村田諒太は世界を獲っても変わらず…WBAミドル級王者と社会活動 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

村田諒太は世界を獲っても変わらず…WBAミドル級王者と社会活動

スポーツ 選手
WBA世界ミドル級王者を獲得した村田諒太(2017年10月22日)
  • WBA世界ミドル級王者を獲得した村田諒太(2017年10月22日)
  • WBA世界ミドル級タイトルマッチ アッサン・エンダム vs 村田諒太(2017年10月22日)
  • WBA世界ミドル級王者を獲得した村田諒太(2017年10月22日)
  • WBA世界ミドル級王者を獲得した村田諒太(右)をたたえる元王者のアッサン・エンダム(2017年10月23日)
  • HEROs AWARD 2017でプレゼンターを務めた村田諒太(2017年12月11日)
  • HEROs AWARD 2017でプレゼンターを務めた村田諒太(左)と受賞者の鳥谷敬(2017年12月11日)
  • HEROs AWARD 2017でプレゼンターを務めた村田諒太(2017年12月11日)
「周りが変わるだけで、僕は何も変わらない。このままなんです」

プロボクサーの村田諒太(帝拳)は10月22日にWBA世界ミドル級世界王者になった。5月に判定負けを喫したアッサン・エンダム(フランス)と再び拳を交え、異例のダイレクトリマッチ(直接の再戦)となった一戦はボクシングファン以外からも多くの注目を集める。

WBA世界ミドル級タイトルマッチでエンダム選手(手前)と対峙する村田選手 《撮影 五味渕秀行》

7回終了時点でエンダムが棄権したことによるTKOで、日本人としては1995年の竹原慎二氏以来ふたり目となる世界ミドル級制覇を成し遂げた村田。2012年ロンドン五輪では金メダルを獲得しているため、日本人初となる五輪金メダリストの世界王者にもなった。メディアやファンは「チャンピオン村田」として意識するようになったが、本人は以前会った時と変わらぬ「村田諒太」その人だった。

「オリンピックの経験もありますから浮かれることもないですし、周りは変わっていきますけど僕は僕なので。このままやるだけかなって感じ」

勝利が決まると涙を浮かべた 《撮影 五味渕秀行》

10月以来となった再会は、東京・六本木で行われた「HEROs AWARD 2017」の表彰式会場となった。引退したスポーツ選手や現役アスリートによる社会活動をたたえる同賞のアンバサダーとして、プレゼンターのひとりを任されて村田は出席していた。彼自身も小さいながら定期的な活動をしている。

「都内の児童福祉施設にいる子どもたちの所へ行ったりしています。そういう活動をちょこちょこやってるくらいで、何かをやってるかというと大それたことをやっているわけではないです。あとはUNCHR(国連難民高等弁務官事務所)などへの募金を継続にしていたりとか…。そんなものですけど、それで行って(子どもたちが)喜んでくれることが第一歩なので、別にそれでいいかなって」

HEROs AWARD 2017でプレゼンターを務めた村田選手 《撮影 五味渕秀行》

村田選手はプロ野球の阪神タイガースに所属する鳥谷敬選手(右)にトロフィーを手渡した 《撮影 五味渕秀行》

本業はボクシングのため「今やれることだけをやれる範囲でやっておけばいい」と控えめだが、トレーニングの合間の息抜きにもなるようだ。

「子どもたちは面白がってくれますよ。でもよくわかってないですから、あの頃の子どもたちというのは(笑)。テレビに出てる人が来てくれて、よくわからんけど面白かったくらいだけど、パーティーみたいなイベントは普段の生活ではない特別な日として扱われるじゃないですか。そういう思い出になってくれるのが一番じゃないですか。僕らも幼いときはそうでしたからね」

ロンドン五輪後に要望があって通うようになったが、今後も継続していきたいという。私生活では二児のパパで、子煩悩で知られる村田。根っからの子ども好きなのだろう。「なんのこっちゃわからなくてもイベントがあって、ボクシング体験してもらって、一瞬でも面白かったって笑顔を作れたらそれでいいかな」と表情を和らげる。

その一方でボクシングの話を振ると顔を引き締めた。来春には初の防衛戦が国内で予定されている。まだ時間もあるせいか、王者として挑む戦いに気持ちは固まっていない。

「それはやってみなきゃわからないですね。その状況になってみないと。今は何も変わっていないので、その状況になったらまた考えようかなって。挑戦者としての立場はこうです、チャンピオンとしての立場はこうですって明確に変わってくるものはないです。やってたらそのうちに、わかるものだと思います」

エンダム選手(左)が村田選手をたたえる。これからは王者としてリングに立つ 《撮影 五味渕秀行》

次戦に向けたトレーニングはすでに開始しており現在は基礎的なことで体を作っているが、この日の村田は少しノドを痛めていた。プロボクサーといえど、常に万全の体調ではない。苦笑いしながら打ち明けてくれた。

「今日はちょっとノドがやられていて、体調を崩してしまうことや練習ができない時期もあります。なかなか同じ状況は保てません。結局試合前に集中して体を作っていくしかないと思うので、今はできるだけそういう作り上げるまでの基礎段階や体を良い状態にして保っておくようにしています。ボクシング自体はずっとやっているので、その中で気づいたことがあったらやっていくだけ。特別にああだこうだと、今更ないですよね」

村田選手はHEROs AWARDを決めるHEROs Sportsmanship for the futureのアンバサダーだ 《撮影 五味渕秀行》

WBA世界ミドル級王者となり、これまで以上にプロボクサーとしての自覚を持ち、村田は新たなステージを目指していく。最後に来年の抱負を聞いた。

「まずは4月に予定している防衛戦。それをやってみないと次が見えないのですが、注目を集めていただけるコンテンツにはなっていると思いますので、その立場として自分ができることをしっかりやっていきたいと思います」

別れ際に「村田さんの好きなミカンのおいしい季節になりましたね」と言うと、「いっぱい送られてきています」と嬉しそうに笑った。やっぱり村田は以前と変わっていなかった。

●村田諒太(むらた りょうた)
1986年1月12日生まれ、奈良市出身。帝拳プロモーション所属。2012年にロンドン五輪ボクシングミドル級で金メダルを獲得して脚光を浴びる。アマチュア時代の戦績は137戦118勝89KO・RSC19敗。2013年8月にプロデビューし、戦績は14戦13勝(10KO)1敗。2017年10月22日にWBA世界ミドル級タイトルマッチでアッサン・エンダム(フランス)を7回終了TKOで破り世界タイトルを獲得。趣味は子育て。

●HEROs Sportsmanship for the future
現役時代も引退後もアスリートが社会とつながり、活躍できる仕組みを広げていくために始まった活動。アンバサダーに村田諒太(ボクシング)、中田英寿(サッカー)、佐藤琢磨(モータースポーツ)などが顔を並べる。本活動の柱のひとつであるHEROs AWARDの2017年度の受賞者は宮本恒靖(サッカー)、鳥谷敬(野球)、アンジェラ・磨紀・バーノン(サーフィン)、坂本博之(ボクシング)の4名と福島ユナイテッドFC(サッカー)、世界ゆるスポーツ協会(ゆるスポーツ)の2団体。

取材協力:HEROs Sportsmanship for the future
《五味渕秀行》

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