表戦でスケールはさらに増した。ヘルタ・ベルリンでの日々との相乗効果が生まれていることは言うまでもない。

■「僕ひとりで点を取れるわけではない」

話をイラク代表戦後に戻す。後半アディショナルタイムに飛び出した、MF山口蛍(セレッソ大阪)の劇的な決勝ゴールの余韻が残る合後の取材エリア。メディアから「最終予選のラッキーボーイになれるか」と問われた原口は、即座に否定している。

「運だとは思っていない。自分のやるべきことをやって、それが形になるかならないかはチームの状況もある。僕ひとりで点を取れるわけではないし、だからこそコンビネーションやコンディションをもっと気にしながらやっていくだけです」

やんちゃ坊主の面影をちょっぴり残しながらも、そこには“大人”への階段をしっかりと登っている原口がいた。そして、オーストラリア代表戦を終えた後も、ブンデスリーガでの先発フル出場は続いている。

グループBの首位・サウジアラビア代表を埼玉スタジアムに迎える、年内の最終戦にして今後を占う来月15日の大一番でも、背番号「8」はさらに成長した姿でハリルジャパンをけん引してくれるはずだ。
《藤江直人》

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