上位は“非ロングヒッター”の傾向 飛ばし屋の「パーオン率」が上がらない理由とは | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

上位は“非ロングヒッター”の傾向 飛ばし屋の「パーオン率」が上がらない理由とは

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上位は“非ロングヒッター”の傾向 飛ばし屋の「パーオン率」が上がらない理由とは
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今季の日本男子ゴルフツアーのスタッツを見てみると、パーオン率とパーキープ率は、飛距離よりも方向の安定感の高さを武器にしている選手が上位にランクイン。金谷拓実、宋永漢(ソンヨンハン)、稲森佑貴の3名がトップ3に入った。

賞金ランキング1位の中島啓太と2位の蟬川泰果は、メルセデス・ベンツ トータルポイント(※)ランキングの2位と1位。飛距離を武器にバーディ率やイーグル率では上位に入ったが、パーオン率とパーキープ率では上位3名に及ばなかった。

パーオン率上位者が‟非ロングヒッター”であるのは今季に限ったことではない。

(※)平均ストローク、平均パット、パーキープ率、パーオン率、バーディ率、イーグル率、ドライビングディスタンス、フェアウェイキープ率、サンドセーブ率の9部門の順位を合計した値。ポイントが小さいほど上位になる。

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■近年のパーオン率上位者

最近5シーズンのパーオン率1位の選手を振り返ってみる。

今季1位は宋永漢でドライビングディスタンスは49位、昨季1位は同28位の桂川有人、2020-21シーズン1位は同58位の阿部裕樹、2019シーズン1位は同20位のG・チャルングン、2018シーズン1位は同37位の姜庚男(カンキョンナム)だった。

決して飛距離でアドバンテージを得ているとは言えない選手たちがパーオン率1位となった。

対象を上位3名に広げても、ドライビングディスタンスは下位の選手が多い。パーオン率上位者15名(3名×5季)中、ドライビングディスタンスで上位10名に入っているのは2019年のS・ビンセントただ一人。一方、15名中9名がドライビングディスタンス上位30名にも入っていない。

■パーキープ率とバーディ率

パーオン率1位の選手のバーディ率とパーキープ率はどうか。

最近5シーズン、パーオン率1位の選手を見てみると、宋永漢は今季のバーディ率が11位でパーキープ率が2位、桂川は昨季のバーディ率が7位でパーキープ率が4位、阿部は2020-21シーズンのバーディ率が49位タイでパーキープ率が6位、チャルングンは2019シーズンのバーディ率が5位でパーキープ率が4位タイ、姜庚男は2018シーズンのバーディ率が6位でパーキープ率が18位、だった。

パーオン率1位の選手の多くは、バーディ率とパーキープ率を比較した時に、パーキープ率の方が高水準であった。

上位3名まで対象を広げるとどうなるか。今季と2018シーズンの稲森、2020-21シーズンの金谷、2019シーズンの今平など、やはり、バーディ率よりもパーキープ率の方が上位に入っている選手が目立つ。

この傾向は、パーオン率上位者はバーディ“トライ”となるパットの機会は多いものの、その内の多くはバーディ“チャンス”とは言えない距離のパットとなっていることによるものと考えられる。

最近5シーズン、パーオン率上位3名

最近5シーズン、パーオン率上位3名

■リスクとリターンを天秤にかける

ロングヒッターはグリーンに近いところからグリーンを狙えるのだから、パーオン率は高くなるはず。しかし、パーオン率上位にドライビングディスタンス上位者が少ないのは、ロングヒッターとそうではない選手のプレースタイルの違いにある。

グリーンを外すリスクを背負いながら、厳しいピンポジションをデッドに狙うロングヒッターと、グリーンを広く使える地点を狙わざるをえない非ロングヒッターの差だ。

ロングヒッターはグリーンを狙うショットで、短めのクラブを選択できるため、ピンポジションがグリーンの端でも、バーディチャンスを獲得するべくピンをデッドに狙うことができる。

厳しいピンポジションでもピンを狙った場合、強弱や左右のブレがあるとグリーンに乗らずボギーを叩くピンチに陥る場合があるが、そのリスクとバーディチャンス獲得というリターンを天秤にかけた時、バーディチャンス獲得を優先することがベターとなることが多い。

対して、非ロングヒッターはグリーンを狙うショットでは、ロングヒッターに比べて長めのクラブを選択せざるをえない場合が多い。その場合、長めのクラブでピンが切っている狭いエリアを狙っても、バーディチャンス獲得のリターンを得る可能性は低いため、リスクを回避して確実にパーをとることを優先せざるをえなくなりやすい。

厳しいピンポジションでは、ピンが切っているエリアではなく広いエリアを狙う回数が増えることが、パーオン率を上げることに繋がっているのだろう。

世界的にパワーゲーム化が進んでおり、ツアー選手全体の飛距離が伸び続けているが、ゴルフの統轄機関であるR&AとUSGAが2028年からボールを規制すると発表した。競技ではこれまでのものよりも飛ばない認定球のみが使用可能となる。

今回の規制は飛距離が出る選手ほど影響を受けると言われている。パワーや飛距離の優位性は少し下がり、パーオン率上位にいる選手のように、コースマネージメント力にたけた守りのプレースタイルの選手がより好成績を出しやすくなるかもしれない。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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