【THE INSIDE】高校野球探訪(8)普通の高校生活の延長に、甲子園があると証明したい…無念の石岡一 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】高校野球探訪(8)普通の高校生活の延長に、甲子園があると証明したい…無念の石岡一

オピニオン コラム

力投した石岡一・高さき君
  • 力投した石岡一・高さき君
  • 明秀日立・細川成也君
  • 戦況を見守る名将の金沢監督
  • 石岡一部員
  • 石岡一・堀田望見マネージャー
  • 石岡一・川井政平監督
  • 石岡一・細井君
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今春の茨城県大会で準優勝して関東大会進出。一躍注目を浴びた石岡一。

決して突出した選手がいるわけではないが、選手たちの自主的な姿勢を重んじたいという川井政平監督の思いが結実したチームは、甲子園初出場の夢を乗せてシード校として夏の大会に挑んだが…。初戦で強豪明秀日立の前に屈した。

「有力私学の子たちが気づかないことに、ウチの子たちが気づくようになっていけば、そこで何かが見出せると思います」という川井監督の思いとこだわりは強い。つねに、「高校生として、みんながやる当たり前のことをやって、普通の高校生という生活を大事にしながら、その上で甲子園へ出場するということを実現したい」と考えていた。

この夏のチームは、そんな感触が最も得られたチームでもあった。

◆歴史ある、一般的な学校

創立106年を迎えた石岡一は石岡農学校を前身としている。現在は、普通科とともに園芸科と造園科が設置されているのも特徴である。JR常磐線で土浦駅より少し水戸寄りに進んでいくと、石岡駅に到着する。

駅から徒歩数分もしないうちに、小高い丘へつながる階段があるが、それを上っていくと広い敷地に恵まれた学校がある。

野球部のグランドは校舎を突っ切った奥にあるが、監督室の裏側には、試合後の補食用にネギやナスなどの野菜が育てられている。川井監督が就任した際に植樹したという桜の木も育っている。

◆近年着実に力をつけてきた

学校の歴史はあるが、地方都市のごく普通の公立校である。選手たちもほとんどが、中学時代は地元の中学野球部に所属していた無名選手たちだ。それでも、近年は有望私学に伍して茨城県で上位に定着する存在となっている。そして今春、これまで破れなかったベスト4の壁を突破して決勝進出。常総学院には敗れて準優勝となったものの、初の関東大会に出場。

初戦では地元の前橋を下したことで、この夏は自信を持って挑んでいた。

とはいえ、シード校としては、受けて立つことだけはしたくなかった。

しかも、初戦の相手は大阪や和歌山、宮城県、福島県など県外から中学時代に実績のある選手たちを光星学院(現八戸学院光星)で何度も甲子園へ導いている金沢成奉監督が声を掛けて集まってきた選手たちである。

それでも、春はその相手に対してコールド勝ちして勢いにも乗った。それだけにむしろ、自分たちが自信を持って戦えるはずだった。

◆強豪校に対して、思考停止しない。明秀日立vs石岡一

川井監督が、強豪校との試合に対して常々心掛けていることが、言葉の大切さだ。「やるだけやって、思い切ってぶつかっていけ」とか、「当たって砕けろというつもりでやれ」という言葉は言わない。それは、その言葉を発した段階で、既に相手よりも格下になっているという意識になるからだ。

どんな強豪私学だって相手とは対等なのだという意識を育んでいかなくてはいけない。だから、常に勝つためにどうするのかということ、それだけを考えていけということである。

明秀日立010 000 000=1
 石岡一000 000 000=0

期待を担って先発した石岡一の高さき(さきは崎の「大」が「立」)大幹君は、やや相手を意識したのだろうか…。それに初戦というかたさもあったのかもしれない。立ち上がりから、いくらか力みがあり、球が上ずった。低めに決まり切らず、走者を出した。それでも、初回は何とかこらえたが2回、無死満塁とされ、次打者は力で三振を奪ったものの、9番内田君にセーフティー気味のスクイズを決められた。

結果的にはこれが決勝点になってしまった。高さき君は3回以降は本来の投球を取り戻していた。4~8回は3人ずつに抑えていたのだが、打線はプロ注目の右腕、細川成也君の力のあるストレートを打ちきれなかった。

◆普通の高校生、普通に高校生活、その先に甲子園

國學院大を卒業して99年から10年間監督、波崎柳川で監督を務め石岡一に異動。11年から監督を務めて6年目の川井監督。石岡一としてはこの夏は、甲子園出場へ千載一遇のチャンスと感じていた。それだけに、試合後は落胆も大きく、選手たちは悔し涙にくれた。川井監督も肩を落とした。

それでも、「今年の生徒たちは、本当に、学校生活でもきちんとやってくれる子たちでした。普通の高校生が、普通に高校生活を送りながら、そんな中で一生懸命に部活動として野球もやって、それで甲子園へ行かれるということを示してあげたかった。結果は、敗れましたが、本当にいい生徒たちでした」と、教員として選手たちをねぎらっていた。

そして、「また、新たな挑戦の始まりです」と、意識して次へ気持ちを向けていた。学校行事の文化祭などにも積極的に参加して、重要な役を果たしながら、それでクラスの仲間にも応援されて甲子園を目指していく。そんな生徒たちに甲子園の土を踏ませたい。それは、教員としての立場からはもちろんだが、野球部の監督としても普通の公立校で勝つために大切な姿勢だという考え方である。

川井監督のロマンと挑戦は、まだまだ続いていく。
《手束仁》

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