【プロ野球】細川成也と大竹耕太郎は“大化け” 伸び悩む選手のため球界で求められる「成功事例」の共有 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【プロ野球】細川成也と大竹耕太郎は“大化け” 伸び悩む選手のため球界で求められる「成功事例」の共有

新着 ビジネス
【プロ野球】細川成也と大竹耕太郎は“大化け” 伸び悩む選手のため球界で求められる「成功事例」の共有
  • 【プロ野球】細川成也と大竹耕太郎は“大化け” 伸び悩む選手のため球界で求められる「成功事例」の共有

以前からトレードやFAの人的補償などで移籍してきた選手が前球団とは見違えるような成績を残す例はいくらでもあった。今年は現役ドラフトという新制度が加わり、くすぶっていた選手が日の目を見る機会が増えた。

◆トレバー・バウアーの絶叫に見る、投手が一球一球に込める勝利への熱い思い

■目を引く細川成也の変身

特に、DeNAから現役ドラフトで加入し四番打者の座をつかんだ細川成也の変身は目を引く。プロ1年目の2017に初安打を放っているが、高卒ルーキーが一軍に出るのは大変なことだ。今年も高卒新人が一軍で出場したのは現時点で中日の山浅龍之介と巨人の浅野翔吾のみ。執筆時点(8月10日)では誰も安打を放っていない。

細川は1年目に5打数2安打で2安打はいずれも本塁打という鮮烈デビューを飾り、前途洋々のプロ野球生活が待っていると思われた。同期入団のヤクルト・村上宗隆がその年に残した数字は12打数1安打、1本塁打であった。

それも立派なものだが、細川のほうが上だったことになる。しかし、鮮烈なデビューは必ずしもバラ色の将来を約束するものではない。これもプロ野球の歴史が証明しているが、細川の場合もこの年を含めて6シーズン合計で204打数41安打の2割1厘、6本塁打という苦しい数字が積みあがっていった。

細川とともに現役ドラフトによる移籍で今季ブレーク、オールスター初出場を果たした選手に阪神の大竹耕太郎がいる。大卒初年度で3勝というと細川ほどの鮮烈さではないものの、まずまずのデビューシーズン。しかし、ソフトバンクで過ごした5年間で通算10勝9敗。規定投球回数に達したことは一度もなく、直近の2年間は未勝利という伸び悩んだシーズンが待っていた。

大竹が在籍していたソフトバンクは、5球団が競合した2016年のドラフト1位・田中正義も、日本ハムからFA加入した近藤健介の人的補償で手放した。プロ入り後未勝利だった田中は日本ハムでクローザーの地位をがっちりとつかみ、細川や大竹とともにうれしいオールスター初出場。こうして今年も何人かの選手が球団を移って別人のような働きを見せ、彼らの活躍は説明するまでもない。

ここで知りたいのは、前球団と現球団とで何が変わったのかということである。

■“大化け”のきっかけはぜひとも知りたいはず

こういうときに、「選手層の厚い前球団では出場機会が得られなかった」というような分析を見かけることがある。簡単に片づけられては困る。前球団が首位を独走状態で、豊富な戦力に食い込む余地がないようなチームならそれもわかる。しかし、ソフトバンクもDeNAも下位に低迷しているわけではないが、ときに連敗に苦しんでいるわけで、「どうしてこの活躍を去年までうちで見せてくれなかったのか」と思っていることだろう。

ときどき監督の好みが選手起用に反映するという話も聞くが、球団も監督も勝ちたい一心で選手を起用するわけだし、昨年までそれだけのパフォーマンスしか見せることができなかったのだと私は思う。

とするとコーチの指導がよくなかったということになる。それは担当記者も聞きにくいだろうし、前球団の担当コーチも語りたくないかもしれないが、真相は知りたいものである。一般のファンには伝わらなくてもいいかもしれないが、前球団のトップとしては、「どうしてあの選手はうちで活躍しなかったのに、他球団で別人のように生まれ変わったのか」と監督を含めた担当コーチに取材するべきではないだろうか。一般企業なら管理職が責任を追及されるべき事象といえる。

環境が変わって本人が心を入れ替えて努力をしたのかもしれない。前球団で得られなかった効果的なアドバイスを得たのかもしれない。もしかすると、起用されたら発揮する力があったのにそれを一軍か二軍の監督が見抜くことができなかったのかもしれない。

移籍先の球団の指導や環境がよかったのかもしれない。細川の場合は中日の和田一浩打撃コーチの指導が合ったように思われる。小刻みにグリップを上下動させる構えなどは和田コーチの現役時代を思わせる。しかし、中日の得点力がこれだけ他球団にくらべて低いと、打撃コーチが優れていると決めつけることはできない。

こういう事情は選手もメディアに対して言いにくい場合もあるだろうし、前球団の関係者が知っておけばよいことかもしれないが、同じようにくすぶっている選手は「どうしてあの選手が他球団に行ったとたんに活躍するようになったのか」はぜひ知りたいのではないだろうか。できることなら指導者も誠実に反省するべきところは反省し、成功した事例については改善されたポイントを可能な限り野球界で共有して、伸び悩む選手が本来の力を発揮できるようになってほしいと願う。企業秘密もあるとは思うが、選手の人生がかかっているのである。

◆ヤクルト石川雅規救援登板の謎 先発投手「通算200勝達成プロジェクト」のひと幕か…

◆今昔の野球パフォーマンスについて考える ベンチでの祝福は投手に歓迎されているのか否か

◆オールスター開催などによる過密日程 関係者はファンと選手を慮る調整を…

著者プロフィール

篠原一郎●順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授

1959年生まれ、愛媛県出身。松山東高校(旧制・松山中)および東京大学野球部OB。新卒にて電通入社。東京六大学野球連盟公式記録員、東京大学野球部OB会前幹事長。現在順天堂大学スポーツ健康科学部特任教授。

《SPREAD》
page top