自分がハマれるものと、スポーツの違いを考えてみる…PLANETS編集長が語る その2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

自分がハマれるものと、スポーツの違いを考えてみる…PLANETS編集長が語る その2

オピニオン ボイス
デジタルコンテンツEXPO2015のシンポジムで語る宇野常寛PLANETS編集長
  • デジタルコンテンツEXPO2015のシンポジムで語る宇野常寛PLANETS編集長
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日本科学未来館で開催されたデジタルコンテンツEXPO 2015で10月23日、研究者や起業家たちによる「スポーツを変えるコンテンツ技術の可能性」をテーマにしたシンポジウムが実施された。評論家で「PLANETS」編集長の宇野常寛氏によるプレゼンを紹介する。

スポーツは「嫌い」と一刀両断する宇野氏。独特の話しぶりとユーモアによって会場の温度を上昇させた。

※ ※ ※

「実は私、今でこそスポーツに興味ありませんが、その昔巨人ファンでした。野球大好きで、プロ野球も高校野球も好きでした。なぜ巨人ファンを辞めたのか、ということですが、就職して時間が無くなってきたし、ただ見ているだけでは感情移入ができなくなってきたんです。また、他にアツくなれるものがあるから優先順位下がったんですね。ということは、感情移入できるものになれば、アツくなれるのでは?ということが言えます。こうなれば僕もハマれるんじゃないか」

●自分がハマれるものと、スポーツの違いを考えてみる

1、直接参加できる
2、誰でも参加できる
3、複数の物語から好きなものを選択できる

「3は分かりにくいかもしれません。例えばですが『みんな日本人だから日本人の健闘を称えようぜ』みたいなものはひとつの物語ですよね。これだと楽しめません。『300人のうち誰かを選ぶ』みたいなものが選択です。これらは、エンタメの世界では当たり前のことなんです。この当たり前のことが近代スポーツ界ではなしえていないんです。そして今、エンタメのロジックで近代スポーツをアップデートすることのできる社会的要請と技術的背景がそろい始めているのではないか、ということを僕は言いたいのです」

1、直接参加できること
Q「なぜ俺が投票したら松井秀喜の打撃力は上がらない?」(じゃないと結局他人の感動だ)

「これ冗談のようですけれど、当たり前のようにスマホが生まれた時からある21世紀世代の子どもたちは、こう思っている可能性ありますよ。ファンタジー・ベースボール的(もしくは総選挙的)アプローチ。実際に応援したプレーヤーが露骨に有利になるようなアプローチ。現代のインターネットが普及した世の中ではこっちが標準です」

2、誰でも参加できる

「スポーツで勝つには、フィジカルに恵まれていないとダメ。それに比べて、マリオは十字キーが操作できれば誰でも参加できる。練習コストも低い。非常に参加の敷居が低い。重要な課題である、『参加の敷居をいかに下げていくのか』ということですが、僕からしてみると超人スポーツ協会が先導しているesportsは大幅に参加の敷居を下げる可能性があります」

3、複数の物語から好きなものを選択できる

「隣に住んでいる老夫婦は僕のことをニートだと思っています。昼間も家にいて、宅配便を受け取っているわけですし。でも、僕は毎日香港にいる社会学者とチャットしているわけなんです。どちらに僕が親近感を感じているかは自明ですよね。マスメディア的な物語のつくりかたはアナクロニズムだと思うんです」

「推せる選手の選択肢を増やす。近代スポーツのイデオロギーですが、ある種の"5体満足主義的"がそこにあります。『理想の肉体をもっている人が素晴らしい』みたいなイデオロギー。でも、そこに乗っかれない人たちって沢山いると思うんです。ハンディキャッパーもそうだし、肉体能力は低いけれども知的能力は高かったり、動体視力だけは高かったりといった、そういう人たちも活躍できるような選択肢があることが僕は大事かな、と思います」

「というよりも個性の問題ですよね。例えばドラクエとかやっていても戦士、魔法使い、僧侶などがいて、それぞれ能力が異なりそれぞれの活躍の場がある。近代スポーツの身体観はあまりにも画一的すぎて、ちょっとついていけない。はっきり言ってしまうとナチスっぽいですよね。実際オリンピックを最も政治的に利用したのはヒトラーですよね」

「五体満足的な美学があるのは否定しない。ただ、そういった美学は複数あるんじゃないか、って主張したいわけです」

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●PLANETS編集長が語る
その1 スポーツは、苦手・ウザい・興味ない…どう解決する?
その2 自分がハマれるものと、スポーツの違いを考えてみる
その3 お客さんは見ているだけじゃ満足しない
《編集部》

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