【BMC teammachine SLR01 インプレ vol.7】新旧比較で分かった「BMC旗艦の世代交代」…安井行生 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【BMC teammachine SLR01 インプレ vol.7】新旧比較で分かった「BMC旗艦の世代交代」…安井行生

オピニオン インプレ
BMC teammachine SLR01の徹底インプレッションvol.7。旧型SLR01との比較を通して、走行性能を深く読み解いていく。
  • BMC teammachine SLR01の徹底インプレッションvol.7。旧型SLR01との比較を通して、走行性能を深く読み解いていく。
BMC teammachine SLR01の徹底インプレッションvol.7。旧型SLR01との比較を通して、走行性能を深く読み解いていく。

◆理想的な振動減衰特性

振動の減衰の仕方にも特徴がみられる。振動の首根っこを締め上げて凹凸を征服していくドグマのようなフレームとも、全てのギャップを分厚いヴェールで包み込んでしまうコンフォートバイクらとも、なんともいえない余韻を残すスチール勢とも違う。新型SLR01は、ろうそくの火を吹き消すように、フッと衝撃を消してしまうのだ。

これらの印象の違いはどこから来るのか。おそらく、振動の第一波の振幅の大きさと、第二波以降の振幅の大きさ(衝撃吸収能力とその後の減衰能力とのバランス)の差ではないかと思う。SLR01は、吸収能力はコンフォートバイクよりも控えめだが、減衰能力が非常に高いため、小さな衝撃がトンと伝わってきたのち、それが魔法のようにフッと消えるという印象になるのだ。衝撃にしっかりと芯を残して路面の状況を伝えつつ、第二波以降を素早く消滅させる。理想的な振動減衰特性である。

◆人間の生理に逆らうことのない剛性感

振動の吸収・減衰特性だけでなく、脚への当たりが非常にマイルドであることも特徴だ。前述したように、加速力やスプリント性能などはトップクラスではあるがトップでは決してない。しかし、脚への当たりから想像するより力強く加速してくれる。SLT01、SLC01、インペック、旧SLR01、そして新型SLR01。歴代BMCのトップモデルに共通するものは、この極上のペダリングフィールである。ただ鉛直方向の柔軟性が高いというだけでなく、人間の生理に逆らうことのない剛性感に仕立てられているのだ。超高負荷域での炸裂感が若干薄まることを承知で、この剛性バランスを採ったのだろう。これこそがBMCというブランドが重視してきた性能であり、この新型SLR01も歴代BMCトップモデルの味をしっかりと受け継いでいるといえる。新SLR01の誕生をもって、BMCの旗艦はステージレーサーとして理想的な剛性バランスを有するに至ったのである。

このあたりで、旧型との違いについても触れておきたい。旧SLR01のオーナーにサイズ47を借りて30分ほど乗らせてもらうことができたのだ。同条件で新旧を比較すると分かるが、これが全くの別物だった。旧SLR01が持っていた生き物のような身のこなし、シルクのようなペダリングフィール、負圧エリアに吸い込まれるような加速感、しなりと戻りの繰り返しが産む一体感あるヒルクライム、これらは綺麗さっぱり消えている。ただ、高負荷時の運動性能や振動減衰能力、スタビリティには歴然の差がある。ルックが481→585で激変したように、BMCの旗艦モデルも、伝統の味を受け継ぎつつも方向性を明確に変化させているのだ。
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