【小さな山旅】山での出会いに思いを馳せる…御岩山~神峰山(2) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】山での出会いに思いを馳せる…御岩山~神峰山(2)

オピニオン コラム
「道に迷ったかな?」と思ったら、まずは他の登山者に尋ねてみよう。思いがけない楽しい会話になるかもしれない。
  • 「道に迷ったかな?」と思ったら、まずは他の登山者に尋ねてみよう。思いがけない楽しい会話になるかもしれない。
  • 御岩山のピークを踏んだ後、神峰山へと向かう筆者。看板は数多くあれど、「神峰山」の文字が見当たらない。
  • 不安に思いながらも先へ進む。それでも看板に神峰山の文字はなく……。
  • 通りかかった登山者に、道を尋ねることに。
  • 山で出会う人は、いい人ばかりだ。低山に登っている人の中には、近所に住んでいて散歩がてらに登る人もいる。そのような人にとっては、庭のようなものなのだろう。
  • 道が正しいとわかると、安心する。このような看板にも目がいってしまう。
  • 神峰山の山容。周囲の山に比べて尖んがっている。
  • この分岐まで来れたら正解。神峰山への登山口はすぐそこ。
山で出会う人は、みないい人ばかりだ。

山に登る人がいい人なのか、山に登るからいい人になるのか。それとも、普段はすごく嫌な人でも、山に登っている間だけいい人になるのか。とにかく、山で出会った人に悪い印象を持ったことがない。

すれ違う時に挨拶をすれば返ってくるのは当然で、道を尋ねれば教えてくれる。今まで登った山について語ってくれる人もいる。家から持ってきたという野菜をもらったこともある。つらそうな表情で登っている筆者に、「あと少し」「頑張って」と励ましてくれる人もいた。山での会話は、極めて健やかだ。

筆者は山に登る度に、道を尋ねていると思う。
その度に、いい加減に読図を覚えたほうがいいとは思うのだが、そう思うのはその時だけで、性懲りもなく次に山に登るときには忘れてしまっている。

それはそれで、今のところはいいかもしれないと思っている。道を聞くことで、出会った登山者と話をするきっかけになるから。今回の御岩山~神峰山でも、たくさんの登山者と出会い、助けられた。

◆御岩山~神峰山での出会い

御岩山の岩場を満喫した後、筆者は次なる目的地神峰山に向かった。御岩山山頂付近には道しるべが多く、迷うことはなさそうであるが、案外そうでもない。向陽台、高鈴山、奥久慈きららの里……あれ? 肝心の神峰山の表記がない。

看板はたくさんあるのだが、行きたい山の名前がどこにも載っていないのだ。歩けど歩けど「神峰山」の文字が看板に現れない。

この道であっているはずだが……と不安になってくる。筆者の不安をぬぐい去ってくれたのが、登山者であった。筆者たちが向かう方向から歩いてきた登山者に道を聞くと、現在歩いている道が正しいルートであることがわかった。

安心すると、歩くのも楽しくなる。心に余裕ができれば、周囲の景色も楽しめる。すれ違う登山者にも、興味がわく。下山後に、出会った登山者たちに思いを馳せるのも、また楽しい。

岩場に果敢にチャレンジしようとしていた父子は、怪我することなく岩登りできただろうか。
御岩山で道がわからなくなっていた母娘には、大してわからない癖に適当に道を教えてしまったが、その後無事に下山できたでろうか。
楽しそうに会話をしながら歩いていた家族の子供達は、山を好きになってくれただろうか。
神峰山の頂上で二人で昼食をとっていた中学生くらいの男子たちは、何を話していたのだろうか。
連れてきた犬と一緒にベンチで休む老夫婦の姿は、あまりにも素敵で声をかけられなかった。

そして、筆者が道を聞いたのが、一人ハイキングを楽しむ中年男性であった。スタスタと迷いなく歩く姿は、この山を知り尽くした感じで勇ましかった。

神峰山の頂上で昼食をとっていた際には、隣に座った男性と少々話をした。
「これから高鈴山にも行こうと思うんですけど、どれくらい時間がかかりますか?」
筆者が聞くと、男性は「けっこうかかるね。地図持ってないの? 日立の駅に置いてあるよ。この地図あげるよ」と気持ちよく答えてくれ、地図まで提供してくれた。
「今から高鈴なの? 遠回りしたね~? 先に高鈴の方が よかったんじゃない?」

男性は、連れてきた犬にバナナをあげた。
犬はバナナをむしゃむしゃと食べながら、筆者と男性の話を聞いて、どのように思ったのだろうか。
(こいつ、もっと山について調べてこいよ。山をなめんじゃねーよ)
そんな風に思われても、仕方がないかもしれない。
《久米成佳》

編集部おすすめの記事

page top